第252話 プレゼントされた物
今回はゆったり目なお話です!
晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。
俺達はいつもの冒険者生活を送るようになった。
「グゴォオオオ!」
「「フッ!」」
「【土炎風水魔法LV.1】『エレメンタルショット』!」
「ギョォオオオオ!」
俺達はBランク向けのクエストのため、広い草原に赴いている。
内容はレア度Bのモンスターである“マッドネスジャガー”数体の討伐だ。
高さは3メートルほどの濃い灰色と銀色が混じったような毛並みをしているネコ科型のモンスターであり、鋭い牙と鉤爪に加え、図体に反してスピードや身のこなしに優れているから厄介だ。
セリカとクルスが“マッドネスジャガー”の右前脚を振り下ろす攻撃を躱し、俺は振り終わりのところで【土炎風水魔法LV.1】『エレメンタルショット』をその身体に浴びせた。
「ガァアア!」
「ハッ!」
「ギィ!?」
「【剣戟LV.2】『暗空刺突』!」
「ギィァアアア!」
4色の弾丸が着弾した事で粉塵が巻き上がると、クルスが細長く尖った棒状の投擲物が“マッドネスジャガー”の右眼球を貫き、追い討ちで腹部を剣で貫いた。
「【炎魔法LV.3】『フレイムトルネード』!」
「【聖属性魔法LV.2】『セイントジャベリン』!」
「グギャァアアア!」
続いてミレイユの【炎魔法】とエレーナの【聖属性魔法】による中遠距離攻撃による援護で更にダメージを与えていくと、“マッドネスジャガー”の身体は既に虫の息寸前になっている。
そこで飛んで来たのは……。
「【剣戟LV.2】&【土炎風水魔法LV.1】『エレメンタルセイバー』!」
「【剣戟LV.3】&【風魔法LV.3】『ディストームブレード』!」
「ギャァアアアアア!」
俺は剣に変化させた“ヴァラミティーム”に四色の魔力を纏わせた斬撃を、セリカは“シルフェリオス”に翡翠色の魔力を纏わせた斬撃を浴びせ、“マッドネスジャガー”を両断し、その身体は光の粒子となって消滅した。
今ので最後の一体であり、これにてクエスト達成だ。
「ふう~。終わったな。皆もお疲れさん!」
「トーマさんもお疲れ様です!」
「上手くやれて良かったですよ!」
俺が皆を労うと、セリカとクルスが歩み寄って来た。
「最後のトーマさんとセリカの必殺技、綺麗に決まってたから、見ててスカッとしました!」
「わたくしもそう思います!」
ミレイユとエレーナも集まった事で、全員揃い、戦いの場となった草原を後にするのだった。
俺達は依頼を出した近くの町村の人々に討伐した事で不安要素を取り除いた件を伝えると、大いに喜んでくれた。
依頼主やその関係者の喜ぶ顔を見ると、達成感がひしひしと込み上げてくる。
宿屋で一泊した後、馬車に乗り込んでティリルへと戻っていった。
馬車を走らせてから数十分……。
「それにしてもクルス。お前の故郷のビラドに住んでいるお爺さんからもらったその新武器、切れ味いいだけじゃなくて、面白いな」
「はい。剣だけではなく、使い方を教えてくれる資料もありましたので、基本的な扱い方が分からないと言う事はありませんでした。今以上に使いこなせれば、僕の戦術の幅も広がると思うのは自分でも想像できますね」
クルスが手入れをしているのは、今回のクエストでも大いに使っていた直刀であり、彼の祖父であるテルゾさんから譲り受けた物だ。
切れ味や耐久性が高いながらも、軽くて振り回しやすいだけではない、特殊な仕掛けを施されている。
「柄の中にも小型の暗器を仕込めるなんて、『シーフ』から見れば凄いアドバンテージですからね」
そう、投擲用の小さな暗器を柄の中に仕込める仕様になっており、搦め手や至近距離での対抗手段を生み出してくれるのだ。
テルゾさんから託された戦いや立ち回りの心得が書かれた書類も受け取っており、それを参考に勉強や鍛錬も欠かさないでいる。
勤勉で向上心のあるクルスから見れば、嬉しい事であるのは間違いない。
「そう言えば、エレーナが付けているその指輪……。ロミック様からいただいた物よね?何かの魔道具?」
「こちらですか?そうですね。少し微妙な言い回しになりますけど、自分を落ち着かせる効果がある魔道具であり、家族から貰ったかけがえのないプレゼントと言ったところですね……」
「「「「?」」」」
エレーナの左中指に付けている指輪はハイレンド伯爵家の当主であり、彼女の父であるロミック様が与えてくれた物だと教えられた。
俺達はある休養日の間、エレーナの希望で彼女の実家を訪れており、父であるロミック様や兄であるガレル様と久しぶりに顔を合わせる機会があった。
その時に彼女はロミック様から選別の意味で一つの指輪を送られていた。
それは装着している者にリラックスさせる成分を分泌させる魔道具としての効能も含まれている物だとエレーナは言っていた。
その時にエレーナはロミック様からプレゼントと称した指輪を渡してくれた事を改めて教えられた。
宝石のように輝くような魔石が埋め込まれていただけでなく、ハイレンド伯爵家である事を示す家紋まで刻まれていたから、ロミック様のこだわりが伝わってくる。
「家紋を彫った指輪を贈るなんて……。お父様もお兄様も過保護が過ぎる気もしなくはありませんね……」
「なるほど……」
「何にしても、良かったな。家族からのプレゼントをいただけて」
「はい。大事にしていきます」
指輪に手を添えながら言うエレーナの表情はパッと明るくなった。
やはり家族から素敵な贈り物を受け取るのは、嬉しい物だな。
クルスとエレーナの新しい武具や魔道具を見て思った事がある。
(個人の実力もそうだけど、俺達それぞれの能力を存分に引き出すアイテムとかが手に入っちゃったな。クエストも戦いも一層捗りそうだ)
そう、手に入れた経緯は様々だが、俺達は固有の武器や魔道具を手に入れていれる事になったのだ。
俺はベカトルブ近辺で発見されたダンジョンの最奥で発見した“ヴァラミティーム”。
セリカはBランク昇格を懸けたダンジョンの最奥で発見した“シルフェリオス”。
ミレイユはビュレガンセ王国第一王女ミーシャ・デュ・ビュレガンセ様から賜った“ブレイストーグル”。
クルスは彼の祖父であるテルゾさんから譲り受けた直刃の小剣。
エレーナはロミック様から贈られた魔道具を兼ねた指輪。
自分が持つギフトやスキルを活かせる物であり、俺達の戦力を向上させてくれるだけでなく、戦術の幅も広げてくれるのは間違いない。
それでも、頼りがちになってしまわないようには心掛けるようにしよう。
使いこなすだけの地力があって、初めて活かせるものだからね。
「ティリルに着いたら日が暮れると思うから、完了報告したらどこかで食事しよう!」
「「「「賛成です!」」」」
俺達は今日の夕飯の事や当面のプランについて語りながら、馬車の旅を続けるのだった。
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