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第244話 クルスの生まれ故郷へ……

今回はクルスの故郷が舞台です!

晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。

ビュレガンセ王国第二王女のリリーネ・デュ・ビュレガンセ様の護衛任務を終えて、いつもの日常に戻りつつある時だった。


リリーネ様の護衛任務から10日が経った。


「トーマさん、もうすぐビラドに着きますよ」

「みたいだな」

「……」


クエストと休養のサイクルを過ごす中、俺達を乗せた馬車はビラドと言う村に向かっている。

Bランク向けのクエストのために赴いてきたのだ。

準備に抜かりはないものの、目的地が近付くに連れてクルスの表情がどこか緊張気味になっており、それは今回のクエストの恐さから来るプレッシャーではない。

と言うのも……。


「クルス」

「ん?」

「やっぱり、緊張する……?自分の生まれ故郷に戻って来るのは……」

「うん……」

「「「……」」」


そう、ミレイユの指摘通り、俺達がクエストを受けるために向かう目的地のビラドはクルスの生まれ故郷であるのだ。

クルス曰く、訪れるのは約2年振りとの事であり、彼がかつて所属していた今は解散してしまったCランクパーティー【パワートーチャー】に在籍していた時、クエスト帰りの成り行きで寄ったのが最後であるとの事だ。

近況は定期的に報告していたものの、いざ対面するって形になれば状況は変わってくる。

俺達が初めて会った頃と今のクルスは現状が大きく違っているからね。


「まぁ、クエストを引き受けた以上は達成できるように努める所存です。今は切り替えていこうとする気持ちですから、大丈夫ですよ」

「そうか。何かあったらすぐに相談して欲しい」

「はい!」


そうこうしている間にビラドへと到着した。

緑と自然を感じさせる景観であり、グリナムと比べれば規模はこじんまりに感じるものの、割と活気付いている。


「どうだ、クルス?久しぶりの故郷は……?」

「懐かしいです」

「のどかな町ですね」


故郷の空気を感じ取っているクルスはセンチメンタルな気持ちに浸っており、エレーナも居心地の良い場所だと思ってくれているようだ。

確かに空気が美味い。

俺達が依頼主の下に向かっている時だった。


「ん?クルスか?」

「はい?あっ!」


一人の中年男性に声を掛けられたクルスは思い出したような表情を見せた。


「おじさん!」

「クルス!久しぶりじゃないか?元気にしておったか?」

「うん、元気にしてるよ!」

「皆、クルスが帰って来たぞ!」

「え?本当?」

「本当だ!」

「皆……」


クルスが知り合いの人物と再会したのをきっかけに、町の人達がクルスに駆け寄って来た。

確かに俺達の活躍が知れ渡るようにはなったけど、やはりパーティーメンバーの生まれ故郷には特に広まるようだな。


「久しぶりだな。里帰りか?」

「今回はクエストで来たんだ。町長さんからの依頼でね」

「おぉお、そうか。俺が案内しよう!」

「ありがとう」

「さあ、お連れさんもどうぞ」

「ど、どうも……」


俺達はクルスの知人に案内される形で依頼主の下に来た。

その道中、俺達の事を羨望の眼差しで見つめてくる人が沢山いたな。

俺達【トラストフォース】も有名になってきたのかもしれないが、天狗になってしまわないようにも心掛けよう。

歩く事10分ほど……。


「こちらです」

「あっ……」


依頼主が拠点にしているだろう建物の前に来ると、一人の男性が入り口で待っており、町の人達と比べて上質な装いをしている辺り、その人物が村長だろう。

見たクルスははっきり気付いたようなリアクションを見せた。


「モーゾさん」

「おぉお。クルス。久方ぶりじゃな」

「ご無沙汰しております」

「聞いたぞ。Bランクの冒険者になったと」

「うん、お陰様で……」


モーゾさんはビラド村の村長であり、クルスが子供の頃からの顔馴染みであり、今回の依頼主の人物だ。

挨拶もそこそこに、俺達は応接間へと案内された。


「いや~。それにしても今回の頼みを引き受けてくれるのがクルスやそのパーティーの皆様とは、人生……何が起きるか分からないもんじゃのう」

「そうかもしれませんね。かく言う僕自身もそう思います」

「して、クルスと一緒にいるのが……」

「はい……。僕が所属する冒険者パーティー【トラストフォース】の仲間達です」

「どうも……」


クルスに紹介されるような形で俺達も礼儀正しく頭を下げ、簡単に自己紹介もした。

心なしか、「僕の仲間は凄いんだよ」とでも言いたげなクルスの表情は活き活きとしているように見えた。

少しの会話を挟んだ後、本題となるクエストの確認に入った。


「村の近くに棲み付いている“ワーウルフ”達の討伐と近辺の調査が今回の依頼って事になるんですね」

「はい。何卒よろしくお願い申し上げます」


俺はモーゾさんと詳細を詰めていき、対処へと動く事になった。

“ワーウルフ”は人狼のようなモンスターであり、高い身体能力と知性を持ったレア度Bのモンスターだ。

それが何匹もの集団となって近くの林を住処にしては田んぼを荒らす、人々を襲っては怪我を負わせる等の被害がここ最近になって多発している。

そこでBランクパーティーの俺達に白羽の矢が立ったと言う事だ。


「それで話は変わるのだが、クルス……」

「はい?」


モーゾさんはクルスに一つの質問を投げかけた。


「クルスよ。手紙で知ったのじゃが、イントミスの一件は……大変だったようじゃのう」

「はい……。僕にとっては厳しい経験でもありましたね」


イントミスで起きた事件はモーゾさん達も知っている。

当時メンバーの一員ではなかったエレーナにも共有しているものの、クルスと俺達は彼が一つ前に所属していたパーティーの仲間であり、騙されて魔改造されたドキュノと交戦した末、結果的に命を奪う事になった。

仕方ないと言えばそれまでだが、俺達にとって、特にクルスにとっては半永久的に忘れられない一件だったのは間違いないと思う。


「でも、今は乗り越えられたと僕は思っている。いつまでも過去に引きずられていられないからさ!」

「そうか……」


そう言い切るクルスの表情は、既に踏ん切りを付けているのが分かるくらいに晴れやかだった。

気にはしつつも、経験として、自分の糧にしていこうとも見て取れる。

モーゾさんと話を終えた俺達はクエストの内容について確認した後、早速“ワーウルフ”達が住処にしている場所へと向かう事になった。


「クルス。どうだった?久しぶりに村長さんと話した感想は……?」

「懐かしかったですね……。僕が冒険者を志す前の仲でしたから、余計に……」

「……」


やはり縁のある人物としばらく会わない機関が続いた後で再会するのは、やはり心に来るのだろう、クルスはどこか切なそうな表情をしている。

古い付き合いのある相手と期間を空けてから再開すると言うのは、何かしらの思い出を引き起こさせてくれるものだな。


「そう言えば、クルスっておじいさんとおばあさんに育てられたんだよね?村に来てからそれらしい方と会えているような気がしてないと思うけど……」

「あ~、それは……」


“ワーウルフ”達が棲み付いているとされる目的地へ向かう道中、ミレイユはそれとなくクルスに話を振るが、彼の表情はどこか後ろめたいような気持ちも混じっているように見えた。


「皆には言ってなかったけど、ばあちゃんは既に亡くなっているんだ。2年前に……。じいちゃんは既に農家を引退していて、村の相談役みたいな事をしている。身体もここ数年で悪くなってきているのもあるんだけど……。その……」

「そうなんだな……」

「だとしたら、ごめんね。踏み込んだような質問しちゃって……」

「気にしないで下さい。さあ、向かいましょう!」


クエストに向かう道中で知ってしまったけど、クルスも大変な家庭環境で過ごしてきたんだなと知る事になった。


クルスのお爺さんの事が気にならないと言えば嘘にはなるけど、今は“ワーウルフ”の討伐と言う名のクエストに集中せねばと気持ちを切り替えるのだった。

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