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第228話 美しき騎士

美しき女騎士が登場します!

いつもの冒険者生活を送る中、Bランクの昇格を懸けたクエストに挑んで成功し、俺達【トラストフォース】は晴れてBランク冒険者へと昇格する事になり、日々を生きている。


「ウェシロスに拠点を置いているビュレガンセ王国騎士団西方支部と同じか少し小さい程度のスケールだな……」

「ですが、その分シンプルではありますね」

「私は建物に訪れるのは初めてですよ」

「基本的に冒険者と騎士が接点を持つ機会は中々ないですからね……」

「街を巡回する騎士達を見かける程度はあります」


以前に訪れた事のある西方支部と比べれば、シンプルなレンガ造りで建てられた外観であり、規模も若干小さい感じはする。

俺達はそう思いながら建物の中に入っていく。


「おぉ。綺麗で清潔感があるじゃないか」

「そりゃ騎士団の建物ですから……」


白を基調に洗練された空間が広がり、中には街の人達の対応をしている受付の職員や巡回の交代をし合う騎士達が目立った。

もちろん、俺達がここに来たのはただの見学ではない。


「ようこそ。ビュレガンセ王国騎士団東方支部へ」

「失礼します。我々は冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に所属しているBランクパーティー【トラストフォース】です。本日の午前10時にビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長と打ち合わせが御座いまして」

「【トラストフォース】の皆様で午前10時より打ち合わせですね。確認いたしますので、少々お待ち下さいませ」


俺達は受付の女性に来た理由を伝えると、速やかに確認に動いた。


「お待たせしました。確認が取れましたので、皆様をご案内いたします」

「ありがとうございます。じゃあ、行くぞ」


1分もかかってない時間で手続きが済み、俺達は中へ案内された。

この迅速で丁寧な動き、馴染みの受付嬢であるナミネさんを思わせる。


(にしても、まさか俺達がここに来て、東方支部のトップと接点を持つ機会ができるとはな……)


俺はここに来る前の出来事を思い返していた。


□■□■□■□■□■□■□■□■□


回想・昨日——————


「要人の護衛ですか?」

「あぁ。その仕事をトーマ達にお願いしたいんだ」


俺達はカルヴァリオさんに呼ばれ、あるクエストを直接お願いされていた。

それは護衛だ。

モンスターを討伐する事や目的の素材を採取する事は冒険者の主な生業としているが、時々それ以外のクエストを請け負う事もある。

その大半が調査や人探し、盗賊等のならず者の捕縛の補助だけでなく、護衛も含まれている。

だが、それらは騎士団が主に担うものの、人手が欲しい時や特殊なスキルを持った冒険者の協力が必要な時には冒険者ギルドと連携する事も珍しくはない。

【アテナズスピリッツ】以外の他の冒険者ギルドも同様だ。

中でも護衛の任務はCランク以上ないと話すら巡って来る確率も低いとの事だ。


「我々もBランクに上がってまだ日は浅いのですが、よろしいでしょうか?」

「今回の護衛クエストは相手も相手だからね。Bランク以上のパーティーを応援に回したいとビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長からのリクエストなんだ」

「その相手と言うのは……」

「それが訳アリで名前を教えてくれなくてね」


誰かを守るのは分かったものの、護衛対象の情報がないのは中々に恐いものだ。


「名前すら教えていただけないと言う事は、安易にその名前が出てしまったら大騒ぎになってしまうからって意味でしょうか?」

「まぁ、正解の一つと言っても良いだろう。だが、真の情報はビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長を始めとする責任者が握っている。会って直接話を聞いてみるしかないがね」


俺の考えている事は合っているものの、カルヴァリオさんはそれ以上教えてくれなかった。


「ちなみにですけど、他のBランク以上のパーティーではなく、我々が選ばれたのかをお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「それはね……」


エレーナの質問に対し、カルヴァリオさんは一呼吸着いた。


「Aランクパーティー【ノーブルウィング】のウルミナ達は現在Aランク向けのクエストのために遠出していてしばらく帰って来ない。ケイン達やウィーネス達も彼等でなければ対処が厳しいBランク向けのクエストに出ている。イアンとイオン達、リカルド達も同じ理由で不在なんだ」

「そうなんですね」

「それで私達に白羽の矢が立ったと……」

「だが、私はこうも思っている」


単純に俺達しかいなかったのが理由だった。

するとカルヴァリオさんはまた口を開く。


「君達がBランクの名を冠する冒険者になってくれて本当に良かったとね」

「「「「「……」」」」」

「私の方からも可能な限りのフォローはする。どうか受けてくれないか?」


俺達を信頼している事がよく分かる表情でお願いをしてきた。

俺はセリカ達に視線を送ると、全員が首を縦に振った。


「分かりました。その護衛の仕事、引き受けます」

「ありがとう。ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長達にはトーマ達の情報について共有しておく。まぁ、まずは打ち合わせから始まると思うから、固くならなくても大丈夫だ」


と言う感じで引き受けた。


回想終了———————


□■□■□■□■□■□■□■□■□


(引き受ける事になったけど、やっぱりいくらか護衛対象の情報は欲しかったな……)

「皆様。こちらの会議室で隊長がお待ちしております」

「ありがとうございます」

「ナターシャ隊長。Bランクパーティー【トラストフォース】の皆様をお連れしました」

「通しなさい」

「では、どうぞ」


少し歩いた後、俺達は職員に案内された扉の前に立った。

職員がノックして俺達が来た事を伝えると、ナターシャと言う人物から入室の許可が下りた。

ドアを開けてもらって中に入ると、一人の女性が立っている。


「あなた達ね。【アテナズスピリッツ】に所属しているBランクパーティー【トラストフォース】の皆様は……」

「はい……」

(この方が……)

「私はビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長を務めている、ナターシャ・セルロイテと言う。この度は要人の護衛に協力していただき、心から感謝する」

「こ、こちらこそ……」


目の前に立っている人物こそ、ビュレガンセ王国騎士団東方支部の隊長であるナターシャ・セルロイテさんだ。

鎖骨辺りまで伸びた手入れが行き届いている瑠璃色の長髪に宝石のように輝く青い瞳をした顔立ちをしており、両手脚もすらりと伸びている容姿端麗な女性だ。

クールビューティーと言う言葉がピッタリと当てはまるくらいに立ち振る舞いも凛としていながら、品を感じさせる。

身を包む甲冑も軽快さを取り入れたようなデザインをしており、腰に携える細剣も紛れもない逸品であるのは一目で分かった。

俺も武器の目利きができるようになってきたのかな?


「続いて、私から一言申したい事がある」

「はい」


するとナターシャさんは畏まった態度を見せる。


「ウェシロスを拠点にしているビュレガンセ王国騎士団西方支部の腐敗の件について、トーマ殿達が解決に大きく貢献している事は私達の耳にも届いている。本当にありがとう。お陰で、騎士団全体の秩序も良い方向に整っていると本隊も喜んでいるそうだ。ビュレガンセ王国騎士団東方支部の代表として、ここにお礼の言葉を述べる」

「あ、頭を上げて下さい!我々は行方不明になった冒険者達を探している中、成り行きと言う形で協力したに過ぎません。それに、エルヴォスさんが筆頭で動いてくれなければ、それこそ今頃どうなっていた事か……」


ナターシャさんはウェシロスにあるビュレガンセ王国騎士団西方支部の腐敗の件で力になってくれた事について感謝してきた。

騎士らしく見事なお辞儀をするから、俺達も窘めた。


「ふっ。エルヴォスの言っていた通りだな」

「え?エルヴォスさんが?」


するとナターシャさんは少し微笑みながら顔を上げた。


「ビュレガンセ王国騎士団西方支部の新隊長となったエルヴォスからトーマ達の話を聞いている。西方支部の腐敗を浄化する事に貢献しただけでなく、クジャール伯爵家らの汚職や不正まで白日の下に明かした末にウェシロスを救ったとな。高い実力を持ち合わせながら、謙虚で飾らない性分をしていると聞いてはいたが、正にその通りだな」

「ど、どうも……」


褒め称えるナターシャさんはクールに振舞っているが、どことなく嬉しそうな様子だった。

どうやらウェシロスの事件やエルヴォスさんが後任の隊長に就いた事も彼から聞いているようだ。


「では、挨拶はこのくらいにして、早速打ち合わせに入らせてもらう」

「「「「「はい!」」」」」


会話もそこそこに、俺達はナターシャさんから説明を受ける事となった。


「明後日、シーゾスにある港から出迎え、王都ファランテスまで問題なくお届けするのが私達の任務だ」

「承知しました」


俺達は護衛任務に関係する話を終える事となった。


「それじゃあ、明日までに準備を済ませておこう」

「「「「はい!」」」」

「話はこれで以上なのだが、午後は予定が空いている事はないか?」

「はい。ございませんが、何か……?」


部屋を出ようとした時、ナターシャさんは俺達を呼び止めた。

彼女の目線はセリカに向いていた。


「事前に確認してはいるのだが、セリカ殿のギフトは『軽戦士』で間違いはなかったか?」

「はい。間違いありませんよ」

「そのセリカ殿に一つお願いがあるのだが……」

「?」


ナターシャさんはセリカに声を掛け、彼女のギフトを確認した後、一つのお願いを申し出た。


「私と一戦でよい。剣を交えてはくれないか?」

「ッ!?」

「「「「え?」」」」


何と、セリカはナターシャさんに戦いを申し込まれたのだった。

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