第247話 必殺技の時間稼ぎ
ミレイユの必殺技が炸裂します!
晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。
いつもの日常に戻る中、俺達はクエストのため、クルスの生まれ故郷であるビラドを訪れる事となった。
被害の元凶となっている“ワーウルフロード”と相対するが、かつて闇ギルドの事件で遭遇したビデロスと似たような禍々しい魔力を持っている事が判明した。
「グルルルル……」
(よし。最初にすべき事は……)
俺達は怖気を感じさせる魔力を纏う“ワーウルフロード”と向き合い、武器を構えている。
「行くぞ!」
「ハァアア!」
まずは俺とクルスが突進し、攻撃及びヘイト集めを行っていく。
ミレイユとエレーナは後ろで待機し、セリカは間に入って二人を守りながら、時には援護しながら立ち回っている。
中遠距離攻撃の手段を持ち、機動力に優れているセリカならではだ。
(俺達で何としても時間を稼ぐ。どうか頼むぞ!ミレイユ!)
(集中よ……集中……)
俺はミレイユに視線を送ると、彼女は心得たように頷き、右手に握る杖に【炎魔法】を、左手に【氷魔法】を発生させながら意識を集中させていく。
今のミレイユが持つ最高の一撃を放つための一手を……。
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回想・ビラドに着く前の馬車の中———————
「よくて20秒くらいですね」
「そうか。逆に言うと、20秒稼げばミレイユのあの魔法を問題なく撃てるって事でいいんだよな?」
「はい。まぁ、欲を言えばの話になっちゃうんですけどね……」
俺達はクエストに向かう道中、特定の状況に遭遇したらどう対応するかどうかのシミュレーションをしていた。
様々なシチュエーションを想定しながら打ち合わせを行う中、ミレイユのある魔法について話を詰めていた。
「私が使える消散作用を持つ『ヌルマナ』を発生させる魔法で最も強力なのは【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』なんですけど、やっぱり時間がどうにもかかってしまうんですよね……。もう少し縮められるように鍛錬はしているんですけど、今の段階では20秒はかかります」
「そうか……。そこは少しずつ改善できればって事にして、その魔法を使うとなれば、ミレイユを守りながら時間を稼ぐのに加え、可能ならば敵の動きも封じられれば好都合だな」
ミレイユの必殺技の一つとして定着している【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』はかなり強力であるが、放つのに時間を食ってしまうのが欠点だ。
魔道具である“ブレイストーグル”による魔法の強化や効率化があっても、その難易度はやはり高く、それがなかったら使いこなせるかどうかも分からないくらいだ。
「そうなると、敵の動きを封じたり気を逸らすための手段をいくつか用意しないとですね」
「それならば、僕が囮役として攪乱させるか、セリカの【雷魔法】やエレーナの【付与魔法】で動きを緩慢にさせる及び封じる事になりますね。ミレイユはその間、他の魔法が使えないので……」
「違いないな。ただ、それは奥の手の一つでって事にしよう。ミレイユの必殺技を使う作戦に踏み切る時は、俺やクルスが注意を引いて、セリカやエレーナが援護する事を中心に立ち回ろう。もちろん、無理し過ぎない範囲でな!」
「分かりました」
「何か、すみませんね……」
概ねのプランを詰め終えた後、ミレイユはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「何言ってるのよ。お互い様でしょ!」
「わたくし達もいますから、その状況になったら全力でフォローしますよ」
「セリカ……エレーナ……。分かった!頼りにするね!」
「僕やトーマさんもいるぞ~」
「忘れていないよ!」
「「「「「ハハハハハハ!」」」」」
和みを交えた打ち合わせになった。
回想終了———————
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(実戦でやるのは初めてだけど、やるしかない!)
「【雷魔法LV.2】『ハイパラライズ』!」
「【付与魔法LV.2】『ハイスロウアー』!」
「グォ?」
セリカは麻痺効果、エレーナは相手の動きを鈍重にする魔法を放ちながらミレイユの前に立ち、“ワーウルフロード”の動きを封じに掛かった。
俺とクルスはミレイユに意識が向いてしまわないように立ち回る。
このまま時間を稼げばいい状況になった時……。
「グゴォオオオオ!」
「何?」
(こ、これは……?)
何と“ワーウルフロード”はどす黒い魔力を噴き出しながら雄叫びを上げた。
セリカとエレーナの放った魔法は確かに当たっていたが、まるで意に介していないようだ。
瞬間……。
「ガァアアア!」
「クルス!」
「ッ!!」
(軌道は見えてる。躱せ……)
クルスは“ワーウルフロード”の左腕が振るう鉤爪を躱すためにバックステップをした。
避け切れた……筈だった。
「グゥウウウ!」
(魔力を伴った斬撃!?これは……)
クルスは咄嗟にロングナイフで防御もしたが、その強烈な一撃を完全に躱し切る事ができなかった。
それで戦闘不能にこそならないが、軽視していい傷でないのは誰の目から見ても明白であり、このままスルーもできなかったけど……。
「クルス!」
「ミレイユ!僕に構うな!自分の魔法を撃つ事だけに意識を集中するんだ!」
「ッ!?」
クルスの張り上げた一声がミレイユを冷静にさせるも、その表情には少しの歪みが生じている。
追撃を受けそうになった時……。
(ユニークスキル【ソードオブハート】!)
「【武術LV.1】&【炎魔法LV.1】『ブレイズキック』!」
「ガァアア!」
俺は【ソードオブハート】のオーラを脚に回し、技に合わせて“ヴァラミティーム”を脛当てに変形させ、炎を纏った飛び蹴りを“ワーウルフロード”の頭に当てて仰け反らせた。
「【付与魔法LV.2】&【回復魔法LV.2】『オーバーヒール・ブレイク』!」
「グゴォオオ!?」
「ナイス!」
エレーナは過剰回復を促す事で相手にダメージを与える【付与魔法LV.2】&【回復魔法LV.2】『オーバーヒール・ブレイク』で“ワーウルフロード”の右脚をグズグズにした。
辛うじて立てているが、足取りは覚束ない様子だ。
「【剣戟LV.3】&【風魔法LV.3】『ディストームブレード』!」
「ギャァアアア!」
そこにセリカが“シルフェリオス”を握りながら凄まじいスピードで接近し、組織崩壊を起こしかけている右脚を切断してみせる。
片脚を失った“ワーウルフロード”はひれ伏すように体制を崩している。
そして……。
「皆!準備できた!」
「よし!セリカ!クルス!退け!」
「「ハイ!」」
「【土魔法LV.1】『アースバインド』!」
「グゴォオ!?」
俺は 土の縄を生成し、“ワーウルフロード”の身体を縛った。
弱っているのもあってか、最初に決めた時よりも動きの制限ができている。
お膳立てはバッチリだ。
「決めろ!ミレイユ!」
「【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』!」
「ギョォオアアアア!」
現時点でミレイユが使える魔法の中で最強の威力を誇る【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』が放たれ、一直線に向かった光線は“ワーウルフロード”の身体に綺麗に命中した。
上半身の殆どが抉れたその身体は黒味を帯びた光の粒子となって消えていき、それは俺達の勝利とクエスト達成を告げる瞬間にもなるのだった。
(ふう、勝った……)
こうして俺達は予想だにしなかった異様なモンスターとの戦いを終えるのだった。
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