表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
259/371

第229話 セリカ VS ナターシャ(前編)

女騎士の戦いが見れます!

晴れてBランク冒険者へと昇格する事になった俺達【トラストフォース】。

いつもの冒険者生活を送る中、ビュレガンセ王国騎士団東方支部のトップであるナターシャさんらと共に要人警護の仕事に就く事となった。


「フッ!ハッ!」

「セイ!」


頑丈な素材で造られた床と高めの壁で覆われ、その広大な空間には騎士達が鍛錬に励んでいる様子が見られた。

実戦を想定しての対人戦、素振り、筋力トレーニングとそれぞれが自己研鑽に励み、力を付けていっている。


「精が出ているようね」

「ナターシャ隊長!お疲れ様です!」

「「「「「お疲れ様です!」」」」」


そこに現れたのはビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長を務めているナターシャさんであり、俺達も同行している。

そう、今訪れているのはビュレガンセ王国騎士団東方支部の鍛錬場だ。


「へぇ~。結構広いですね」

「日々の鍛錬が武器を握る者の土台を作り上げると思っているの。だから鍛錬に関係する設備には力を入れているのよ」

「なるほど……」


辺りを見回すと、騎士が30人ほどいるものの、それでも打ち稽古や素振りをしていても邪魔にならないくらいのスペースがある。


「隊長。例の護衛任務の件は……?」

「先ほど話が纏まったところよ。丁度いいわ。明後日の任務に同行してくれる冒険者パーティーを紹介するわ。人となりを知っておくのは、いざって時の連携には必要な事だから」


部下の一人である騎士がナターシャさんに確認すると、彼女は既に終えた事を伝え、俺達の紹介もしてくれた。

クールで凛としたイメージが強いナターシャさんだけど、他者への気配りも欠かさない人物であるのが分かってきた。

俺達は一人ずつ自己紹介していく。


「確か【トラストフォース】って、先のウェシロスで起きた事件の解決に貢献したパーティーだったよな?彼等がその……」

「トーマって男のギフトは『何でも屋』だったけど、ユニークスキルも凄いらしいぜ。“ゴーレム”の改造手術を施された“メガオーク”を倒したとか」

「エレーナ・ハイレンドって言えば、ハイレンド伯爵家のご令嬢だろ?貴族令嬢の冒険者ってかなり珍しいじゃねえか」

「それを言うならナターシャ隊長だって良い所の出身だろ……」

「そうだな」

「クルスは『シーフ』だよな?だとしたら護衛において感知に優れた奴がいるのはアドバンテージじゃねえか?」

「そうだよな。いくら経験豊富な騎士でも『シーフ』ほどの感知系スキルを持っている人は少ないからな」

「ミレイユって『魔術師』だろ?中遠距離攻撃による援護射撃ができる人物がいるのも助かるよな」

「騎士団って『魔術師』とかあんまり抱えていないだけにね」


俺達の事を聞いた騎士達はその場でひそひそと話しているようだが、悪口じゃないだけ良しとしよう。


「はいはい。トーマ殿達の自己紹介も済んだので、私がここに来たのには理由がある。【トラストフォース】のセリカ殿と模擬戦をするためだ!」

「「「「「オォオーー!」」」」」

「ナターシャ隊長の剣技が見られるのか?」

「滅多にない機会だぜ!」

「勤務終わりの鍛錬場に来てラッキー!」

「てか、セリカって強いのか?」

「Bランク冒険者だから、その辺の騎士よりはできると思うぜ」


ナターシャさんはここで鍛錬場まで来た目的を明かすと、騎士達は歓喜の声を上げた。

どうやらナターシャさんが誰かと模擬戦をする時は毎回こうらしい。


「セリカ。あなたが普段使う剣を参考に好きな木剣を選んでちょうだい!」

「はい!」

「私は稽古専用のマイ木剣を使うわ」

(自分専用のもあるんだ……)


ストイックな人だな~。


「へ~。木剣と言っても様々な種類があるんだな」

「剣以外もありますね」


オーソドックスな片手剣はもちろん、両手剣や細剣、サーベルやナイフ等、近接戦で使う盾だけでなく、槍や戦斧等を模した木製の武器の数や種類が豊富だ。

鍛錬設備を充実させていると言うだけの事はある。


「これですね」

「決めたようね。では、始めましょう」

「はい!」


鍛錬場の中心にあるサークルが描かれた線の中、セリカとナターシャさんが向き合う。

俺達は当然だが、騎士達も男女問わず釘付けだ。

尚、稽古で激しい攻撃をしても耐えられるよう、堅牢な防御結界を発生させる魔道具を使っている。


「セリカ~!ファイト!」

「リラックスですよ~!」

(頑張れよ。セリカ)

「……」


ミレイユとエレーナは応援しており、俺も固唾を飲んで見守っている。

一方、クルスはナターシャさんの方を見ていた。


(ナターシャ・セルロイテ。ギフトは『軽戦士』。女性の身でありながら、その傑出した剣技と優れた人徳もあって、2年ほど前に史上最年少でビュレガンセ王国騎士団支部のトップの座を勝ち取った才媛だと聞いている。セリカも初めて会った頃よりもかなり強くなっているのは確かだが……)


どうやらクルスはナターシャさんについてもいくらか調べ上げていたようだった。

セリカも格上相手の本格的な対人稽古は【ブリリアントロード】のリーダー格であるウィーネスさん以来であり、その時はお互いに気心が知れている者同士って事なのもあって、どちらかと言うと気楽にできた方だった。

だが、相手は対人戦に優れた騎士であり、騎士団の一支部のトップを実力で勝ち取ったエリートだ。

俺達としてはセリカに勝って欲しいけど、客観的に見ても勝率は低い。

それからセリカとナターシャさんの間に沈黙が数刻続いて……。


「行きます!」

「参る!」


瞬間、セリカは【脚力強化】によって一気に懐を取らんばかりのスピードで距離を潰しにかかるが、ナターシャさんは剣を前にかざしながら迎撃態勢を取っている。

そのスピードを目の当たりにしても、ナターシャさんは眉一つ動かさない。


「ハァア!」

「フッ!」

「ヤッ!」

「セリカって子。速いな!」

「しかも動きや剣のキレも良い!」

「フン!ハッ!」

「シッ!」

「ッ!」

(剣速やキレは素晴らしい。闇雲に振るっていると思えば、つけ入る隙を与えんばかりの連撃と軽やかな動き。日頃からの実戦経験や鍛錬を重ねなければできない身体捌きね。冒険者ながら、対人戦での立ち回りも見事だわ)


セリカとナターシャさんは縦横無尽に剣を振るい合うだけでなく、受けられるところは受け、捌ける斬撃は捌き、躱せる一撃は紙一重で躱していた。

周囲の下馬評とは裏腹に、セリカはナターシャさんを相手に喰らい付いている。


「ハァア!」

「フン!」

(その若さでいながら、この速さと重さ。鍛錬の裏打ちだけでなく、これは……)

「ハァアア!」

「グゥウ!」


セリカと撃ち合うナターシャさんの顔には、ほんの少しだけだが、好奇心とも見られるような表情が浮かんでいた。

だが、セリカとナターシャさんでは、剣術においては明確な差が出ようとしていた。


(素晴らしい腕前だ。だからこそ、敬意を持ってやり合わなければな!)

「ヤァアア!」

「クッ!」

(速くて鋭いだけじゃない。身体捌きや脚捌きもスムーズで無駄がない。加えて……)

「シュッ!」

「ハッ!」

(連撃の境目や攻撃のモーションがほとんど読めない。何て洗練された剣捌きなの……?)


ナターシャさんは縦横無尽に剣を振るい、その太刀筋の鋭さは見事なまでに洗練されている。

セリカはナターシャさんの剣術を見て、その技量に怖気すら覚えかけている。

単純なスピードはほぼ互角でも、剣技のクオリティ、知性や機転の早さを要求される駆け引きの上手さ、要所で見せるテクニック等では完全にナターシャさんが上を行っている。

年齢差やキャリアを鑑みても、身体面以外においてはセリカが勝てている要素は無かった。


「ハァア!」

「甘い!」

「からの……」

「ッ!?」


飛び交う剣閃の中、負けじとセリカも凄まじいスピードの突きを繰り出すも、ナターシャさんは表情を崩す事なく、滑らかな身体捌きで躱す。

そこでセリカは空を切った木剣を横に滑らせ、先ほどの突きに負けない勢いの胴薙ぎを放つ。

狙いはナターシャさんの脇腹だ。


(意表を突いて決める!)


だが、セリカの二段攻撃を見たナターシャさんの表情は凍っているようだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。


評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】をタップして頂ければ幸いです。


『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、コメントやレビューを頂ければ幸いです。


面白いエピソードを投稿できるように頑張っていきます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ