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SS 第22話 【エルニ視点】女子会ならぬ姉妹会

今回はBランクパーティー【ディープストライク】の一員であり、

縁の下の力持ちのような存在であるエルニ視点のお話です!

私の名前はエルニ・メイナー。

冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に所属するBランクパーティー【ディープストライク】の【僧侶】をしている。

私は今、ティリルにある一つの喫茶店にいる。


「ふう~」

「あんたは本当に昔から、暖かい物を食べると今のようなセリフが出てくるわよね。まぁ、実際にこの紅茶は美味しいけど」


ケーキを始めとするお菓子や紅茶が美味しいお店として評判のお店で、私はある人物と一緒にお茶を楽しんでいる。

その相手は……。


「この店には仲間達と一緒に来た事が何度もあるお店だからホッとするのもあるのよ。姉さん!」

「ふ~ん。ケイン達と一緒にね……」


グレーとベージュが混じったようなロングカーディガンと白のブラウスに長めの青いスカートを着こなしている女性はアリエス・メイナー。

同じく私が所属しているギルドに籍を置き、Bランクパーティー【ウォールクライシス】の【付与術士】であり、私の姉だ。

私と姉さんは、身を置いているパーティーは別々の為、こうしてゆっくりと顔を合わせて話す機会は殊の外少ない。

だけど、今日はお互いに休養日が重なったのもあって、こうして姉妹の時間を満喫する事になったって話だ。

因みに私が身を置いているパーティーのリーダー格であるケインさんは同じメンバーのマーカスさんと一緒に鍛錬をしており、フィリナさんとニコラスさんは必要なアイテムの買い出しに出ている。


「それで、ケイン達とは言わずもがな、新しく入ったマーカスだっけ?彼とも上手くやれてるんだよね?」

「うん。マーカスさんには助けられているよ。クエストにしても、私生活にしても、真面目で律儀な人だから私も……。ケインさんやフィリナさん、ニコラスさんも信用をしているから大丈夫よ」

「そう。エルニやケイン達がそう思っているなら、私はいいんだけどね。姉としてはちょっと心配なのよ」

「姉さん……」


マーカスさんは元々【アテナズスピリッツ】に所属している冒険者ではなかった。

以前はティリルよりもかなり西にあるウェシロスと言う街を拠点にしている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に所属しているBランク冒険者だったが、そこに関わっている悪徳貴族や悪徳騎士達、更には以前に所属していたパーティーの只ならぬトラブルを経て、移籍と言う形で【アテナズスピリッツ】に来た。

それから紆余曲折を経て、私達のパーティーに入る事となった。

『重戦士』であるマーカスさんの実力はかなり高く、相手の攻撃や注意を引き受け、決め手を作る役目であるタンクとしての能力は本物であり、そのお陰で以前よりも安定的にクエストをこなす事ができているから、仲間になってくれて心から感謝している。


「姉さんの方はどうなの?」

「私の方は変わらずよ。モンスター討伐や護衛任務も問題なくこなせているし、リカルド達とも楽しくやれてるわ」

「それなら良かった。あ、そう言えば姉さん。トーマさん達【トラストフォース】のBランク昇格を懸けたクエストの監督をしたのよね?成功に終わったところまでは聞いているんだけど……」

「興味ある感じ?」

「うん」

「そうね……。私の主観にはなるけど……」


私が姉さんと近況報告し合い、トーマさん達のBランク昇格に関係する話題に入ろうとした時だった。


「あ、アリエスさんだ!」

「「ん?」」


不意に聞き覚えのある女性の声が届き、私は姉さんと共にその方角を向いた。


「エルニさんもいる!」

「アリエスさん、エルニさん、ご無沙汰しております。偶然ですね」


声を掛けてきたのは同じくBランクパーティー【デュアルボンド】の【魔術師】であるサーシャさんであり、同メンバーの【僧侶】であるエリーさんもいる。

私服姿で買い物を済ませた様子から、私達と同じく休養日なのは見て分かった。


「エリー、サーシャ、久しぶり!姉妹揃ってお買い物とお茶?」

「はい、必要な消耗品やアイテムを購入し終えたので、一息つこうと思いまして……」

「そう。良かったら一緒にお茶しない?席空いてるよ」

「よろしいのですか?」

「問題ないよ。エルニ、大丈夫だよね?」

「私は問題ないよ」

「じゃあ決まりね!」

「ありがとうございます!」


こうして、成り行きでエリーさんとサーシャさんと一緒の席になった。

同メンバーであるイアンさんとイオンさんは鍛錬のため別行動であり、「姉妹で楽しんでおいで」と言われたとの事だ。

因みに姉さんの隣にエリーさん、私の隣にサーシャさんが座り、物の見事に姉と妹で区別を付けるような席の配置となっている。


「ご一緒させていただいて、何か恐縮です」

「何言ってるの?私やエルニだって、久々に顔を合わせるんだからさ。良い機会よ」

「あはは……。どうも……」


恭しい様子のエリーさんに対し、姉さんは気さくな振る舞いで和ませる。


「こう言っちゃあれですけど、アリエスさんって意外とフランクな方なんですね」

「うん、私もそう思います」


小声で聞いてくるサーシャさんに対し、私はうんうんと同意する。

昔から姉さんとは仲良しであるけど、私はどちらかと言えば、控えめで余り自分からあれこれと意見を出さない一方、姉さんはしっかりしつつも比較的明るくて勝気な性格だ。

子供の頃から遊ぶ時も何にしても、私は姉さんに引っ張られる事が多かったからね。

それから私と姉さんはエリーさんとサーシャさんとお茶菓子を味わいながら、近況報告をしている。


「それでね!私がバーッと殲滅して、お姉ちゃんがイアンとイオンに【支援魔法】を掛けて、トドメってなったの!」

「まあ、そうね。サーシャもいくらか手傷を負っているところを私が【回復魔法】を掛けてあげたんだけどね」

「その節はどうも……」

「あっ!」

「どうしたの?姉さん?」


エリーさんとサーシャさんが会話に花を咲かせていた時、姉さんは何かを思い出したような様子を見せた。


「殲滅で思い出したんだけど、トーマ達がBランク昇格を懸けたクエストを話そうとしていたのを忘れてたわ」

「あ、言われて見ればそうね。エリーさんとサーシャさんに声を掛けられたからうっかり……」

「え?」

「確か成功されて、Bランクに上がったと存じ上げておりますが……」


私は姉さんと共にトーマさん達がBランク昇格を懸けたクエストに関係する話を途中で止めていた事を思い出した。

【アテナズスピリッツ】に所属しているBランクパーティーはBランクの昇格を懸けたクエストに挑んだパーティーの結果を知らされるシステムになっており、トーマさん達が成功したのは知っている。

ただ、詳細までは知らされず、今いる面々の中で知っているのは立会人をした姉さんだけだ。


「聞きたい聞きたい!お姉ちゃんも知りたいよね?」

「サーシャ。まぁ、確かに気にはなりますね」

「こほん。そうね……。何から話そうかな……?」


はしゃぎ気味なサーシャさんと知識欲が滲んでいるエリーさんの表情を見て、姉さんも「仕方ない、話すか」みたいな素振りを見せ、そこから語り出した。

話を聞いて数分……。


「想像以上に過酷じゃないですか?」

「“レッドブルーバイコーン”って言えば、強力な魔法をいくつも使えるモンスターですよね?それがダンジョンのボスモンスターとして立ちはだかるなんて……」

「私も初めて見た時は焦りも覚えたわ。トーマ達じゃ厳しいかもしれないって……」

(話だけ聞いてもゾッとするわ……)


姉さんによると、トーマさん達が挑んだ内容と経緯は非常に厳しい物だった。

そもそもの話、“レッドブルーバイコーン”の強さは野生の個体でもCランクパーティーで対抗できるパーティーはごく僅かであり、Bランク以上のパーティーで対処するのが常識とされているほどに強力なモンスターだ。

“レッドブルーバイコーン”がダンジョンのボスモンスターとして現れたら、Bランクパーティーでも、私達【ディープストライク】でも無傷で勝てる保証ができないくらいの強敵になるのは、想像に難くない。

トーマさん達はそれほどまでの修羅場に身を置いていたんだって思うと、何とも言えないような気持ちも抱く自分もいる。

もしも自分がそんな状況に置かれたら、必ず成し遂げられるかどうかと言う考えも過ってしまったくらいだ。


「それにしても、よく倒す事ができましたね」

「本当にそれよ。リカルド達もトーマ達の命が危うい状況になったら助けるつもりだったし、仮に勝てなくても健闘次第では合格にする方針だったからね。けど……。トーマ達は成し遂げた。これは紛れもない事実であり、名誉な事だと思ってる」

「改めて聞いてみると、本当に凄いですね」


姉さんの裏表のない褒め言葉にエリーさんとサーシャさんも褒めている。

もちろん、私自身もトーマさん達【トラストフォース】の皆さんが現在進行形で活躍し続けている話を聞いては励みになっているし、負けてられないと思わせてくれる。

本当に目が離せないパーティーなのだから……。

それから世間話を交えてお茶菓子を楽しんでいたら時間が過ぎていった。


「ふう。話し込んでたら日が暮れてきたわね」

「トーマさん達の話が中心になっちゃったよ」


気付けば夕暮れになっており、エリーさんやサーシャさんと別れ、私は姉さんと街中を歩いている。

しばらく歩いて少しして、私は口を開いた。


「姉さん」

「ん?」

「久しぶりにお話出来て良かったよ。刺激にも学びにもなったし、私にとっても弾みが着いたって心から思う。ありがとね」

「何~?急に~?」

「何でも!」


私は夕日を背にしながら、姉さんと笑い合っていた。

因みに、この後姉さんは【ウォールクライシス】のリーダー格であるリカルドさん達と合流し、私も顔を合わせた。


やはり先達の冒険者達と触れ合う機会は大切にしないとだね。

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