第233話 王女との対面
ファンタジーには欠かせないであろう人物と対面します!
晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。
いつもの冒険者生活を送る中、ビュレガンセ王国騎士団東方支部のトップであるナターシャさんらと共にビュレガンセ王国第二王女のリリーネ・デュ・ビュレガンセ様を護衛する仕事に就く事となり、王都ファランテスまで辿り着いた。
「これが……」
(王都に来る事はあっても、初めて来たぜ……。王族のお城!)
俺は……。俺達は王都ファランテスで最も大きい建物であり、王族が住まうとされる王宮の門前まで来ている。
(この世界に飛ばされて来てから、一度でもいいから行ければ良いなと思っていた場所にこんな形で足を踏み入れるなんて……。ヤバイ。ここに来てロマンが止まらなくなっている自分がいる)
俺が初めて今いる世界に飛ばされてから、今まで見て聞いて、体感してきた事の全てが新鮮に思っていたし、それは紛れもない事実だ。
ビュレガンセ王国の中心地である王都ファランテスを訪れた事もあり、その場所は壮大で華やかで活気が溢れているのは分かり切っている。
だが、王族が拠点とし、国内の政治や経済、軍事や商業に多大な影響力をもたらし、国外の交友関係における最大の要と称されるだろう王宮に直接来るのは初めてだ。
(凄い。これがビュレガンセ王国の王宮……。間近で見たのは初めてだわ……)
(貴族の屋敷が霞んで見えかねない荘厳さと洗練さだわ……)
(貴族階級の頂点が住まう場所の目と鼻の先まで来るなんて、夢にも思わなかった)
「……」
初めて王城に入った俺とセリカ、ミレイユとクルスはただひたすらに目を輝かせていた。
貴族出身のエレーナは比較的落ち着いている様子だったが、流石と言ったところかな。
馬車に乗ったリリーネ様は護衛を連れて門の中へと入っていった。
「俺達の仕事もここまでか……」
「後はギルドに戻って、完了した事を報告するだけですね」
王宮の中まで入れば、後はもう心配ないと思いながらも、これで護衛任務は終了となる。
そう思っていたのだが……。
「トーマ殿。皆。少しよいか?」
「はい?」
「……」
するとナターシャさんが少し離れたところにいる俺達の下へ部下数名を引き連れて駆け寄って来た。
真剣味を持った表情と共に俺達へ伝えられた事。それは……。
「え?リリーネ様が、俺達に是非ともお礼がしたい!?」
「あぁ。王城へ向かう道中で“アーマーリザード”達が王女様達を襲って来ただろう?その時にトーマ殿達が退けるのに戦っている姿を、王女様がその一部始終をご覧になっていたらしいのだ。自分達の身を守ろうとする心意気を汲み取って、是非ともお礼をしたいと先ほどから。今、あの馬車の中に王女様がいる……」
「「「「「……」」」」」
ナターシャさんが向いた方角には護衛対象であり、ビュレガンセ王国第二王女であるリリーネ様を乗せた馬車が停まっている。
あの中に、王族の血を引く王女様が乗っている。
俺はセリカ達に目をやると、全員が首を縦に振った。
「分かりました。我々も参ります」
「感謝する。では、付いて来て欲しい」
俺達はナターシャさん達に案内される形で王族専用の馬車の近くまで歩み寄る。
それからは話を通してもらい、王女の護衛騎士が扉に手を掛け、開かれた。
開かれた扉から出てきたのは一人の女性であり、一目で高貴な身分の女性であるのは分かっても、ただのそれではない。
「ごきげんよう。ナターシャ。そして、わたくしを守って下さった冒険者の皆様方……」
「ハッ!」
(こんなにも近くに……)
俺達は思わずこうべを垂れるように振舞った。
ウェーブのかかった腰まで届く自然発光したように輝く白銀色のロングヘアーに吸い込まれるように透き通った翡翠色の大きな瞳、日に当てるだけで反射しそうな陶器の如き白く綺麗な肌に黄金比のようなスタイルをした美しい女性が降り立った。
身を包むドレスは白を基調にしつつも、要所で煌びやかな刺繍やデザインが施されており、顔周りに付けている髪飾りも宝石のように輝き、イヤリングやネックレスもそれに類するような高級品だ。
絶世の美女と表現したとしても、何も大袈裟ではない。
今、俺達の目の前に立った言葉にできないような神々しさを纏っているその気配を前に、跪かずにはいられないような感覚にさせるその女性の名は……。
「わたくしはビュレガンセ王国第二王女。リリーネ・デュ・ビュレガンセと申します。この度は我々をお守りするために力を尽くしていただきまして、誠にありがとうございます。わたくしが代表して、この度の護衛任務を成し遂げて下さったお礼を申し上げます」
今回の護衛対象であり、ビュレガンセ王国の第二王女。リリーネ・デュ・ビュレガンセ様その人である。
「あ、有難きお言葉、恐縮でございます」
ドレスの裾をつまみながら優雅にお礼をするカーテシーと言う礼儀作法で挨拶をして下さった。
俺達の仲間でありハイレンド伯爵家の令嬢であるエレーナやヒライト子爵家の令嬢であり、親交のあるチェルシア様と比べるのもあれだが、リリーネ様のその振る舞いは一つ一つを切り取っても王族らしい威厳と洗練さを感じさせる。
俺は漫画やアニメでよくあるだろう王様を始めとする王族に対する振る舞いや言葉遣いを頭の中で懸命に検索しながらアウトプットしていったが、周囲の騎士から注意されていない辺り、大丈夫だと思いたいところだ。
何せ俺の目の前に空想の世界でしかない、雲の上の存在であろう王族のお姫様が目の前に立っているのだから。
「皆様、お顔を上げて下さい。再度申し上げますが、わたくしの護衛をする任務をナターシャや我々の騎士達と共に引き受けて下さった事、心より感謝を申し上げます。お礼の意味を込めて、トーマさん達を王宮の中までご案内いたします」
「はっ!ありがとうございます!」
(え?王宮の中……って……?)
優雅な微笑みを見せながらそう言うリリーネ様は何と俺達を王宮にご案内すると言うセリフを発した。
それを聞いた俺達は内心、途轍もない緊張に襲われた。
まぁ、エレーネだけはどこか余裕そうな表情ではあったが……。
それから俺達はビュレガンセ王宮内へと導かれるように入って行った。
たった一つの出入り口である厳かさを感じる門を通り過ぎると、目の前には王都ファランテスを囲う石壁以上に高い城壁が囲っており、常駐している門番や城内を巡回している騎士は数十人に及び、その表現は堅牢無比と言ってもいい。
俺達だったら中に入る自体も厳しいチェックを通り抜ける必要はあるが、リリーネ様のお陰ですんなり入る事ができた。
門を通り過ぎて目の前に飛び込んだのは……。
「「「「おぉお!」」」」
(これが……)
ファンタジーの世界であれば一回は見聞きするだろう巨大かつ洗練さと絢爛さを兼ね備えた立派な建造物であり、ビュレガンセ王国を象徴する場所。
そう、ビュレガンセ王国の王都ファランテスにそびえ立つ王宮だ。
表に出さないようにしてはいるが、俺の胸の高鳴りは留まる事を知らずにいられない。
そしてこの後すぐ、これまたとんでもない方々と邂逅する事になろうとは、この時の俺達は知る由もなかった。
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