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第264話 【ウルミナ視点】大事件の予兆

Aランクパーティーの魔術師が語り手です!

私達Aランクパーティー【ノーブルウィング】はビュレガンセ王国騎士団東方支部と一緒にとある調査へ乗り出している。

場所は東方支部が管轄している土地を出るか出ないかのような境にある町であり、東方支部の隊長を務めているナターシャさんと彼女が率いる部下数名と一緒に行動している。


「こんな辺鄙な町やその周辺に例の魔力が確認されたって聞いて来てみたはいいものの……」

「今のところは有意義な情報なしか……。もう少し別の場所を探ってみよう」

「そうね。次に繋がる情報の一つでも持って帰ってみせるわ!」


捜査に息巻いているのは私の仲間である『シーフ』のラルフ、『槍術士』のランディー、『重戦士』のジーナであり、他にも騎士数名もいる。

モチベーションはしっかり持っているものの、これだと言える手掛かりは現時点では見つかっておらず、難航している状況だ。

それでも気持ちを切り替えて取り組んでいるため、少しでも有力な情報を集めてくれる事を願っている。


「そうか。では引き続き、捜索を続けて欲しい」

「「「ハッ!」」」

「今回の捜査は中々に骨が折れそうですね」

「かもしれないな。だからこそ、今回の捜査にかのAランクパーティー【ノーブルウィング】の面々が加わってくれた事について感謝している。礼を言う」

「いえ、今回の一件については私達も気になっていましたし、放置するのも好ましくないと判断したまでです」


町の片隅にある家屋の一室にて、四角いテーブルの上に地図を広げて話し込んでいるのは『魔術師』の私とパーティーのサブリーダーを担っている『付与術士』のルエミだ。

一緒にいるのはビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長を務めている『軽戦士』のナターシャさんであり、今回の捜査隊のトップを担っている。

先日、禍々しく黒い魔力を持ったモンスターに遭遇したと言う報告をこの数日で頻繫に受けた【アテナズスピリッツ】や東方支部の騎士団は放置しておくのは良くないと判断し、合同の捜査隊を結成する事になった。

その騎士団の捜査に加わり、事態の解明に白羽の矢が立ったのが私達【ノーブルウィング】と言う訳だ。

私達とは別の場所にも騎士団が他のギルドとも組んで捜査隊を赴かせており、結構な規模になっている。

何にしても、由々しき事態であるのに間違いない。

火のないところに煙は立たぬように、大きな事件の予兆には何かしらの要素が大なり小なり些細なキッカケとしてあるようにだ。

私達が携わってから5日が経とうとしていた時だった。


「……」

「ウルミナ。どうかした?」

「ここに来る前に共有された情報を思い出したんだけど、少し前、トーマ達が“フライングタイガー”二体と遭遇して戦闘になったのは覚えている?」

「ええ」

「それに加え、ここ数週間でこの町やティリル近辺を中心に強くて凶暴なモンスターが複数同時に現れる事例が出始めているの。他にも、東方支部以外が管轄している他の支部のエリアにも似たような報告が上がっている。そうですよね?ナターシャさん」

「ああ。西方支部、南方支部、北方支部にもウルミナ殿の言っていた事例件数がここ最近になって上がっている。実際、王都ファランテスにあるビュレガンセ王国騎士団の本隊からも応援の意味でそれぞれの支部に騎士が派遣されるようになった。対処に動いた騎士や冒険者達の中に負傷者も少なからず出してこそいるが、幸いにも死者は現時点で出ていない。」

「東方支部が管轄しているエリアで特に頻発しているって事ね」


ルエミの言う通り、最近になってティリル周辺でモンスター討伐の依頼が多数寄せられるようになり、対処に動く機会が増えている。

【アテナズスピリッツ】で言えば私達はもちろん、BからDランクまでのパーティーと東方支部の騎士団が手を組んで当たっており、特に、黒く禍々しい魔力が確認された際はBランク以上のパーティーが駆り出される形で調査に動いている状況だ。


「各地で強くて凶暴なモンスターの出現やモンスターが集団で行動している報告が多数寄せられている……。でも、この辺ってダンジョンとかの類はない。あんまり考えたくはない事だけど……」

「私も同じ事を考えていたところよ。ルエミ」


禍々しい魔力を持ったモンスターの出現、モンスターの凶暴化、何十以上のモンスターが行動している事例を鑑みて、私は一つの仮説を立ててみた。


「考えられる事は一つだけ。それは……」


自分の意見を伝えようとした瞬間……。


「隊長!大変です!」

「どうした?」


一人の騎士が凄い勢いで扉を開けて駆け込んできた。

慌てようから見るに、良い報告ではなさそうだ。


「町の近くの林辺りで、巨大な蛇のようなモンスターが出現しました!」

「何?」


それを聞いたナターシャさんの顔つきが変わり、私とルエミの表情も強張った。


「分かった。すぐに出向く!ウルミナ殿!ルエミ殿!」

「「ハイ!」」


ナターシャさんはガタッと椅子から飛ぶように立ち上がり、私達も対処に動く。

調査に出ているジーナ、ランディー、ラルフとも途中で合流し、大至急で現場に向かった。


「それにしても、巨大な蛇のようなモンスターってどんな奴だ?それだけの情報じゃ特定は少し難しいな」

「何にせよ、早めに討伐しないと町も危ないわね」


ランディーとジーナが準備を整えながら話す中、私はさっきまで話していたナターシャさんとルエミに伝えたかった事の懸念を頭の中で過らせている。


(まさか……スタンピードが起きる?)


スタンピード。

それは多種多様なモンスターが特定の場所に向かって一斉に突進する、制御不能な集団移動や混乱状態であり、一種の天災とも渾名されている。

その予兆としては短い期間で強力なモンスターの確認がされた事、コロニーが確認された事、同種のモンスターが集団で発見された事は予兆の一種と言われているが、最近の事例ではそれに当たる情報がいくつもそれに該当する。

現段階では懸念や一つの可能性としか見做せないため、今はモンスター討伐をする事に専念するため、気持ちを切り替えていった。


「ふう~。倒せたって事で良かったっすね」

「うん。相手がレア度Aの“マッドネスパイソン”だったけど、アタシらが一時的に拠点としている町に被害が及ばなくて何よりさ」

「同感です」


現地に赴いて遭遇したのはレア度Aの“マッドネスパイソン”と言う体長20メートルはあるヘビ型のモンスターであり、私達はこれを討伐する事に成功した。

レア度Aの“マッドネスパイソン”は体躯もそうだけど、並みの攻撃や魔法は全く通らない硬度の鱗に身を纏い、突進する時のスピードは速く力強いだけでなく、口から撒き散らす唾液は騎士の甲冑すらも溶かしてしまうような硫酸染みた濃度と危険性がある。

Bランクパーティーは心して掛からなければならないのは当然だが、Aランクパーティーでも油断していい相手ではない。

私達が駆け付けた時にはルエミの【付与魔法】や【支援魔法】によるサポート、ジーナとランディーの攻め、ラルフのフォロー、そして私の魔法によるトドメで討伐に成功した。

最初に遭遇した騎士達も打撲や硫酸による火傷といった手傷を負った者はいたものの、ルエミの【回復魔法】や回復ポーションによる早期の応急処置もあって、死者を出さずに解決できたのは本当に幸運だった。

ランディーやジーナとラルフが言うように、町に乗り込まれなくて本当に良かったと心から思っている。


「ウルミナ。あの“マッドネスパイソン”がこんな場所に現れるなんて……」

「ええ。明らかに可笑しいわね……」

「可笑しい。と言うと……?」


私とルエミが交わしている会話にナターシャさんは興味本位で入ってきたものの、今後の騎士団が対応していくための一要素として伝えた。


「“マッドネスパイソン”が暖かすぎず寒すぎないこんな辺鄙な町の周辺に現れるなんて、通常では考えにくい。本来はもっと温暖な気候をしている岩場や森林に棲み付いているのに、これはイレギュラーとしか言えない。そう考えざるを得ないですね」

「そうか。とすれば……」

「はい……」

(例の黒い魔力を帯びてはいなかったけど、ギルドで得た情報と東方支部の騎士団がかき集めた事例、そしてイレギュラーな場所や状況で“マッドネスパイソン”の出現。やっぱり……)


町に忍び寄る大型モンスターの討伐に成功したのは良かった。

だが、少ししか抱いていなかった疑念が……。現実になって欲しくない懸念が確信に変わる。


(近いうちにスタンピード。もしくはそれに類する大事件が起きてしまうかもしれない)


もしもの時を考える必要が出てきたわね。

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