第273話 絶黒教団
事件を引き起こした組織の名前が判明します!
俺達Bランクパーティー【トラストフォース】は多くの囚人奴隷が集団で消える事件を知る事になった。
そんな中、ビュレガンセ王国騎士団東方支部の騎士達が事件を引き起こした実行犯の一人を捕まえたと言う情報を共有された。
「今回は来ていただいて感謝するよ」
「いえ、そんな滅相もございませんよ」
「それにしても、あの事件の実行犯の一人を運良く捕まえる事ができて何よりですよ」
「うふふ。そうかもね。何にしても、あの爆破テロの実行犯の一人で中心人物かそれに近い人間を捕縛できましたね」
「管轄の境目付近を調査していたところ、怪しき人物を見つけて抵抗してきた人物を運よく捕まえる事が叶ったんだ。その時に協力や実行をしてくれたリカルド殿が率いる【ウォールクライシス】の皆のお陰でな」
「捕まえるのに貢献したのは俺とブラゴスで見つけたのはレミーだけどな!」
「確かにそうね」
そんなやり取りの中で地下の階段を進んでいるのは俺とクルス、Aランクパーティー【ノーブルウィング】のリーダー格であるウルミナさんと同メンバーのラルフさん、Bランクパーティー【ウォールクライシス】のリーダー格であるリカルドさんとその仲間であるレミーさんだ。
先頭に立って歩いているのはビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長であるナターシャさんであり、最後尾には部下の騎士一名がいる。
騎士団の要請を受け、今ティリルに残っている【アテナズスピリッツ】のBランク以上のパーティーで協力しに行っている。
セリカ達や他のパーティーメンバーの面々は別室で待機してもらっている。
俺達は歩いて3分するかどうかの長い螺旋階段を降りていった。
しばらく歩いても、石造りの通路と壁があり、壁に掛けられている視界を微かに照らす蝋燭が無機質で陰鬱なムードを漂わせる。
ナターシャさんの先導で辿り着いたのは……。
「この男だ」
「「「「「ッ!?」」」」」
(コイツが……)
俺達の目の前には相当強固な石造りの牢屋があり、両手足を繋がれた一人の男性がいる。
「この男が囚人奴隷の集団脱走を引き起こした実行犯の一人であるマクレスと言う男だ」
「……」
捕まえてから数日しか経っていないとは言え、好青年と呼ばれてもおかしくない優しくも儚げに見える男性こそ、先日ビュレガンセを震撼させた事件の実行犯であるマクレスと言う人物だ。
両手足は魔法やスキルを封じる錠で繋がられており、不自由の効かない場所に放り込まれているストレスもあってか、その表情には荒みも見え隠れする。
「この人が例の実行犯なのですね……」
「ああ。脱走した囚人達と行動しているところを我々騎士団や共に調査へ乗り出してくれた【ウォールクライシス】の面々と連携して捕まえたんだ」
「それを捕まえるなんて、流石はリカルド達ね」
「いえ、滅相もございません。仲間達や騎士団のご協力もあってですよ」
ウルミナの褒め言葉に対し、リカルドさんは謙虚に応え、レミーさんも「いえいえ、そんな事は」と伝えるような最低限のジェスチャーを伝える。
それから朗らかになりかける空気を断ち切らんばかりにナターシャさんが口を開いた。
「では、今一度お伺いしたい事がある。ビュレガンセが国単位で保有している鉱山に爆破テロを起こしたのは其方で間違いはないな?」
「はい……」
「そのテロ行為に乗じて囚人奴隷達を逃がしたのは確かなのだな?」
「はい……」
ナターシャさんの質問に対し、マクレスは聞かれた質問に対して淡々と答えていった。
先の事件を引き起こした犯人を捕まえられて良かったのは本当だけど、心なしか、その受け答えはどこかおかしい。
「ふふっ。ふふふふふ……」
「何だ?何がおかしい?」
「そろそろ頃合いだと思ってるんだよ」
「頃合い?」
嘘を言っていないのは確かだが、問答が進むにつれて、マクレスの様子がどことなく投げ槍になっているように見えるのだった。
「特別に教えてあげるよ。今回の事件を引き起こした理由。それは……」
「このビュレガンセの全てを乗っ取り、独裁国家を作り上げ、それを起点として世界を支配していく礎を築いていく足掛かりとするためなんだよ!完全なる世界を作るためのな!」
「完全なる世界?」
そう言うマクレスの表情は最初の虚無的で刹那的な様相と打って変わって、狂気に満ちたような顔を見せ、余りにも過激で独善的なセリフを発した。
それを聞いた俺達も険しい表情に変わっていき、即座に戦える姿勢を整える。
そして……。
「我ら【絶黒教団】の成就の為、あのお方が得た力とお考えの下に、この醜い世界を破壊し、本来あるべき姿に変えていくのだ!あのお方の望みは俺の望みなのだ!ハハハハハハ!」
(何言ってんだコイツ?てか、【絶黒教団】?あのお方って誰の……?)
狂気的に笑いながら話すマクレスの言っている事そのものが正気の沙汰でないのは誰が聞いても明らかだった。
「もうすぐあのお方の計画が現実となる!その時に迎える世界の変容を楽しみに待つがいい!下等な人間共よ!ハハハハハハ!」
「ッ!?」
するとマクレスは高笑いをした後、自分の舌を思い切り噛み切った。
瞬間的に口の中は血で溢れ返り、その身体は動かなくなった。
「コイツ。自決しやがった……」
「もうこれ以上何かを聞き出すのは無理そうね……」
常軌を逸した狂言と自決する様相にリカルドさんとレミーさんは驚きと諦観の表情をしている。
ウルミナさんとラルフさん、ナターシャさんも深刻そうな様相を見せており、俺とクルスはそれに加えて一筋の冷や汗を流した。
「仕方がないな。運ぶぞ」
「ハッ!」
「俺も手伝います」
「感謝する」
ナターシャさんの指示で遺体となったマクレスを騎士の一人が運び込もうとし、俺はその手伝いを買って出た。
檻の鍵が開き、入ろうとした瞬間……。
「離れろ!」
「「「「「ッ!?」」」」」
ラルフさんが部屋の中を劈かんばかりに声を張り上げた。
俺達は思わず身体を止め、檻から距離を取りながらマクレスの方角を見やると、予想だにしない光景が飛び込んだ。
(これは?)
マクレスの身体に光を帯びた黒い紋様が浮かび上がり、5秒と絶たずにまるで本人を飲み込むように広がっている。
そして……。
カッ!
(ヤバい!)
激しい爆発と禍々しさを抱かせる黒い閃光が辺りを包み込んだ。
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