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第230話 セリカ VS ナターシャ(後編)

中々シリアスな対人稽古ですが、決着です!

そして次回、とんでもない身分のお方が登場します!

晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。

いつもの冒険者生活を送る中、ビュレガンセ王国騎士団東方支部のトップであるナターシャさんらと共に要人警護の仕事に就く事となった。

すると、セリカはナターシャさんから稽古の相手を申し出られ、それに応じた。


「ヤァアア!!」

(これならどう?)


セリカは突きからの横薙ぎによる二段攻撃をナターシャさんに仕掛けた。

スピードは十分で正確にナターシャさんの脇腹を捉えようとした。


ガッ!

「ッ!?」

「悪くない二段構えだが、私を捉えるにはまだ足りないな……」


捉えたのは、ナターシャさんではなく、彼女が握っている細剣を模した木剣だった。

意表を突いた筈の一撃も、ナターシャさんは涼しい顔で受けている事に、俺達は驚くしかなかった。


「フッ!シッ!」

「クッ!」

(剣の柄で……)


ナターシャさんは受けた一撃を握る剣の柄でセリカをいなし、逆袈裟を跳ね上げた。

セリカは辛うじて躱すが……。


「なっ……」

「これが真剣で私が寸止めしなかったら、あなたの首は貫かれていたわ……」


ほんの一瞬にして、セリカの喉元へナターシャさんの木剣の切っ先が迫っていた。

これが真剣の斬り合いであり、手心も何もない本当の戦場だったら、セリカは確実に命を落としていたのは明白だ。


「参りました……」


実力の差を悟ったセリカは、降参を認める一言しか発する事ができなかった。


「「「「「オォオーー!」」」」」

「流石はナターシャ隊長だ!」

「いつ見ても速く鋭く美しい剣捌きだ!」

「本当に素敵~!」

「ナターシャ隊長~~!」

「残念でしたね……」

「セリカ……」

「駄目だったか……」

「相手は東方支部のトップでエリートですからね……」


騎士達は歓喜の声を上げている一方、俺とミレイユ、クルスとエレーナはセリカの負けを残念そうに思うしかなかった。


(これが……。ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長、ナターシャ・セルロイテ。少なくとも剣技においてはウィーネスさんと同等以上なのは確かだ)


セリカはナターシャさんとの実力差をまざまざと感じながら、俺達の下に来た。

魔法抜きの模擬戦であり、対人戦に優れた騎士が相手とはいえ、セリカの表情には悔しさが滲んでいる。

そんな時だった。


「セリカ殿……」

「ナターシャさん」


俯きかけたセリカにナターシャさんが歩み寄った。

互いに目を合わせて数秒……。


「良い腕前だったぞ」

「え?」

「日々の実戦や鍛錬に裏打ちされた剣筋の良さ、速さ、要所で見せる巧みさ、目を見張る物があったぞ。冒険者でありながら、対人戦にも優れているのはハッキリと分かった」

「は、はぁ……」


ナターシャさんの口から出たのは、セリカに対する裏表のない褒め言葉だった。

表情こそポーカーフェイスのようだが、お世辞とは思えなかった。


「確か冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】には、Bランクパーティー【ディープストライク】のケイン・バニシス殿や同じくBランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネス・ルーライン殿が所属していたと思うのだが……」

「はい。そうです。ケインさんやウィーネスさんをご存じで……」

「その両名とも今回のような模擬戦をした事があってな」

「え?」


何とナターシャさんはケインさんやウィーネスさんと一戦交えた事があった。

要人の護衛で一緒になり、後に剣腕を知ってみたい気持ちで木剣による模擬戦をした事があると教えてくれた。

結果はいずれも勝利だったが、セリカとやり合った時よりもギリギリの勝負だった事を明かし、実力も認めているようだ。


「今回は【トラストフォース】の5名が加わってくれるとの事だが、信用に足ると判断している。少なくとも、私はな……」

「ナターシャさん……」

「今回の護衛任務だが、サポートや回復に優れたエレーナ殿、中遠距離攻撃に優れたミレイユ殿、感知と隠密行動に優れたクルス殿、そして、多種多様なスキルにユニークスキルを持ったトーマ殿。共に同行する冒険者達が君達で良かった」

「きょ、恐縮です……」


ナターシャさんの言葉にプレッシャーを改めて感じはしたものの、同時に信じてくれている嬉しさとそれに応えたい気概で満ちようとしている。


「ナターシャさん。今回の護衛任務、誠心誠意かつ、全力で当たらせていただきます。どうか、よろしくお願いします」

「あぁ。よろしく頼む」


俺はナターシャさんと握手を交わし合った。


「セリカ殿。其方のポテンシャルには私も期待している。今後も精進して欲しい。そして、機会があれば、また手合わせを願いたい」

「ナターシャさん……。はい!私も今以上に努力を重ねていきます!次に手合わせをする時は、一本取る事を目標にします!」

「あぁ。望むところだ!」


セリカとナターシャさんも、固い握手を交わし合った。

それを見ていた騎士達も、驚きながらも、好意的な目で見ていた。

思わぬ流れで模擬戦になってしまったけど、互いの信頼を深める良い機会になったようで何よりだった。

当日に合流する事を約束した後、俺達は東方支部の詰め所を去り、帰路に着いた。


「セリカ。どうだった?ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長のナターシャさんは……」

「剣技や立ち回りで言えば、速く美しく、それでいて力強く、洗練されていましたね。加えて、二手三手も先を読むような駆け引きの上手さもありました。あの若さで東方支部の隊長に登り詰めるのも納得ですね」

「僕も見ていたんですけど、ナターシャさんは速く鋭い剣捌きだけでなく、殺気を感じさせないような一撃を交えてきましたから、それが厄介さに拍車を掛けているような気がしました」

(先読みできたとしても、それに身体が追い付いてくれるかどうか分からないほどに速くて鋭い斬撃だったな……)


セリカだけでなく、目に穴が開きそうな意識で見ていたクルスも、ナターシャさんの実力の高さをまざまざと感じているようだった。


「ですけど、本当に良い経験になったと思っていますよ。あれほどまでにビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長の肩書を持った、強くて美しい騎士と一戦を交える機会なんて、そうそうあるものではありませんので……」

「セリカ……」

「負けたのは悔しかったですけど、今はそれも悪くないと思っている自分もいるんですよ。上には上がいるって事を改めて実感する良い機会に触れられましたから……。超えていきたいと思える目標の相手がまた一人出来たから……。だから……」


「今以上の強い自分になれる確信を持っています。模擬戦で負けたくらいで立ち止まるなんて恥ずかしい事はしたくないですから!」

「セリカ……」

「「「……」」」


ナターシャさんとの戦いで完全とは言い切れないが、何かを掴んだような表情をしているセリカに迷いは無かった。

俺達はそれを見て安心できた。


「よし!明後日が本番だから、今日は景気付けとセリカを励ますって意味で飲みに行くか!?」

「え?トーマさん?」

「それは名案です!」

「やりましょう!」

「セリカ。今日は飲むわよ!」

「えっ。えぇ……。じゃあ、ありがとうございます!」


俺達はセリカの慰労会を含めた飲み会を開く事になった。

たっぷり英気を養って、本番に臨む事となった。


———————————————

翌日・豪華客船の一室—————


「失礼します」

「どうぞ」


従者らしき男性がノックをした後、扉の向こうから入室の許可を出す女性の声が届いた。

「どうぞ」の3文字なのに、その声は凛としつつも品位や高貴さを感じさせる。


「失礼します。このまま何事も無ければ、明日の午前にはシーゾスの港に到着されます。公務や視察、船旅でお疲れだと思われますので、お早めにお休みになられた方がよろしいかと……」

「そうね。でも、わたくしはもう少し起きていたく思いますわ。御覧なさい」

「は、はぁ……」


女性が従者を近くに来させると、窓から映る満月を見せた。

満ち欠け一つない綺麗な満月だった。


「公務が一段落着いたからか、今宵の満月が一際美しく感じられるのですわ。貴方もそう思わない?」

「はい。仰る通りでございます。明日は快晴でございますでしょうな……」


女性はいかにも高級さを感じさせるようなティーカップを手にしながらハーブティーを嗜みながら、美しく映る満月を見上げていた。


「ふふっ」

「何か?」

「いえ、貴方の言うように、明日は曇り一つない晴れ空が広がる気がしますわね……。それに……」


女性はくすりと微笑んだ後……。


「わたくしの直感ですけどね、これから先、いや、もしかしたら近い未来に面白い事が起きそうな予感がしますわ」

「面白い事が起きそうな予感…でしょうか?」


女性の言葉を聞いた従者達は目を丸くしていた。


「えぇ、面白い何かが……ね。」


女性は確信し切った表情をしながら月を見上げていた。

空になったティーカップをテーブルに置いた側には、独特な形状をした厳かさと品格を兼ね備えたようなエンブレムが置いてあった。


それに刻まれているのは……。ビュレガンセ王国の国章だった。

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