第266話 有望株と不穏な予感
新たな有望株パーティーが登場します!
ここからシリアスな話が増えます!
俺達Bランクパーティー【トラストフォース】はクエストや休養のサイクルを繰り返しながら冒険者生活を送っていた。
「う~ん。集められた情報はこれくらいです」
「成果としてはゴブリン系のモンスター数十体と上位種である“ゴブリンジェネラル”を討伐した事くらいですね」
「あの黒い魔力についてだけど、今回はハズレみたいだな」
俺達はビュレガンセ王国騎士団東方支部の騎士達と合同で調査任務に携わっている。
ここ最近、件の黒い魔力についての調査をティリルに拠点を置く冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】を中心に他の冒険者ギルドと東方支部の騎士の方々と行う機会が増えている。
今回は俺達のパーティーとCランクパーティーが騎士団の皆様と共に目撃情報があった岩場に赴いて調査する事となった。
突然現れたモンスターの対処以外に大した成果は無かったが、モンスターを討伐しておけば周辺に危害が及ばなくなるので、悪い芽を摘んでおくに越した事は無い。
「周辺にモンスターの気配はありませんね。騎士団の方々にも報告しましょう」
「そうだな」
「トーマさん。皆様。お疲れ様です。【フラッシュエイジ】全員、戻りました!」
「ああ、お疲れ様」
クルスの話を聞き終えた直後、一人の男性が戻って来た事を伝え、その後ろには男性一人と女性二人も付いている。
「それにしても、あの【トラストフォース】の皆様と一緒にクエストに参加できて嬉しく思っています!加えて騎士団の方々もご一緒ですから尚更です!」
「そうか……」
嬉々としながら俺達と行動している事を嬉しく語るのは【アテナズスピリッツ】に所属するCランクパーティー【フラッシュエイジ】のレイト・シムラスだ。
動きやすさを取り入れた甲冑に身を包み、黒に近い茶色の短髪に爽やかな顔立ちが特徴の青年であり、パーティーのリーダー的存在だ。
ギフトは『剣士』であり、腕前もCランク冒険者に相応しい技量を持っているとの事だ。
同じギフトを持ち、Bランクパーティー【ディープストライク】のリーダー格であるケインさんに特に憧れているらしい。
ケインさんの実力は本物だし、人徳もある人だから、納得がいく。
「そうですよ!【アテナズスピリッツ】のBランクパーティーの中でも期待値や注目度も高まっているって専らの噂になっていますよ!一緒に行動できて光栄ですよ!特にミレイユさんとお仕事できて心から喜ばしいです!」
「そう言われると少し照れちゃいそう……」
ミレイユの事を持ち上げながら話しているのはアンリであり、パーティーのサブリーダーのような女性だ。
青がかかった緑色のセミロングヘアをハーフアップに整えた髪型に快活さと慎ましさを兼ね備えたような整った顔立ちをしており、ベージュ色のローブや帽子が良く似合う。
ギフトは『魔術師』であり、手に持っている杖も金がかかっているのが分かるほどに上質であり、【土魔法】と【岩石魔法】、【風魔法】と【雷魔法】を得意にしている。
Aランクパーティー【ノーブルウィング】のリーダー格にして『魔術師』のウルミナさんはもちろん、ミレイユの事も尊敬していると言うに、ほぼ同世代の彼女に憧れているのも、純粋に才能を評価しているのが分かる。
「それに、あのエレーナさんとご一緒できて、もう最高です!」
「うふふふ……。それは嬉しいです……」
そう誇らしそうに語っているのはリルネであり、ギフトは『僧侶』だ。
亜麻色のロングヘアをおさげにした髪型にお淑やかさを持った雰囲気を感じさせる印象が特徴的であり、白の法衣が彼女の可愛らしい姿を引き立てている。
【回復魔法】や【支援魔法】による戦線の安定化やアフターケアを一手に担っており、下支えの要となっている。
「自分も改めてモンスターやならず者らしき気配をスキルで確認してみたんですけど、クルスさんの言う通り本当にありませんでした!同じ『シーフ』としてもレベルやクオリティの高さに改めて敬意を覚えますよ!」
「そうか。僕も再確認してみたけど、そうした事をしてくれたならば、ありがたいし、助かるよ。リグル」
「きょ、恐縮ですよ。クルスさん」
クルスの事を褒め称えているのはリグルであり、ギフトは『シーフ』だ。
黒味を帯びた青い髪色に少し伸びた後ろ髪を結った髪型が特徴的な青年であり、軽快な革鎧に身を包んでいる。
役回りとしては『シーフ』ならではの斥候役や後方支援、時には戦闘もこなせると言うからかなり優秀であるのが分かる。
同じく『シーフ』である【ノーブルウィング】のラルフさんやBランクパーティー【ウォールクライシス】のレミーさんは当然だが、特にクルスの事を尊敬しており、顔を見かけては気軽に話す仲にもなっている。
【フラッシュエイジ】は数ヶ月前にCランクへ昇格したばかりであり、4人共二十歳過ぎと若く、有望株に見える。
何にしても、そんな彼等と一緒に仕事できるのは俺達としても嬉しくある。
「でも、すみません。我々の方でも大した成果を挙げる事ができなくて……」
「いいっていいって。俺達も似たような結果だからさ!」
「そうですか……。もしもまた、今回みたいな仕事が舞い込んで来たら、ベストを尽くすように努めていきます!」
「そうか。余り根詰め過ぎないようにね」
この日は偶然見かけたモンスターの集団を討伐した以外の成果を得る事ができなかったものの、周囲に危害が及ぶ要素を排除する事ができたから良しとしよう。
俺は同行してくれた騎士達に結果を報告し、それを終えたら皆でティリルへと帰還していった。
「レイト達。この後予定が無かったらギルド飯でもどうだ?奢るぞ!」
「よろしいのでしょうか?」
「おお!」
「「「「ごちそうさまです!」」」」
クエスト終わりの締めの意味で、俺達はレイト達にギルド飯を振る舞った。
俺達よりも先輩の冒険者達がそうしてくれたように、今度は俺達が後輩の冒険者達に飯を奢る立場になったけど、一緒に飲み食いする相手が同じギルドの仲間ならばそれも良い。
俺はレイト達と楽しい一夜を過ごす事ができた。
翌日————————
「必要な物は全部買えたな」
「はい。家に戻りましたら、武具のお手入れもしておきましょう!」
「それから、クエストについても話を纏めるのもいいと思います」
俺はセリカとクルスを連れて買い出しに出ており、必要なアイテムを補充する事ができた。
ちなみにミレイユはエレーナと一緒にお留守番をしている。
帰路に着いている時だった。
「おぉ!トーマ達じゃないか?」
「「「ッ!?」」」
聞き覚えのある声が俺達の耳に届き、その方角へ身体を向ける。
「今日はオフのようだが、見かけたから声を掛けさせてもらったよ」
「カルヴァリオさん!それに、リカルドさん達もご一緒で」
声の主は俺達が所属する冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんであり、Bランクパーティー【ウォールクライシス】を率いるリカルドさん達も一緒だ。
休養日で私服姿の俺達と違い、リカルドさん達は冒険に出るような出で立ちである事から、ただの依頼でないのは今の状況を見てすぐに分かる。
「今からビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部がある王都ファランテスに赴いて、ギルドマスター会議に参加する事になったんだ。リカルド達は私の護衛で付き添ってくれているんだ」
「ギルドマスター会議って来月の筈ですよね?もしかして……」
「そのもしかしてだ。緊急のギルドマスター会議なんだよ」
「緊急でギルドマスター会議なんて……。穏やかな話ではなさそうですね」
リカルドさんの言葉でセリカやクルスの表情も少しだけ険しくなっている。
王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部にて、半年に一度、国中の冒険者ギルドのギルドマスターが一堂に会する会議がある。
しかし、ギルド総出で共有・対策に打って出なければならない事情が出てきた場合、緊急会議が開かれる事もある。
俺もそれは前から知ってはいるものの、緊急で開かれる会議は大体が切羽詰まった事案や放置するのは好ましくない話題が大半であるとの事だ。
今回の緊急会議における護衛もウルミナさん達【ノーブルウィング】にお願いするつもりだったのだが、現在は騎士団との合同調査で遠出しているため不在であり、ティリルに残っているリカルドさん達【ウォールクライシス】がそれを買って出たと言う訳だ。
「大変ですね……」
「まあ、これも仕事だからね。しばらくギルドを空ける事になるから、その間はよろしく頼むよ」
「は、はい……」
そうしてカルヴァリオさんはリカルドさん達と一緒にその場を後にし、ファランテス行きの馬車に乗り込むのだった。
「なあ、もしかしてだけど……」
「多分、あの黒い魔力やモンスターが頻繁に出てくる件は議題に上がるかもしれませんね」
「話の内容によっては、国単位で大きな動きを見せる可能性も否定できません。以前の闇ギルドの件もありますし……」
「そうだな。一応、ミレイユやエレーナにも共有しておこう」
まだ決まり切っていない可能性について話ながら、俺達は帰路に着いた。
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