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第241話 王女様からのプレゼント

王女様の護衛任務、終了です!

晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。

いつもの冒険者生活を送る中、ビュレガンセ王国騎士団東方支部のトップであるナターシャさんらと共にビュレガンセ王国第二王女のリリーネ・デュ・ビュレガンセ様を護衛し、王都ファランテスまで辿り着いた。

何とビュレガンセ王国を治める女王陛下であるアイリーン・デュ・ビュレガンセ様と謁見する機会を得て、お忍びで城下町に来ていたリリーネ様と充実した時間を過ごせた。


王都ファランテスを発つ日を迎えた。


「皆様。この度はわたくしの護衛任務を担っていただき、誠にありがとうございます」

「いえ、当然の事をしたまででございます」


リリーネ様がお礼の言葉を述べ、ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長であり、今回の護衛任務の責任者であるナターシャさんが謙虚に返答した。


「トーマさん達も前へ」

「え?は、はい……」


リリーネ様に促される形で俺達も前に出て、頭を下げようとしたが、「そのままで構いません」と言われた。


「この度のわたくしの護衛任務に協力を受け入れて下さったのがあなた方達で良かったと心から存じます。お陰で、楽しい日々を過ごす事ができました。ありがとうございます」

「勿体なきお言葉でございます」


労いの言葉を掛けられ、俺は丁寧に返答し、セリカ達も頭を下げる。

昨日、王都の城下町を散策していたところにお忍びで来ていたリリーネ様とバッタリ遭遇し、それからは一緒に買い物とかを楽しんだ。

そのお礼も兼ねているのだろう。


「では、失礼します」

「皆様、ご機嫌よう」


こうして俺達はリリーネ様に別れを告げ、王宮を出る事となった。

俺達を乗せた馬車は王都のメインストリートを走り抜け、ティリルに向けて進んでいくのだった。

色々あったけど、これをもって、リリーネ様を護衛する任務は終わりを告げる事となった。


「ふう~」

「終わりましたね」

「王女様を護衛する任務に携わる事になった時はビックリでしたよ」

「僕もミレイユに同じく」

「何にしても、良い経験ができたと思っておりますよ」


俺達は馬車の中で肩の荷が下りたようにホッとしている。

本格的な要人警護そのものが殆どなかっただけに、やはり王侯貴族、それもビュレガンセ王国の王女様を護衛する仕事はプレッシャーが大きかった。

加えて、ビュレガンセ王国の第一王女にしてリリーネ様の姉であるミーシャ・デュ・ビュレガンセ様も紹介され、アイリーン様とも謁見する事になり、豪華な宴席まで開いてもらったのだから……。


「それにしても、雲の上の存在とされている女王陛下とも謁見する機会を得られたのは、本当に有意義で貴重でしたね」

「そうね。あれ?エレーナって王族とは面識なかった感じ?」

「流石にわたくしの実家でも、王族の方々と接点を持つ機会は巡って来ないですよ。それ程までに大きな存在なんです」

「なるほど~」


ミレイユの質問に対し、エレーナは返した。

貴族だからと言って、簡単にお目にかかれる機会は非常に少ないのは想像が付く。

ビュレガンセ王国の貴族階級で言えば、王族の次に偉いのは公爵だから、伯爵の爵位を持つエレーナの実家と比べれば天と地と言っても不思議ではないくらいの差なのだから。


「そう言えばミレイユ。昨日、ミーシャ様から賜ったその魔道具……」

「ん?あぁ、これ?」


クルスはミレイユの右手首に付けている腕輪に目をやり、俺達も釣られるように見ている。

紅色と紺碧色に輝く魔石が中央にはめ込まれており、丁度いいサイズ感だ。


「まさかあの魔石がこんな魔道具に変わるなんてね~」


ミレイユがそう呟くと、俺達は昨晩のある出来事を思い出していた。


□■□■□■□■□■□■□■□■□


回想・王宮の部屋の一室———————


「お呼び立てしまい、申し訳ございません」

「いえいえ、滅相もございません」

「お掛けになって下さい」

「失礼します」


俺達はミーシャ様に呼び出されていた。

最初に案内された客間と同じくらいの広さであったが、それよりもシンプルだった。

どうやら事務的な会議をするのに向いた部屋のようだ。

俺達が座ってすぐに話が始まった。


「ミーシャ様。一体どのようなお話でございますでしょうか?」

「はい。お話を進める前にもう一度確認しておきたい事がございまして……。その、ミレイユさんのギフトは『魔術師』で間違いはございませんか?」

「え?は、はい。仰る通り、私は『魔術師』でございます」

「そうですか。実を申しますと、お呼び立てした皆様の中で特に用があるのはミレイユさんなのです」

「え?」


ミーシャ様は俺達の中でも特にミレイユへ話を持ち掛けるために呼んだ事が分かった。

今のやり取りで魔法や『魔術師』に関係する内容だと確信できた。


「例の物を……」

「はい」

「どうぞ!」

「は、はい!」


するとミーシャ様は側にいる従者に指示を飛ばすと、一つの箱が出てきた。

王族なだけに、何かが入っているだろう箱一つ見ても高級品だった。

ミレイユはミーシャ様に促されるように、差し出された箱を開ける。

目に飛び込んだのは……。


「これは……?」

「こちらは“ブレイストーグル”と言う魔法の威力を高める魔道具でございます」

「“ブレイストーグル”?」


そう、他でもない魔道具である“ブレイストーグル”だ。

最初にパッと見た時には、一瞬だけ宝石と間違えそうなくらいに煌びやかさも備えていたのは今も印象に残っている。


「ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部や【アテナズスピリッツ】に確認を取りましたところ、トーマさん達はBランクの昇格を懸けたクエストに挑んだ際、ダンジョンのボスモンスターとして立ちはだかった“レッドブルーバイコーン”を倒し、最奥にあるアイテムを手にした事はご存じですね」

「は、はい。間違いないです」

(まさか……この魔道具……?)


ミーシャ様は俺達がBランクに昇格した経緯や内容を把握していたそうであり、俺は正直に答える中、一つの仮説に辿り着いた。


「もしかして、“レッドブルーバイコーン”がドロップした素材と奥で見つけた魔石を使って作られたのでしょうか?」

「はい。それらが発見された事を受けて精査、後に王都でも指折りの『錬金術師』のお力を借りてこの“ブレイストーグル”を精製する事になったのです」

「そうなんですね……」

(いくら掛けて作ったんだろう?絶対に費用かさんだと思う)


俺がそう言うと、ミーシャ様が正解である事やできた経緯を教えてくれた。

ここまでやっていただけるなんて思いもしなかった。


「それにしても、どうしてここまでしていただけるのでしょうか?」

「ダンジョン攻略を達成したパーティーがその道中で発見・取得した素材やアイテムを総取りできる事は存じ上げております。加えて、そのボスモンスターが“レッドブルーバイコーン”である事を知り、『ヌルマナ』を発生させる条件を持ったミレイユさんがいる事もあって、お力添えになれればと思いました。こちらはその報酬の一つですから、どうぞお受け取りいただきたいです」

「ミーシャ様……」


ミレイユが質問すると、ミーシャ様は柔和な表情で答えてくれた。

俺は前にミーシャ様から「国民のために力を添えるのは王族としての務めであり、それは王都に住まう人々だけでなく、東西南北の街々に住む方々も同様です。その中には、冒険者も含まれています」と聞かされた事がある。

アイリーン様やリリーネ様もそうだが、ビュレガンセの王族の方々は素晴らしい愛国心を持っており、その人間性や道徳性に裏打ちされている物だと言う事を再認識させてくれる。

この“ブレイストーグル”を作って下さったのも、未来の投資の意味で行った事だとすぐに理解できた。

数秒後……。


「お心遣いありがとうございます。ここまでしていただいた以上、受け取らないのは却って失礼と存じます。謹んで受け取らせていただきます」

「ありがとうございます。ミレイユさんの……皆様の冒険者としての人生に更なる発展とご健勝が実現する事を心よりお祈り申し上げます」


こうして、“ブレイストーグル”は正式にミレイユの手に渡る事となった。


回想終了————————


□■□■□■□■□■□■□■□■□


「それにしてもこんなに凄い魔道具をいただいちゃうなんてね……。しかも王族から受け取ったのもあって心なしか、重みを感じる……」

「え?結構重量があるとかで……」

「物理的な意味じゃないわよ!」

「精神的な意味でしょうか?」

「当たり前でしょ!何キロもあったら腕も上がらないわよ!」


ミレイユはエレーナとちょっとした漫才のようなやり取りをしていた。

エレーナは天然なところもあるんだよな。


「まあ、何にしても、ティリルに着いたらまずは完了の報告をしに行くだけなんだが、その後どうする?」

「僕としては一日だけですが、休みは入れておきたいですね。ポーションを始めとする消耗品や戦闘を補助するアイテムも補充しておきたいですし……。加えて……」

「ん?」


俺はティリルに着いたらどうするかを皆に質問し、クルスは休みを挟む事と次のクエストに向けての準備を勧められ、全員が同意した。

それだけでなく、クルスはミレイユに視線をやっている。


「ミレイユがもらったその“ブレイストーグル”の試し撃ちもしてみた方がいいのではって考えています」

「確かに、効果や機能は概ね聞かされているけど、実践して手応えを掴むのもいいわね。そうしましょ!」

「私も鍛錬とかしておきたいな。ナターシャさんにもリベンジできるように……」

「それじゃあ、ティリルに着いたら今決めた事をすぐにやろう!」

「「「「はい!」」」」


こうして、凄い事尽くしだったリリーネ様の護衛を終えてティリルに向かう馬車に乗っている俺達は気持ちを新たにするのだった。

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