第267話 【リカルド視点】衝撃の緊急会議
トーマ達をBランクにしたリカルドが主役です!
俺達Bランクパーティー【ウォールクライシス】は王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部に赴いている。
ここに来た理由はそこで開催されるビュレガンセに点在する冒険者ギルドのマスターが一堂に参加するギルドのマスター会議に参加される、俺達が所属している冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんの護衛をするためだ。
本来ならば来月に開かれる予定だったが、緊急性があると言う意味で前倒しとなった。
「冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】のギルドマスター様。お待ちしておりました。ご案内致します」
「ありがとう」
俺達は受付を担当した女性職員に誘われる形で建物の中へ通された。
久しぶりに今回の護衛を担ったが、改めて見ると高級感を感じずにいられない絢爛さや擦れ違う職員の洗練された振る舞いに驚かされる。
「緊急会議はもうすぐ開かれますので、こちらのお部屋でお待ちください。お時間になりましたらお呼び致します」
「ありがとう」
通された部屋で俺達はしばらく待機する事になった。
「ふぅ……。まずはリカルド達……。緊急で開かれる会議のために、今回は護衛を担ってくれて本当にありがとう」
「当然の事をしているだけの事ですよ。まあ、緊急って事はいつもよりも穏やかでは無さそうなのはイメージできますけど……」
「その確率は高いだろうね」
カルヴァリオさんは俺達に礼をした後、今回の会議や最近の事について話をしていた。
それから少しの時間が経った頃、扉をノックする音が聞こえた。
「失礼します。カルヴァリオ様。残り10分で会議が始まります。お部屋に向かって頂けますでしょうか?」
「すぐに向かう。リカルド。一緒に来てもらうよ」
「はい。お前ら、ちょっと行ってくる」
俺はカルヴァリオさんに同行する形で会議が開かれる部屋へと向かった。
その部屋の扉まで来ると、二人の男性がいる。
「しばらくぶりだな」
「今回はよく参加できたな。ヴァラガン」
「ガイキさん。ご無沙汰しております」
「おう、元気そうだな。リカルド」
そう、相手はベカトルブを拠点としている冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】のギルドマスターであるヴァラガンさんであり、同行しているのはAランクパーティー【飢狼団】のリーダー格であるガイキさんだ。
俺もガイキさんと会うのは数年ぶりだったが……。
「大変だったな」
「あぁ。例の黒い魔力を纏ったモンスターの集団の討伐は骨が折れたぜ。お陰でウチのギルドの冒険者達も半数が負傷してえらい目に遭ったぜ」
「どうにかなりましたけど、厳しい戦いでしたよ」
ヴァラガンさんの顔には湿布が貼られており、ガイキさんはそれに加えて頭や胸周りに包帯が巻かれていた。
話によれば、ベカトルブ近辺で確認された大量発生したモンスターの討伐を【アンビシャノブアレス】に所属している大半の冒険者で対応した。
加えてビュレガンセ王国騎士団来北方支部も駆り出され、ギルドマスターであるヴァラガンさんも前線に出たと言うのだから、規模としては相当なモノであるのは想像に難くない。
解決したものの、【アンビシャノブアレス】の冒険者達や北方支部の騎士達の半数が負傷し、中には命も危なかった者もいたらしい。
ヴァラガンさんやガイキさんもそれに含まれていて、今では会議に参加できるくらいには回復し、他のメンバーも同様との事だ。
「これは皆さん。お揃いで……」
「「あっ」」
「今回は一カ月前倒しで緊急のギルドマスター会議が開かれる事になりましたから、普段よりも心穏やかではいられない話になりそうですね」
「「ヒルダさん!」」
(あの方は……)
声の主はウェシロスを拠点としている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のギルドマスターを務めているヒルダさんであり、隣にいるのはAランクパーティー【ヴァルキリアス】のリーダー格であるミリアさんだ。
「ご無沙汰しております」
「そう畏まりすぎなくてもいいわよ」
穏やかに振舞うヒルダさんに対し、カルヴァリオさんとヴァラガンさんは礼儀正しくお辞儀をしており、俺もガイキさんと共に続いた。
そう言えば、ヒルダさんってカルヴァリオさんよりも年上だったな。
加えてその隣にいるミリアさんだが……。
「あ、あの……ミリアさん」
「確か、Bランクパーティー【ウォールクライシス】のリカルドさんですよね?私がBランクだった頃に一度お会いしたと思いますが……」
「は、はい!ご無沙汰しております。Aランクに昇格されたんですよね?改めてお伝えする形にはなりますが、おめでとうございます!」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しく思います!」
(めっちゃ美人!)
ミリアさんとは彼女がBランク時代にギルドマスター会議に護衛として同行した際に一回だけあっており、ハッとするような美人さんであったのは覚えている。
Aランクに上がった事は前から知っており、俺はその事で直接伝えたが、ミリアさんは柔和な表情で応えてくれた。
改めて見ると、本当に綺麗な女性だな。
「さて、会話もそこそこにして、中に入りましょう」
「はい」
少し咳払いしたヒルダさんの言葉を受け、俺達も会議が開かれる部屋に入っていく。
中には白い大理石を基調にした洗練さをこれでもかと感じさせるくらいに広い空間が目に飛び込んだ。
ここでビュレガンセに点在するギルドマスターが一堂に揃うのだが、今回はどこか様子がおかしかった。
(何だ?いつもよりも出席者が少ないような……?)
カルヴァリオさんの思っている通り、席がまばらになっているのだ。
ビュレガンセにある冒険者ギルドの数は規模に差はあっても10種類ほどなのだが、その内の三分の一が欠席しており、このような事は近年無かったと言う。
基本的にギルドマスターは参加が必須であり、それができない場合は明確な理由を前もって伝えるのがルールになっている。
欠席者はいても一人か二人程度なだけに、少なからぬ異質さも感じた。
待つ事数分……。
「定刻となりました。ゼラカール・フォートレイン総帥、どうぞ」
職員の一人がそう言うと、カルヴァリオさんを含む出席者全員は椅子から立ち上がり、扉から入ってくる一人の人影に視線をやった。
「皆の者、此度は緊急で開催されたギルドマスター会議に参加して頂き、誠に感謝する」
(久しぶりにお目にかかるぜ。ゼラカール・フォートレイン……)
貴族服のような仕立てられた服に身を包み、白髪のオールバックをした初老の男性が杖を付きながら上座の席へと着いた。
その人物こそ、ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部の総帥であり、冒険者界隈のトップオブトップとされるゼラカール・フォートレインその人だ。
早くも険しい表情をしている事からも、今回の会議の重要さが分かる。
「皆を緊急会議と言う形で呼んだのは他でもない。最近、多発しているモンスターの集団及び例の黒い魔力を帯びたモンスターや人間が確認されている事だ」
ゼラカール総帥がそう言うと、出席者のギルドマスター達が少しのざわつきを見せた。
ここに来る前、主な議題は概ねであるが把握しているものの、改めて告げられると緊張も込み上げてくる。
更に話は続く。
「一昨日、ビュレガンセ北西にてモンスターの大量発生する事件が起きた。しかし、只の大量発生ではない。心して聞いて欲しい!」
続いてゼラカール総帥から語られたのは……。
「その事件によって、拠点を構えていた冒険者ギルド【ビリーフォブアトラス】と【ファイスオブヘカテー】が半壊滅状態となり、両ギルドのマスターは重体。ビュレガンセ王国騎士団北方支部の隊長であるドルクス・バンデラも戦線復帰が困難な重傷を負ったと報告が入った」
それを聞いたギルドマスター達は騒然とした。
当然、かく言うこの俺も同様だ。
冒険者ギルド【ビリーフォブアトラス】と【ファイスオブヘカテー】は規模としては俺が所属する【アテナズスピリッツ】と比べれば少し小さい程度だが、古くからある老舗だ。
双方の距離も遠過ぎないため、ギルドと合同で大掛かりな事をするケースも珍しくない。
先の事件も手を組んで解決に動いて何とかしたものの、両ギルドから死傷者を多数出してしまい、ギルドマスター二名も酷い傷を受けて入院しているとの事だ。
更には北方支部の隊長であるドルクスと言う人物も戦線離脱の重傷を負ったと聞いたから驚きを隠す事ができなかった。
俺と同じ『重戦車』のギフトを持ち、各支部にある隊長の中でも豪傑と称されている実力者がそこまでの状況になっている事も突然知らされただけに尚更だ。
(穏やかな話ではないと身構えるように聞いていたが、想像以上にヤバい事になっているな……。こりゃ対岸の火事で済まされない。下手をすれば国単位で動く事態になるぞ)
少しの間、会議室は騒然としつつ、後に今後の対応や対策について話す事になったが、その空気は終始重かった。
「以上をもって、今回の会議は終了とさせていただきます。お疲れ様でした」
そうして、会議は終了したが、笑顔で出ていく者は一人もおらず、待機していた仲間達にも伝えたところ、全員が驚きを隠せなかった。
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