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第268話 【ミリア視点】帰り道で見つけた懸念

女だらけのAランクパーティーのリーダーがメインのお話です!

「何か想像していた以上に物騒な話じゃね?」

「うん。かなりおっかないと思う」

「絶対に近い将来、大事件が起きそう」

「近い将来と言うよりも……。近日中に起こってもおかしい話じゃないわよ」


私達Aランクパーティー【ヴァルキリアス】は王都ファランテスにある一つの宿に泊まっている。

私達が所属している冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のギルドマスターであるヒルダさんがビュレガンセに点在する冒険者ギルドのマスター全員参加するギルドマスター会議に出席するため、その護衛をしている。

その会議は終わったものの、中身が壮絶だった。

発生した箇所の対処に当たった二つの冒険者ギルドは半壊、双方のギルドマスターやビュレガンセ王国騎士団北方支部の隊長を含めて死傷者を多数出したのだから。

今日起きた出来事について詳しく話すため、私とヒルダさんとライラが泊まる部屋にターニャ、メロ、フォネを迎え入れている。


「私も会議でその話を聞いた時、内心驚きを隠せなかったわ。ギルドマスター二人と北方支部の隊長が揃って大怪我して、被害を被ったギルドも人員の損耗でどうにかこうにかで運営している状況になっているのだから」

「ええ。そんな話や今日の会議を目の当りにしたら、私達も他人事で済ませていい筈がないですからね。規模に差はあれども、各地で似たような事が起きているから尚更です……」

「「「「……」」」」


ヒルダさんや私の言葉を受けて皆はその場で沈黙した。

私達【ヴァルキリアス】が拠点にしているウェシロスではモンスターの討伐クエストが頻発しているものの、現時点では会議で挙げられたほどの状況に見舞われてはいない。

【ティア―オブテティス】の冒険者達もビュレガンセ王国騎士団西方支部の皆様と連携し合って事に当たっている。

だが、今回のギルドマスター会議で自然とその警戒度を一層上げていかなければならざるを得なくなった。

私やヒルダさんだけでなく、ライラやターニャ、メロやフォネもそれを感じ取っている。


「後日、ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部から各ギルドに何かしらの通達が正式に行くと思うから、その時に対策を詰めていきましょう。今回の会議の内容についてはウェシロスに戻り次第、西方支部の隊長であるエルヴォスさんにも私から伝えておく」

「承知しました。私達も当面の間はBランク以下のパーティーのバックアップにも力を注いでいく所存です。皆もそれで問題ないよね?」

「ええ。問題が落ち着くまではその方向で大丈夫よ」

「アタシらじゃなきゃ倒すのも厳しいモンスターが低ランクパーティーと鉢合わせたら、不味い事になるのは目に見えるしな!」

「うん。しっかりカバーしてあげなきゃだね」

「戦闘もだけど、メンタル面のケアも大事だよね……」


こうして私達【ヴァルキリアス】の今後の方針は纏まり、他にする事も無いので早めに寝る事にした。


翌日————————


私達はウェシロスに向かう馬車に乗っている。


「ふう……」

「ヒルダさん。昨夜は余り眠れなかった感じですか?」

「ううん。ちゃんと眠れたわ。まあ、昨日の事もだけど、ギルドに着いたらやる事がいっぱいあるからね……」

「お疲れ様です」


いつもならば王都の城下町で食べ歩きや買い物の一つでもしては馬車でその話で盛り上がっていたけど、昨日の会議の内容を聞いたのもあってか、今回はその気になれず、早めにギルドへ戻る事になった。

心なしか、馬車の中の空気が重く、パーティーのムードメーカーであるターニャの口数も少なく、他の皆は最低限の言葉しか発していないくらいだ。

ティリルに拠点を置く冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】やベカトルブに拠点を置く冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】のギルドマスターや同行した護衛達との別れ際、全員の表情はお世辞にも明るいとは言えなかった。


(確かに、今回の会議の内容が正式に各ギルドに届いて認知されたとなれば、混乱する可能性が高い。情報統制を取るにしても、駆け出しやまだ経験の浅いパーティーを不安にさせないための行動も心掛けないと……)


淡々とウェシロスに近付いていく馬車の中、誰も会話しない状況で私が一人で考えを巡らせている時だった。


「キャァアアア!」

「「「「「「ッ!?」」」」」」


私達の耳に一人の女性の悲鳴が劈き、その方角を私とターニャが見やる。


「グルルルル……」

「ヒ、ヒィイ!」

「た、助けて……」


少し下った先にある河川の下流で何者かが黒衣に身を包んだならず者数人に襲われていたのだ。

襲われている相手を見て、ターニャが私に質問した。


「ミリア!アイツらって……?」

「ええ。ウチのギルドの冒険者達よ!救出に入る!」

「「「ッ!」」」

(それに、襲うとしている人の方の様子がおかしい……。あの魔力の残滓って……)


ならず者の毒牙にかけられようとしているのは何と【ティア―オブテティス】に所属する女性3人組の冒険者パーティーであり、確かDランクだったのは記憶している。

後輩冒険者らの危機を知ったライラ、メロ、フォネも戦闘準備に入り、私とターニャは一気に駆け出す。


「【支援魔法LV.2】『ビルドアップ』!」

「【氷魔法LV.3】『フリージングピック』!」

「【付与魔法LV.2】『エンチャント・インディゴ』!」


フォネの【支援魔法】で私とターニャの身体能力を一時的に向上させ、ライラの【氷魔法LV.3】『フリージングピック』で援護し、メロの【付与魔法】でライラの魔法の威力を底上げさせる。


「ぐお?」

「「ヒュッ!」」


ライラの【氷魔法LV.3】『フリージングピック』は大き目なアイスピックのような形をした物体を生成して飛ばし、当たったならず者達は氷漬けにされたかのように、その動きがピタリと止まった。

【水魔法】や【氷魔法】の威力を高めるメロの【付与魔法LV.2】『エンチャント・インディゴ』込みだから更に強力となっている。

拘束されたような形になっているところで……。


「フン!」

「ぐえ!」

「ハァア!」

「「ゴォオ!」」


私は一人を後頭部に手刀を打ち込み、ターニャは二人の髪を握り掴んだままそれぞれの頭をぶつけ合わせた。

ならず者3人は意識を失い昏倒した。


「皆、大丈夫?」

「え?ミリアさん、ターニャさん!」

「危ないところだったな!ライラやメロ、フォネにヒルダさんもいるよ!」


私は襲われた子達を気に掛け、ターニャは気さくな笑顔でヒルダさん達の方に右手親指を向けていた。

ヒルダさんはライラとメロ、フォネを連れて私とターニャの下に駆け寄って来た。

その瞬間……。


「ッ!?ミリア!ターニャ!」

「「「フハ……。フハハハハハ!」」」

「「なっ?」」


何かを気取ったようにライラが叫ぶと、気絶していた筈のならず者達が奇声を放ちながら、更には黒い魔力を滲ませながら起き上がり、氷を破らんばかりの勢いを見せようとした。


「【雷魔法LV.3】『メガパラライズ』!」

「【武術LV.3】『零ノ拳』!」

「「「ギャァアアアアアア!」」」


私は咄嗟に範囲が広めで強力な麻痺効果のある【雷魔法LV.3】『メガパラライズ』を放ち、ターニャは【武術LV.3】『零ノ拳』による至近距離で放つ必殺の拳打を一人の腹に当て、吹っ飛ばした。

すると、黒い魔力はならず者達の身体から霧散していき、今度こそ気絶した。

思わぬタイミングで焦ったし、私もターニャも条件反射のように強力な攻撃をしてしまったけど、見たところ気を失っているだけのようでホッとした。


「あなた達、怪我はない?」

「ヒルダさん。はい、大丈夫です」

「ちょっと擦りむいてる。【回復魔法】を掛けてあげる。この位なら……。【回復魔法LV.2】『ワイドヒール』!」

「ありがとうございます、フォネさん」


私とターニャはヒルダさんに心配の言葉を掛けられ、フォネは襲われていた後輩達を【回復魔法】で治している。

幸いにも傷は浅いようであり、すぐに五体満足の状態まで回復した。


「皆、何があったの?」

「ミリアさん。私達、クエストの帰りでウェシロスに戻ろうとしていたんですよ。そしたら、さっきの盗賊みたいな連中に襲われて……」

(盗賊?確かに風体から見ればそれっぽかったけど……)


私は気にもなったけど、ライラの進言で今はこの場を離れてギルドに戻ったら詳しい話を聞くと言う形で続きを知ろうとする流れになった。

あんな物騒な現場を目撃してすぐに立ち話で聞くよりも、落ち着いて情報を取っていった方が有意義だと判断したからだ。

私達は乗っていた馬車の御者さんに事情を説明すると、襲われていた後輩達も乗せる事に快諾してもらえた。

そうこうしていると、ウェシロスに着き、拘束しておいたならず者達は西方支部の騎士達に引き渡し、後輩達はギルドで詳しい話を教えてくれた。


「そう。大変だったわね。でも、クエストそのものは達成しているから、後できちんと報酬を払うわ。せめて今日と明日はゆっくり休んでちょうだい」

「ありがとうございます」


後輩達のクエストはこれで終わりだけど、ヒルダさんや私達にとってはこれで終わりで済ませられなくなった。


「ねえ。ミリア……。さっきの連中……」

「ええ。私も感じていたわ」


私と共に最初に動いたターニャや異変に気付いたライラはもちろん、メロやフォネ、ヒルダさんも言葉にはせずとも感じ取っていた。


(これは只の事件で済ませてはいけない何かが……。私達に迫ろうとしている……)



私の懸念は後に、大規模な事件に発展してしまう事を……。この時、誰も予想し切れていなかったんだ。

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