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第260話 帰還した先達の冒険者

馴染みのBランクパーティーと再会します!

俺達Bランクパーティー【トラストフォース】はクエストや休養のサイクルをしながら冒険者生活を送っていた。


「お疲れ様です。こちらが今回のクエストの報酬となります」

「ありがとうございます!」


夕方に差し掛かろうとした時間帯、馴染みの受付嬢であるナミネさんに俺達はクエストの完了を報告していた。

それからはギルド飯に洒落こんで、他愛ない話で盛り上がって、楽しく過ごす事になった。

そんな一日を終えて翌日を迎える。


「う~ん。いい天気だな」


俺達はいつものように起きて、朝食をいただいた。

今日はクエスト明けなので休養日を取る事になり、軽めの鍛錬をした後、思い思いの行動を取る事にしてみた。


「あっ。この果物安いですね!皆の分も買いましょう!」

「いいな。それ。だったらこれも……」


俺はセリカと一緒にギルドで受けられるクエストの確認や選定を終え、食材の買い出しへ来ている。

ミレイユはクルスと一緒にポーションを始めとするクエストや冒険に必要なアイテムの買い出しに出ており、エレーナはお留守番だ。

外に出るといろんな人から注目の目線を向けられたり、声を掛けられるようになってきており、これも悪い気はしない。

俺とクルスだけならともかくだが、セリカやミレイユ、エレーナのいずれか一人でも連れていると、顕著と言うほどではないが、それも多くなる傾向がある。

客観的に見ても、3人共ルックスもスタイルも申し分ないからな……。


「あの、トーマさん……」

「ん?」

「よろしければ、少しお茶をしていきませんか?あの店……少し気になっておりまして」


俺はセリカから一緒にお茶の誘いを受けた。

セリカが向いている方角に目をやると、周りのお店と比較しても綺麗であり、恐らく新しい店舗なのは何となく分かる。


「そうだな。一杯やっていくか!」

「やったー!」


喜ぶセリカと一緒にお店に入ろうとした時だった。


「あら?トーマ!セリカ!」

「「ッ!?」」


俺とセリカを呼ぶ女性の声が聞こえ、その声には聞き覚えがあり、久しさも湧いてきた。

振り返ると……。


「ウィーネスさん!」

「リエナさん!」

「久しぶり!元気してた?」

「数カ月ぶりね」

「ご無沙汰しております!」


それは俺達が所属する冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に籍を置いているBランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダー格であるウィーネスさんとメンバーの一人であるリエナさんだ。

この二人に会うのは本当に久しぶりだ。

私服姿な事から、恐らく俺達と同じく休養日なのだろう。


「戻って来られたんですね!」

「ええ。二日前にね」

「トーマ達も食材とかの買い出し?」

「はい、そうです」


俺とリエナさんは和やかに話す一方、セリカはウィーネスさんと無邪気に話している。

セリカとウィーネスさんのギフトは『軽戦士』であり、それだけに気心が知れ合っており、姉妹のように仲が良い。


「あの!よろしければ、ウィーネスさん達も一緒にあのお店でお茶飲みませんか?トーマさん、よろしいでしょうか?」

「俺は一向に構わないよ」

「あら、いいの?」

「久しぶりに再会出来ましたからね。俺もいろいろ話を聞いてみたいと思いまして……」


成り行きであるが、俺はウィーネスさんとリエナさんを交えてお茶を飲む事になった。


「う~ん!美味しい!」

「このケーキ絶品!セリカのも美味しそう!」

「美味しいですよ!ウィーネスさんもいただきますか?」

「いいの?それならアタシの分もあげる!追加でこれも頼まない?」

「いいですね!」

((本当に仲が良いな。この二人))


店に入り、ケーキと紅茶のセットが届くと、セリカはウィーネスさんと楽しそうに堪能している。

所属しているパーティーは違うのだが、姉妹みたいに仲良しだなと俺とリエナさんは思うのだった。

ちなみに俺の隣にはリエナさん、セリカの隣にはウィーネスさんの配置だ。


「リエナさん。ウィーネスさんと二人だけですけど、バダックさん達はどうしているんですか?別行動に見えますけど……」

「モレラとトクサは武具の手入れとかで拠点に残っていて、バダックは二人を手伝った後、鍛錬のために別行動を取っているわ。戻って来て一週間は休養日に充てた後、どうやって活動していくかをその内に決めるつもりよ」

「そうですか……。あの……」

「ん?」


バダックさん達の状況を知った後、俺はリエナさんに一つの言葉を投げかける。


「Aランク昇格を懸けたクエスト……失敗に終わってしまって残念でしたね」

「「ッ!?」」


俺がそう言うと、リエナさんとケーキを味わっていたウィーネスさんの手が止まり、セリカも固まった。

昨日、クエストから帰ってきた俺達にナミネさんから結果を教えてもらっており、他のBランクパーティーも同様に伝えられたとの事だ。

もちろん、同じくBランクパーティーでウィーネスさん達と似た時期でAランク昇格を懸けたクエストに臨んでいたケインさんが率いる【ディープストライク】も失敗した情報も共有された。


「やっぱりAランクへの壁は厚かったって事なんですね」

「今の私達では想像がつかないですよ」

「まあ、そうね。あれは受けた人にしか分からないレベルの高さだったわね」

「私達も入念に準備をしてきたのは確かだけど、一歩及ばずだったわ」

「「……」」


ウィーネスさんとリエナさんは過酷だったことを物語らせるような気難しい顔になっており、俺とセリカはそれを見る事しかできなかった。

そこへ店員さんが追加のケーキを持ってきたところだった。


「ハイ!」

「セリカ?」


更に乗ったフルーツタルトをセリカがウィーネスさんに差し出した。


「今回のウィーネスさん達の挑戦は失敗に終わってしまいましたけど、これで終わりと言う事ではないと思いますよ。リベンジするかどうかは本人の意思を尊重しますけど、次は何であれ、私は応援しますよ。そうですよね、トーマさん?」

「え?あ、あぁ。そうだな」


セリカの考えている事を聞き、俺は思わず頷いた。


「それに、未知の領域に足を踏み入れる事そのものが誰でも怖い筈ですけど、ウィーネスさん達【ブリリアントロード】の皆様は臆する事なくAランクの昇格を懸けたクエストに挑み、生きて戻って来たんです。余程の覚悟がなければできないとも、やりたいとも思えませんし、少なくとも私達だったら、今その資格を貰えたとしても、きっと躊躇ってしまいますよ。Bランクの昇格を懸けたクエストに挑む時の私達でさえ、不安や怖さも本心では抱いていたのに、その上だろうAランクの昇格を懸けたクエストに臨むのは普通の能力や気持ちでは踏み切ろうって思えないんですよ。実際、Aランクの昇格を懸けたクエストに挑んでから何ヶ月も会えない間を経て、こうして再会できてお茶を楽しめるのだって、私は嬉しくてしょうがないですよ!」

「「「……」」」

「それに、Aランクになろうがなれまいが、ウィーネスさんは私の憧れる人である事に変わりありませんよ!」


純粋な言葉を並べるセリカに対し、俺はウィーネスさんとリエナさんと一緒にその場で呆けたが、同感せざるを得なかった。


「セリカ……」

「ウィーネスさん?」


不意にウィーネスさんはセリカと向き合い、少しずつ距離を縮めていった。


「もお~!嬉しい事言ってくれるじゃな~い!セリカ!」

「ちょ、ウィーネスさん!」

(やっぱり好きだわ!この子!)


ウィーネスさんは嬉しさを隠さない表情をしながらセリカを抱きしめて頬をスリスリし始め、セリカもあわあわしながらも、こちらも嬉しそうにしている。

セリカの言う通り、仮にウィーネスさん達が成功しようが失敗しようが、尊敬の念を抱いている事に変わりはないし、先達の冒険者である事もまた事実である。

尊敬してこうありたい人物がいる事そのものは、本当に幸運だと思っているから。


「まあ、失敗には終わっちゃったけど、アタシ達は諦めるつもりなんて微塵もないよ。反省して考えて、また鍛え直して、今度こそAランクの称号を勝ち取ってみせる!易々と追い付かせないわよ!」


そう言うウィーネスさんの表情はスッキリした様相であり、リエナさんも凛としながらも決意を秘めた表情をしている。

今ここにいないバダックさん達も同じ事を考えているだろう。


(カッコイイな……。俺達も……。そうでありたい……)


強いだけじゃない。心意気も信念も確かに備え、尊ぶべき人格をした先達の冒険者であるウィーネスさん達に改めて敬意を抱く俺とセリカだった。

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