第256話 お祝いと情報共有
トーマ達とAランク冒険者達が再開します!
晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。
俺達はいつもの冒険者生活を送っていた。
「こちらが成功報酬でございます」
「ありがとうございます」
俺達はBランク向けのクエストを終えて完了手続きを済ませた。
Bランクに上がってからは受けるクエストの難易度は上がっているものの、入念な準備と下調べをしておいたお陰で、攻略は比較的スムーズだった。
多少の傷は負ったものの、エレーナの【回復魔法】や外傷用ポーションで問題なくリカバリーできたので、後に引くような影響は残らずに済んだ。
何より、貰える報酬の金額がCランクの時よりも大きく上がっており、準備のための回復用アイテムを始めとする消耗品を買うための経費よりも遥かに大きな金額を得られるようになっていった。
「それから、こちら【トラストフォース】の皆様に与えられた支援金でございます。確認してください」
「はい、確かに」
Bランクになってから、ギルドから支援金を貰えるようになった。
そのお陰で資金面に一層の余裕ができるようになり、クエストにも生活にもメリハリが付きやすくなっている。
俺達はBランクになってからまだ日は浅いけど、これから実績を重ねていけば、支援金の額も増えていく。
何気にモチベーションが上がってくる。
「よし!まずは家に戻るか!」
「「「「ハ~イ!」」」」
今はまだ昼下がりなので、まずは拠点となる邸宅へとまずは戻っていった。
報酬も入ったので、今日はご馳走でどっか食事をしようかと考えており、それを知ったセリカ達はウキウキしていた。
今日を含めた三日は休養日を設けるので、全員がラフな私服になっていた頃だった。
「はい!」
「ごめんください」
「この声……」
聞き覚えがあると思いながら、コンコンとノックをされたドアに迷いなく駆けて扉を開いた。
「あ、あなた方は……」
「久しぶりね。元気にしてたかしら?」
「ウルミナさん!それに皆様も……」
自宅を訪れてきたのはAランクパーティー【ノーブルウィング】のリーダー格であるウルミナさんであり、同じメンバーのルエミさんにジーナさん、ランディーさんにラルフさんと勢揃いだ。
全員が私服な辺り、クエストに行く前後ではなさそうだ。
「ご、ご無沙汰しております」
「そうね。クエストで数カ月間ほど遠いところに行っていたから、確かに久しぶりね」
「訪ねてきて下さるのは嬉しいのですが、一体どういったご用件で……?」
「まあ、目的は二つあるんだけど、一つ目はこれよ」
ウルミナさんが伸ばした手の方に視線をやると、ジーナさんが美味しそうな食材が入った籠を持っており、ランディーさんがワインの入った瓶を持っていた。
「Bランクへの昇格、おめでとう!」
「え?お祝いするために態々……」
「そんなところかな?」
笑顔でそう答えるウルミナさんに俺は感動すら覚えた。
俺達なんかのために足を運んでまで成功を祝ってくれるなんて、本人の人柄はもちろんだけど、これがAランク冒険者の気概とも思えてくる。
「本当にありがとうございます。嬉しいです」
「ウルミナさん達に祝われるなんて光栄です!」
もう喜ぶしかなかった。
特にウルミナさんと同じ『魔術師』であるミレイユは感極まっている。
その場で小躍りしそうになったが、俺はすぐに切り替えるように質問した。
「目的が二つあると仰っておりましたが、もう一つは……?」
「そうそう。二つ目の方がトーマ達にも伝えておきたい事なのよ」
「そうなんですね。込み入った話のような気もしますので、中に上がりますか?」
「それは助かる」
「お邪魔するわよ」
ウルミナさん達の真剣味を帯びたような表情を見て、ただの世間話ではないと悟った俺は中へ招き入れた。
全員が椅子に腰を掛け、少しだけ殺伐とした空気になりながらも、俺はウルミナさん達からある情報を聞かされることになる。
「黒い魔力を帯びたモンスターと遭遇した?」
「えぇ。私達がクエストを遂行している道中でそのモンスターに襲われていた人達を見つけたのよ。幸いにも相手は“ゴブリンジェネラル”一体だけだったから大きく苦戦する事なく倒せて、被害を受けそうになった人達も無事に助ける事ができたわ」
それはウルミナさん達が黒い禍々しい魔力を持ったモンスターと遭遇した事であり、対処に当たったと言う話であった。
黒い魔力を帯びたモンスターは大なり小なりのパワーアップを受けるものの、大した傷を負う事無く倒してみせたのは流石と言うところだ。
「トーマ達は最近、その黒い魔力を帯びたモンスターと遭遇したって話をカルヴァリオさんから聞いたんだけど、それは本当なのね?」
「はい。ビラドの近くで討伐系のクエスト中に出くわした“ワーウルフロード”がそれでしたね。通常の個体よりも魔法に対する防御力が高いように感じましたね」
「ウルミナ……」
「うん」
俺達が以前にやり合った黒い魔力を纏った“ワーウルフロード”の情報について話すと、ルエミさんがウルミナさんに「もしかして?」を伝えるようなアイコンタクトを取った。
「トーマの言う通り、その黒い魔力を纏ったモンスターは通常の個体では考えられないような力を持っていたわ。実際、ルエミのデバフ効果のある【付与魔法】も効果が薄かったし、ジーナやランディーがいなかったら大変な場面もあったからね」
「それほどだったのですか?」
「思い返せばそうだったわ。その辺の弱いモンスターならばともかく、魔法攻撃に対する耐性が比較的弱い筈の“ゴブリンジェネラル”がさっき説明したような防御力を見せていたわ」
ウルミナさんとルエミさんの深刻さを帯びたような表情から見るに、本当と思って間違いないと思えた。
「確かにルエミの弱体化の効果がある【付与魔法】も大して効いていなかったし、心なしか、“ゴブリンジェネラル”も通常の個体よりも如何せん凶暴だったわね。アタシとランディーがいなかったら撤退も視野に入っていたかもしれなかったくらいだった」
「はい。ラルフが通常のよりも異常である事を前もって察知していなければ、とんだしっぺ返しを喰らっていた可能性もあったな」
「例の黒い魔力については随分前より共有されていたからな。その前情報がなかったら、俺も察するのに時間を要していたかもしれなかったし、対処にも苦心していたかもしれなかった。何とかなったのを抜きにしても、重く見るべきと捉えるには充分だと思うぞ」
そう言うジーナさん、ランディーさん、ラルフさんの表情は険しかった。
Aランクを冠する冒険者でさえも、軽く見ていい内容でなかったのは少なからず察する事ができた。
「まあ、私達が見た例の禍々しい魔力を感じ取った事のあるトーマ達に共有しておきたかったからね。その件については他のギルドのBランク以上のパーティーにも伝わる事でしょうね。確定でこそないけど、すんなりスルーしていい問題じゃないから」
「そうですね……」
ウルミナさんの言葉を聞いて、俺達の気も引き締まった。
誰かしらに被害を及ぼすかもしれない情報をこの数週間で知った以上、俺達も他人事で済ませられないのは分かったからだ。
「でも、分かったからこそ、できる事もありますからね。こうして教えてくれた事、感謝しております。ありがとうございます」
「礼には及ばないわ。改めて言わせてもらうけど、Bランクの昇格、本当におめでとう!あなた達が私達と同じ場所に立つ日を楽しみにしているよ」
「はい!精進します!」
俺達は立ち上がって礼の意味を込めたお辞儀をした。
ウルミナさん達との話はこれにて終える事となり、軽めにそれぞれの近況を伝え合った後、彼女達は去っていった。
「本当に素晴らしい人柄をしているよな。ウルミナさん達って……」
「私もそう思います。実力が優れているだけでは、心の底から尊敬しようなんて気持ちが湧く筈もありませんから」
俺とセリカはそう言いながら見送っていた。
「トーマさん。せっかく上等なお酒や食材を頂きましたので、今から美味しそうなおつまみとか買いに行きませんか?」
「もうすぐ夕飯だし、何か買ってこう!」
「いいですね!私も一緒に行きます!」
「私も!」
「ああ、僕も!」
「うふふふ……」
ウルミナさん達から貰った情報は忘れないようにしつつも、美味しい食事とお酒を楽しみながら一夜を過ごすのだった。
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