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第253話 先達の冒険者達の挑戦

先達の冒険者達が新たな挑戦に踏み切ります!

晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。

俺達はいつもの冒険者生活を送るようになった。


ある日の事だった。


「ありがとうね。見送りに来てくれて」

「いえ、俺達がやりたくてやっているだけですので……」


俺達はティリルにある馬車ターミナルに来ており、目の前に立っているのは冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に所属するBランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダー格であるウィーネスさん達だ。


「本当に受けられるんですね。Aランク昇格クエストを……」

「えぇ!皆と話し合って、決心が付いたわ!」


ウィーネスさん達はBランクに上がってから数年に渡って実績や成果を挙げ続けていき、王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部より、Aランクの昇格を懸けたクエストの挑戦権を得た事を教えられた。

Bランク昇格クエストは冒険者ギルドのギルドマスターの判断で決められるものの、Aランクの場合は冒険者に関係する記録やデータが全て保管されている連盟本部の許可を貰わないと受ける事さえできない。

Bランク向けのクエストの達成率はもちろん、責任感や冒険者としての心構え等の人格面も見られるとの事であり、これまたと思いもしたが、聞かずともその理由は察した。

Aランク冒険者は冒険者の中でも最高位を証明しており、それに相応しい実力はもちろん、冒険者として模範的な行動と振る舞いも持つ必要があるからだ。


(俺達から見ても、ウィーネスさん達は人格面で問題があるとは思えない。後は、実力がAランクに相応しいかどうかになるな……)


ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部の厳しい審査を乗り越えたAランク冒険者は言ってみれば、国が持つ財産と表現されても大袈裟ではなく、有事の際はビュレガンセ王国騎士団本隊と共に要人警護の任務等、非常に重要な仕事を任されるケースも珍しくない。

そのため、Aランクまで駆け上がれば、Bランク以上の支援金が貰えるだけでなく、下手な貴族や豪商以上の権力や市政に対しても一定の発言力を有すると言う特典もある。

ただひたすらに強い実力を持っているだけでは達成や解決ができないクエストやトラブルも一定数あり、そのために冒険者ながらも一種の裁量権を与えられるとの事だ。

知れば知るほどにAランクまでのし上がった冒険者のロマンを感じるな。


「しばらくはティリルに戻っては来れないんですよね?」

「うん。長引く可能性はあるけど、最低でも3~4ヶ月はかかっちゃうかもね」

「そうなってしまう事を想定して、クエストで資金稼ぎに集中しつつ、それぞれ鍛錬や準備を重ねてきたわ」


俺が問い掛けると、ウィーネスさんとリエナさんはそう言った。

全員が決心したような表情をしており、モチベーションも高まっている。


「ウィーネスさん……」

「リエナさん……」

「モレラさん……」

「セリカ」


セリカとミレイユ、クルスが一歩前に出て、ウィーネスさんの後ろにいたモレラさんは彼女の横に並び立った。

短い間だったけど、俺達はウィーネスさん達に稽古を付けてもらった事があり、セリカはウィーネスさんに、ミレイユはリエナさんに、クルスはモレラさんに特に世話になったからな。


「モレラさん。頑張って下さい。落ち着いて冷静に立ち回れば、上手くやれるはずです!」

「リエナさん。あなたは私が憧れる『魔術師』の一人です。リエナさんだったら、きっとできるって信じています!」

「「……」」


クルスとミレイユはモレラさんとリエナさんにそれぞれ激励の言葉を送り、二人は少しの沈黙の後に口を開いた。


「ありがとうな。クルス。お陰で覚悟を決める事ができたよ。君の言う通り、落ち着いてやっていくよ」

「モレラさん」

「ミレイユ。憧れているって言ってくれて、本当に嬉しく思う。あなたがそう信じてくれるならば、私も応えない訳にはいかない。皆とAランクに上がれるよう、ベストを尽くすわ」

「リエナさん」

「あの、ウィーネスさん」


モレラさんとリエナさんは力強く応えてくれた。

続いて、セリカがウィーネスさんに話し掛ける。


「セリカ……」

「ウィーネスさん。私、ずっと追いかけます。私にとってのウィーネス・ルーラインは……。私の憧れであり、目標としている冒険者です。Aランクに上がろうとも、途方もないくらいに強くなろうとも、凄い存在になろうとも、この気持ちは変わりません。だからウィーネスさんも自分を信じて挑戦して下さい!」

「……」


セリカは言える限りの言葉をウィーネスさんに伝えた。


「セリカ……」


するとウィーネスさんがセリカの下に歩み寄り……。


「も~セリカったら~!何て嬉しい事言ってくれちゃうのよ~?そんな風に真っ直ぐ言われちゃったらやるしかなくなるじゃ~ん!」

(やっぱ好きだわこの子~!)


ウィーネスさんは無邪気な表情をしながらセリカを抱きしめて頬をスリスリし始め、セリカは少し慌て気味になっているが、満更でもなさそうだ。

そうこうしている間、馬車の出発時刻が迫って来た。


「では皆さん。頑張って下さい!」

「ありがとう。じゃあ、行ってくる!」


こうしてウィーネスさん達【ブリリアントロード】の面々を乗せた馬車はティリルを発ち、俺達はその姿が見えなくなるまで見送るのだった。


「行っちまったな……」

「行ってしまいましたね……」

「でも、ウィーネスさん達ならって気持ちもあるから、ほどほどに期待して待つ事にしよう」

「そうですね」


俺とセリカは少しセンチメンタルな気持ちになったが、ウィーネスさん達の成功を信じて切り替えた。


「トーマさん。一回ギルドに立ち寄りませんか?次に受けるクエストについても確認しておきたく思いまして……」

「それもいいな」


クルスの進言で俺達はギルドに足を運ぶ事になった。


「また討伐系のクエストにするか?それとも……」

「これとかどうでしょうか?ティリルから比較的近いですし、報酬も平均以上ですよ」

「お!いいじゃん!これにしよう!」


依頼掲示板と睨めっこしながらクエストを吟味している時だった。


「トーマ達じゃないか?」

「「「「「ッ!?」」」」」

「やあ。どんなクエストを受けるか考えている途中かな?」

「ケインさん!」


そこに声を掛けてきたのはBランクパーティー【ディープストライク】のリーダー格であるケインさんであり、他の皆様も揃っている。

モンスターの魔石や素材を持っている事から、クエストから帰って来たところだろう。


「クエストから戻って来た感じでしょうか?」

「あぁ。“ブレイズオルトロス”の討伐クエストを終えたんだ」

「“ブレイズオルトロス”?それってレア度Aの強力なモンスターじゃないですか?」


クルスによると、“ブレイズオルトロス”は頭が二つの炎を纏い、強力な【炎魔法】を放てるモンスターだと教えてくれた。

そんな強いモンスターを討伐してくるとは流石ケインさん達だ。


「皆いくらか火傷しちゃったけど、エルニの【回復魔法】で治してもらったしね!」

「加えて、マーカスさんの防御もあって、誰かが大火傷して大変な事にって事態には至らなかったのも幸いですね」


ケインさんの相棒的存在のフィリナさんと『僧侶』のエルニさんはそう言い、マーカスさんは少し照れている様子だった。

話によれば、『重戦士』であり、タンクのような役割を担うマーカスさんが“ブレイズオルトロス”の攻撃を引き受け、ケインさんとフィリナさんの接近戦、『魔術師』のニコラスさんによる援護で最終的には勝つ事ができたと教えられた。

防御力に優れたマーカスさんの加入は、ケインさん達にとっては想像以上に大きかったようであり、更なる活躍を聞いて俺も嬉しくなった。


「マーカスさんには助けられましたよ。ありがとうございます」

「いえ、そんな……」


労うニコラスさんに対し、マーカスさんは謙遜する。

俺達は微笑ましい様子でそれを見ていた。


「っと。話し込み過ぎたかな?俺達は完了報告の手続きを済ませるとしよう。では、また」

「お疲れ様でした」


ほどほどの会話の後、ケインさん達はクエストの完了を報告するため、受付へと歩いていった。

それからどんなクエストを受けるかを決めた俺達も受付に行こうとした時……。


「ん?」

「トーマさん?どうされましたか?」

「あれ、ケインさん達」


どういう意味か、ケインさん達はギルド職員に案内される形で階段を上がって奥へと進んでいった。


「……?」

「トーマさん?」

「いや、何でもない。帰ってクエストに向けてのミーティングや準備に取り掛かろう!」


俺はその場で取り繕ったが、一瞬だけ見えてしまったんだ。


ケインさん達が案内している職員が持っている封筒に「Aランク昇格クエストの概要」と記されていた物を……。

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