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第257話 錯綜

第四章も終わりが近付きました。

晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。


とある地下空洞————————


「準備も計画も滞りなく進んでおります」

「それならば何も心配する事は無いわね……。特に、例の武器の適合者も問題ないのね?」

「はい。全員、暴走や副作用と言ったトラブルはございません」

「よろしい」


壁に付けられた蝋燭から灯る微かな火がぼんやりと石造りの廊下を照らし、薄暗く不気味な空間に一人の男性と女性が歩いている。


「ビュレガンセ王国騎士団を始めとする監視の目を搔い潜りながらのため、色々と手間はかかりましたが、手筈が全て整うのは時間の問題かと……」

「ふふふふ。完璧に進められているようで安心したわ。ダーラム」


ダーラムと言う黒い短髪に異様な白肌と紅色の瞳をした精悍ながらも不気味な黒い気配を纏った男は組織の幹部格だ。

それからおどろおどろしい漆黒が包む広大な空間へと足を踏み入れ、下を見下げると黒い装束や外套に身を包んだ大勢の部下らしき人物達が狂信的な表情を見せている。


「では、どうぞ」

「ええ」


女性は舞台のような壇上に立ち、数秒の沈黙が空間を包んだ後、口を開いた。


「皆の者。私の理念や野望に賛同し、ここに集った事を感謝する。我々はこの腐り落ちた世界を滅ぼし、理想の世界を作り上げるために活動してきた。再生や創造に破壊は付き物であり、理想の実現には金と権力、武力と快楽、そして野心こそが切り離す事のできない不可欠な要素である。死こそが人生の終焉であり、我々に敵対、歯向かう者は闇へと還してやる事こそが情けなのだ。私は古来よりの歴史から学んだ事があり、無用な争いを消すその方法を知ったのです」


女性は数秒の溜めを作り、結論付けたような一言を放った。


「全てを抑える独裁よ」


充分だった。過激極まりない思想と悟らせるには充分過ぎる一言だった。


「今こそ裏より、私がこの世界を支配するために全てを破壊し、理想の世界を作り上げるため、圧倒的な指導力と権力を手にし、全てを支配する時が来た。皆の者は私が支配した世界において高位な身分と理想の未来を保証された選ばれし者共だ。私と共に弱き者や不要な存在を淘汰し、全てを我が物とする時代を作り上げよう。我が同胞達よ!今こそ立ち上がるのだ!」

「「「「「「「オォオーーーーー!」」」」」」」


スピーチを終えた後、部下達は狂信者のごとき歓喜の声をあげた。

黒を基調にした煽情的なドレスに身を包み、銀世界に広がる雪のような白い肌に緋色の瞳をしており、深い宵闇に引きずり込むような濃い黒髪に紫が混じった腰より伸びたロングヘアーと暗い世界を醸し出す得体の知れない気配を感じさせる現実離れした妖艶な美貌をした女性。


「バスディナ様、バンザ~イ!」

「「「「「バンザ~イ!」」」」」

「「「「「バスディナ!バスディナ!バスディナ!バスディナ!バスディナ!」」」」」


異様なカリスマ性を持つその女性の名はバスディナ・ドゥルーズ。

女性の演説は誰が聞いても苛烈かつ独善的なのは明らかだが、それを可笑しいと思う者は少なくともその場には一人としていなかった。

その場を去ろうとするバスディナの周りにはダーラムを含めた黒衣に身を包んだ10人ほどの幹部らしき側近が控えており、いずれも不気味で禍々しい魔力や覇気を纏っている。

その中には【アテナズスピリッツ】を裏切ったゼルナやウェシロスで起きた事件に一枚噛んでいたマラリナもいた。

どうやら幹部の側近らしきポジションに収まっているようだ。


「楽しみだわ……」


ダーラムを連れながら廊下を歩くバスディナは小さくも妖しい笑い声を零していた。



◇—————————————


王都ファランテス・王城——————


「以上が来週の予定となります」

「分かりました。手筈を整えるのは任せます」


白に近いベージュを基調にしたゆとりのある清潔な空間には高級な執務机と応接セットが置かれており、従者はスケジュールの確認を終えてすぐに部屋を出た。


「さて、来週も外交や視察があるのだけど……」


部屋に一人となって椅子に深く腰を掛けているのはアイリーン・デュ・ビュレガンセ。

ビュレガンセを治める女王陛下であり、国の代表と言える存在だ。

より良い国にする事が第一の責務であるため、国内統治はもちろん、他国との外交だって欠かせない。


「この件も看過できないし、あの件も明日中に片付けないといけないし、何よりこれが……」


複数枚の書類を手に取りながら軽く疲れた様子を見せているところ、ノックの音がした。


「はい!」

「お母様。わたくしです。リリーネもいます」

「どうぞ」


ドアを開けて入って来たのは、ビュレガンセ王国第一王女であるミーシャ・デュ・ビュレガンセ様と第二王女であるリリーネ・デュ・ビュレガンセ様だ。

二人はアイリーン様の実の娘であり、ミーシャ様が姉でリリーネ様が妹だ。


「ミーシャ、リリーネ。どうしたの?」

「来週の海外視察を含めてご相談があるのですが……って大丈夫でしょうか?」

「あら?私ったら疲れているように見える?」

「ちょっとだけ」


ミーシャ様とリリーネ様はアイリーン様が疲弊気味である事を見抜いたようであり、心配の言葉を掛けた。

王族と言っても、そこはやはり親子だな。


「少し休まれた方がよろしいですよ。わたくし達もお手伝いします」

「そう。じゃあ、この件ってミーシャも関わっていたよね。分かる?」

「存じ上げております。引き受けます」


ミーシャ様の進言を聞き入れ、アイリーン様はいくつか仕事を振り分けた。


「そ~……」

「「リリーネ!」」

「ひゃい!」

(う~。来るんじゃなかった~)


一方、リリーネ様は事務作業を嫌がっているのか、こっそり抜けようとしたものの、アイリーン様とミーシャ様に止められた。

笑顔でこそあるが、ドスが効いているような声のトーンにリリーネ様は渋々受ける事になった。


「ミーシャ。来週の予定について相談があったのでは……?」

「それは後にします。お母様は少しお休みになって下さい。半分はわたくしとリリーネで片づけますので」

「そう、助かるわ」

「さあ、リリーネ。わたくしの部屋で仲・良・く、公務に関係する書類を処理していきましょうね!?」

「しょ、承知しました」


ミーシャ様は近くにいたメイドさん数名に書類を運ばせた後、リリーネ様と部屋を出た。

笑顔で怒るって……やっぱり恐いな。


「ふう。ミーシャはしっかり者だけど、リリーネはどこかお転婆ね。海外視察や外交も隙を見せたら変装してぶらりと街歩きしちゃうんだから。まあ、その行動力や積極性は大した物だけどね……」

(こっちの件については確認された数がまだ少数ではあるけど、短い期間で頻発するようなら……)


アイリーン様はある物を手に取って真剣な表情をしながら見ていた。


(ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部や各冒険者ギルドにも緊急の連絡をする必要が出てくるかもしれない)


冒頭に「王都近辺で確認された黒い魔力を纏ったモンスターについての報告」と記載された一枚の報告書を……。

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