第242話 任務の報告
また日常に戻ります!
晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。
いつもの冒険者生活を送る中、ビュレガンセ王国騎士団東方支部のトップであるナターシャさんらと共にビュレガンセ王国第二王女のリリーネ・デュ・ビュレガンセ様を護衛し、王都ファランテスまで辿り着いた。
何とビュレガンセ王国を治める女王陛下であるアイリーン・デュ・ビュレガンセ様と謁見する機会を得て、ファランテスを発つまで有意義な時間を過ごす俺達だった。
「帰って来た~!」
俺達は約一週間ぶりにティリルに戻って来た。
馬車から降りると、拠点にしている街の空気を存分に吸い、少しの間だけ背伸びした。
「トーマ殿。皆、今回は本当にありがとう」
「ナターシャさん」
今回のリリーネ様の護衛任務の責任者であり、ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長であるナターシャさんが部下数名を連れて、俺達の下に歩み寄って来た。
「今回のリリーネ様の護衛任務に同行してくれた事、心より感謝する。今回の護衛任務の責任者として、ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長であるこの私が代表して礼をさせてもらう」
「あ、頭を上げて下さい!当然の事をしただけですので……」
ナターシャさんは部下達と共に姿勢の良いお辞儀をしながら俺達にお礼をしてくれた。
俺はそれを必死で宥めるが、彼女はすぐに顔を上げて口を開く。
「ふふっ。本当に謙虚で誠実な男だな。やはり、同行してくれた冒険者がトーマ殿達で本当に良かったよ。【アテナズスピリッツ】のギルドマスターにもよく働いてくれたと報告もしておこう」
「きょ、恐縮です……」
そう言うナターシャさんは僅かにだけど微笑んでいた。
クールビューティーと言うイメージが良く似合う女性だけど、ふと見せる微笑みを見ると思わず胸が高鳴ってしまう。
「また機会があれば、一緒に仕事ができる事を願っている。改めて、本当にありがとう」
「こちらこそです」
俺はナターシャさんと固い握手を交わした。
本当に良くできた人だなと再認識させられる。
「ナターシャさん!」
「セリカ殿?」
するとセリカが俺の横に立ち、ナターシャさんに声を掛けた。
「初めてお会いした時、手合わせをした時は負けましたが、そのお陰で、私自身も今以上に強くなりたい気持ちが高まりました。もしも手合わせする機会ができましたら、今度は渡り合える、いえ、一本取る事を目標に腕を磨きます。その時は、よろしくお願いします」
「……」
セリカはそう言い切り、その表情には一種の覚悟を感じ取った。
「私から一本取るか……。面白い。その日が来る事を楽しみにしているよ」
「はい!」
そうしてセリカはナターシャさんと握手し、俺達はその様相を暖かい目で見ていた。
俺達はナターシャさんと別れ、拠点にしている冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】へと戻っていった。
「トーマ!帰ったか!」
「お疲れさん!」
「皆……。只今!」
ギルドの扉を潜ると、他の冒険者達が出迎えてくれた。
あぁ、やっぱりここが落ち着くな……。
ビュレガンセ王国の王宮のような豪華さはないけど、この雰囲気が一番快適だ。
「【トラストフォース】5名、護衛任務から戻りました」
「お疲れ様です」
俺は馴染みの受付嬢であるナミネさんと顔を合わせた。
何か久しぶりな気がするな。
「もしもお時間がございましたら、マスターに直接完了の報告をなさいますか?」
「今いるのでしたら、会って報告したいですね」
「かしこまりました。ご案内いたします」
「ありがとうございます」
ナミネさんはテキパキとカルヴァリオさんとコンタクトを取る手続きをしていく。
こうして見るとナミネさんの有能ぶりに安心感を抱いてしまう。
それから案内されて……。
「今回の護衛任務、お疲れ様だったね」
「はい。本当にプレッシャー物でした。まさかビュレガンセ王国第二王女であるリリーネ様の護衛に就くと知った時は本気で驚きました」
「そうか」
俺達はカルヴァリオさんに今回の護衛についての経緯を報告した。
今回の任務はナターシャさんに聞かされるまでは誰を守るかを聞かされていなかっただけにだ。
「これは今回の護衛任務に携わった報酬だ。大切に使うといい……」
「ありがとうございます!」
俺はカルヴァリオさんから報酬の入った革袋を受け取った。
ズッシリした重量感から、結構な金額だ。
「ミレイユ。その右手にはめている腕輪は……?」
「はい。ビュレガンセ王国第一王女であるミーシャ様より賜りました。私達がBランクの昇格を懸けたクエストのダンジョン攻略で見つけた魔石と“レッドブルーバイコーン”の角を中心に作っていただいた “ブレイストーグル”と言う魔道具です。本当にご厚意で用意していただきまして……」
「そうか。あの時見つけた物が立派な魔道具になるとは、良かったな」
「はい!」
そう言うミレイユの表情は明るかった。
続いてセリカが口を開く。
「あの。実はですね、ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長であるナターシャさんとお仕事したんですけど、その前の日に手合わせをさせていただいたんですよ」
「ほう、結果は……?」
「完敗でした。それと、道中でモンスターに襲われた事がありまして、そこでもナターシャさんの実力を見ました。東方支部の隊長を務め、『流氷の剣姫』と言われるだけの事はあると素直に思います」
「そうか……」
セリカはナターシャさんについて思った事を伝えた。
改めて振り返っても、『軽戦士』のギフトを持つナターシャさんの剣の腕前は紛れもなく本物であり、【水魔法】や【氷魔法】の才能も確かだった。
騎士は対人戦には優れているがモンスターとの戦闘は冒険者に比べれば劣る者が多い中、ナターシャさんはどちらも相当高い技量でこなすから驚くしかなかった。
それこそ、血の滲むような努力を重ねてきた賜物である事は想像に難くない。
「ですが、ナターシャさん達との護衛任務を通して、私にも得る物があったと思っております。今回の経験を活かして更に精進していく所存です」
「それならば良かった。今回の護衛任務は君達にとても有意義な経験になったようで何よりだ」
セリカの感想を聞いたカルヴァリオさんの表情も明るかった。
「今回の報告をもって護衛任務を終える事になったが、トーマ達は当面の間、どのように活動していくのかな?」
「今日と明日で休養を取って、明後日には冒険者活動を再開しようと思っております。明日の内に消耗品の補充とかを済ませておきたいのと、どんなクエストを受けるか決めておこうと考えています」
「そうか……。何にせよ、お疲れ様だな。今後の活躍には私も期待しているから頑張るように!」
「「「「「はい!」」」」」
そう言って俺達は部屋を後にした。
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◆
「ふう~。終わった終わった」
「ようやくホッとできますね」
「色んな意味でプレッシャーかかったからね」
「僕も同じく」
「王都どころか王宮の中にまで入るのは意外でしたので……」
俺達は解放感を抱きながら帰路に着いている。
確かに王族の護衛だけならまだしも、王宮の中まで招待され、ビュレガンセ王国を治める女王陛下のアイリーン様と謁見、王宮の宴席に招待され、城下町でリリーネ様とバッタリ出くわす等、内容がとても濃い任務だったからな……。
それだけに、問題なく終える事ができて何よりだ。
「よし!今回の護衛任務で貰った報酬でパーッと行ってみるか!?」
「「「「賛成で~す!」」」」
俺達は仕事終わりに美味しい料理やお酒で英気を養いながら、一夜を過ごした。
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