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第243話 鍛錬と何気ない会話

また日常に戻ります!

晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。

ビュレガンセ王国騎士団東方支部のトップであるナターシャさんらと共にビュレガンセ王国第二王女のリリーネ・デュ・ビュレガンセ様を護衛し、ビュレガンセ王国を治める女王陛下であるアイリーン・デュ・ビュレガンセ様と謁見する機会を得て、ファランテスを発つまで有意義な時間を過ごした後にティリルへと戻って来た。


「ふぅううう」

「「「「……」」」」


俺達は拠点にしている家から離れた岩場へとやって来ていた。

目の前にはミレイユが集中して魔力を練り上げ、握る杖には炎を、添える左手には凍気を纏った氷塊を作り出している。

すると……。


(よし、まずは『ヌルマナ』を発生させて、一つの塊にしていくんだ……。集中。集中……)

「おぉお!“レッドブルーバイコーン”が発生させた『ヌルマナ』だ」

「こうして見ると神々しさを感じさせますね」


ミレイユの両手にはバチバチと音を立てながら、見惚れそうな輝きを纏った魔力『ヌルマナ』を発生させていく。

その量は徐々に増えてきているが、それに比例して歪になり始めている。


「くっ……」

(一つの丸い箱のように圧縮して形を作り、少しずつ流し込んでいく。歪になりかけたらまた圧縮して……)


それでも、集中力を高めたミレイユは圧縮した『ヌルマナ』が崩れないように形を整えながら大きくしていく。

そして、両手でやっと持てるくらいの岩みたいなサイズまで大きくした頃には形を保てるギリギリの状態になり、遂に解き放つ。


「【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』!」


ミレイユの杖から太めのレーザーが放たれ、轟音と共に少し離れた巨岩に向かって飛んで行く。

直撃したその巨岩は……。


「ほえ~……」

「跡形もないと言うのはこの事か……?」

「改めて見るととんでもないですね」

「やっぱり凄いんですね『ヌルマナ』って」


【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』は消散作用のある『ヌルマナ』を発生させ、圧縮して放出する魔法攻撃だ。

その威力は巨岩の大半を抉っているだけでなく、抉れているところが丸い筒状のような形で蒸気を残し、ヒビ一つ入っていなかったのだ。

消散もとい、跡形もなく消えて散るとは、恐ろしいったらありゃしない。


「うっ……」

「ミレイユ!」


するとミレイユはふらついて倒れそうになったが、杖で身体を支えて踏みとどまり、俺達は彼女の下に駆け寄る。


「大丈夫か?」

「はい……。ちょっと疲れただけですので」

「そりゃそうだろう。“ブレイストーグル”を付けているとは言え、『ヌルマナ』を発生させる魔法を何回も使っているんだから。ほら、魔力回復のポーションだ」

「ありがとう」


クルスの言っている通り、ミレイユの顔には疲労の色が目立っていた。

『ヌルマナ』を発生させるだけでなく、圧縮するための形作りとそれを維持するための集中力も要されるため、精神力も削ってしまう。

ミレイユは【炎魔法LV.1】&【氷魔法LV.1】『デリートショット』と言う【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』の簡易版のような魔法を編み出し、続いてその練習を始めた辺りから疲労が加速していったのがいい証拠だ。

ビュレガンセ王国第一王女のリリーネ様から賜った“ブレイストーグル”による魔力を効率良く練り上げ、コントロールする補助効果があってもこの様相だから尚更である。

見ていて思ったのだが、俺はもう一つ懸念点を見つけた。


「【炎魔法LV.2】&【氷魔法LV.2】『デリートレーザー』なんだけど、構えてから放出するまで時間が結構かかっているように思うんだが……」

「はい。『ヌルマナ』の発生と形作りに神経を尖らせる必要があるので、どうしても手間取ってしまうんです」

(強力なのになればなるほど時間を食ってしまうのが、現時点における短所だな)


そう、威力に比例して、『ヌルマナ』を発生させるのに時間を要してしまうのが目に見える弱点であり、どうにか克服すべき課題である事が今日で浮き彫りになった。

実際、ミレイユもこれ以上魔法を撃つのも厳しいくらいであり、話し合いの末に今日はここで切り上げにした。

まあ、“ブレイストーグル”の効果を確かめるためにミレイユが魔法の試し撃ちをしたのもあったんだけど、何にしても今日の鍛錬はここまでだ。


「よし!午後は食事を取った後でクエストに必要なアイテムの補充に充てよう」

「「「「はい!」」」」


そうして俺達はティリルの街に訪れ、少し遅めの昼食を取る事になった後、馴染みの武具屋である『ロマンガドーン』に足を運んだ。


「ありました。魔力回復や体力回復のポーション!それぞれ5本ほど購入しますね!」

「“パージフルード”も何本か購入しときますね!」

「あぁ、頼む!」

「ねえ!これとか使えそうじゃないクルス?」

「うん。値段も手頃だし、買っておいても損は無さそうだな」


明日には何かしらのクエストを受けるつもりなので、必要なポーションやアイテムを買いに来ていた。

店に入ってしばらくした時だった。


「おっ!トーマ達じゃねえか」

「はい?あっ……」


一人の男性が声を掛けてきて、それには覚えがあった。


「リカルドさん!それにブラゴスさんにウォードさん、レミーさんも!」

「よっ!ノイトレオ以来だな」

「あんた達もお買い物?」

「はい。明日クエストに出ようと思いまして……」

「そうか」


それはBランクパーティー【ウォールクライシス】のリーダー格であるリカルドさんであり、同メンバーのブラゴスさんとウォードさんにレミーさんもいる。

気付いたセリカ達も俺の下に駆け寄った。


「俺達は昨日クエストを終えたばっかりでな。明後日には何かしらクエストを受けるため、必要なアイテムを補充しに来たんだ」

「見たところ、クエストに出向く準備に余念がないって事だな。良い心掛けだぜ」

「何事も事前準備は大切ですからね」


リカルドさん達が来たのも俺達と同じ理由なようだ。

今日や明日は休むつもりなだけに全員私服姿だが……。


(皆カッコいい……)

「「「「?」」」」


リカルドさんは黒いデニムジャケットに白のTシャツを着用し、黒の太めなパンツとワイルドなイメージをしており、ブラゴスさんは似たような格好をしつつもこちらは茶色がベースになっている。

ウォードさんは白シャツに紺色のベストにスラックスとカジュアルさの中に知性を感じさせるような装いだ。

レミーさんは黒い革ジャンと黒いミニスカートと動きやすくもどこか魅惑的な格好をしており、彼女のスタイルの良さを際立たせている。


「そう言えば、アリエスさんの姿が見えませんが……?」

「今日は休養日なのもあって別行動なのよ。エルニと今頃、姉妹水入らずで楽しんでいるかもね!」

「そうなんですね……」


【ウォールクライシス】の一員で【付与術士】のアリエスさんはBランクパーティー【ディープストライク】の【僧侶】であるエルニさんと一日を過ごす予定だとレミーさんから聞かされた。

確かアリエスさんとエルニさんは実の姉妹だったな。


「……」

「ウォード、どうした?気になるアイテムでも見つけたか?」

「いや、売り物ではないんだが……ミレイユ」

「はい?」


ミレイユをジッと見ているウォードさんに対し、リカルドさんが声を掛けている。

正確にはミレイユの右手首と言った方が合っているだろう。


「その右手首に付けている腕輪。もしかして、あの時のダンジョンで見つけた素材で造られた魔道具か?」

「はい、そうです」

「少しだけ手に取ってもいいか?」

「どうぞ」


興味を抱いている様子のウォードさんに対し、ミレイユは“ブレイストーグル”を手渡した。

受け取るや否や、ウォードさんは自分の目線まで寄せる。


「ふむ……」

「何か感じたりしますか?」

「そうだな。“レッドブルーバイコーン”の二色の角と特殊な魔石によって作られているだけに、握っただけでも微細な魔力を感じ取れるぞ。俺は【炎魔法】や【爆撃魔法】が得意だからなのもあるかもしれないが……」

「ウォードさんもそう思いましたか?私も初めてこれを握ったり付けた時には同じ事を感じました!」


どうやらウォードさんもミレイユと同じ事を思っているそうだ。

となると、【水魔法】や【氷魔法】を得意としているBランクパーティー【ブリリアントロード】のリエナさんが握ってみるとどうなるのか、ふと気になりもしたが……。


「随分とレアな魔道具を手に入れたもんだな」

「はい、本当にそうですよ」

「何にしても、また一段上のステージに行ったって感じがするわね」


ウォードさんとレミーさんもどこか嬉し気だ。


「では、俺達はこれからギルドに行って、どのクエストを受けるか決めてきます!」

「そうかい。頑張んな!」

「ありがとうございます!」


そうして買い物を済ませた俺達はリカルドさん達と別れて店を出て、ギルドへと向かった。


「お前ら……ちょっと思っている事があるんだけどよ……」

「何だ?」


俺達を見送るリカルドさんはメンバーに心中を打ち明けるようなセリフを言い、ブラゴスさんが呼応する。


「トーマ達。もっと強くなるな……」

「違いねえ」

「同感だ」

「あたしも同じく!」

「けどな……」


リカルドさんは俺達が更なる飛躍を確信しているような表情をしており、その表情とセリフを見聞きしたブラゴスさんとウォードさん、レミーさんも頷く。

そしてリカルドさんは打って変わって引き締まった顔つきを見せる。


「ランクは同じでも、先達の冒険者としてすんなりと追い越させないよう、俺達も負ける訳にはいかねえよな?」

「だな!」

「ならば『ヌルマナ』を持った魔法攻撃に負けない技を編み出せばいいだけだ!」

「簡単に追い付かせはしないよ!」


同時に先輩の意地に類するような気概を見せていた。

流石は数いるBランクパーティーの中でもAランクに最も近いパーティーと言われるだけあると再認識させてくれる。


現状に満足しっぱなしではいられないからね。

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