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第226話 【ミレイユ視点】私との共通点

ミレイユ視点のお話です!

いつもの冒険者生活を送る中、【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんからBランクの昇格を懸けたクエストに挑む事を進言され、受け入れた。

Bランクパーティー【ウォールクライシス】のリーダー格であるリカルドさん達から監督される形で森林型のダンジョン攻略に挑む事となり、ダンジョンのボスモンスターである“レッドブルーバイコーン”と激しい戦闘の末に俺達は勝利し、ダンジョン攻略を成し遂げる。

私達はティリルへと戻っていた。


トーマさんとセリカが朝の散歩をしていた頃———————


「あぁ。こうして朝の散歩をしてみると、気持ちが清々しくなるよ……」

「そうだね。空気が澄んでいるって感じるよ」


私はクルスと朝の散歩に出かけていた。

朝日が出始めた頃に目が覚めた私がトイレに行った後、顔を洗ったばかりのクルスとバッタリ出くわし、彼に誘われる形で外に出た。


「それにしても、僕達がBランクに昇格か……」

「そうね……。昨日のBランク向けのクエストもしっかり準備や打ち合わせをしなかったら、もっとキツイ展開になっていたかもしれないだけにね……」

「うん……」


私達は先日、Bランクの昇格を懸けたクエストを受けて参加し、やり遂げて戻って来た。

その中で出くわした“レッドブルーバイコーン”と言うモンスターとの戦いは本当に厳しかったし、壮絶と言っても大袈裟ではなかった。

ダンジョンのボスモンスターとして立ちはだかっただけに尚更だ。

けど、私達はその修羅場を超えて……生き延びた……。そして、こうして歩いている。


「それにしても……。よく生き残れたよね。ダンジョンのボスモンスターで立ちはだかった“レッドブルーバイコーン”を相手にさ……」

「最初に対面した時は、僕も冷や汗を隠し切れなかったな……。ミレイユがいなかったら、昇格どうこう以前に、自分の身も危なかったくらいだったからさ……」

「へへ……。いて良かったでしょ!」

「そうだね……。あの時も……これまでもだけどな……」

「クルスったら……」


私はクルスと先のダンジョン攻略を中心に話し合っていた。

モンスターの奇襲やトラップに遭遇する機会が多いダンジョン攻略において、『シーフ』のクルスがいてくれたのは本当に頼もしかった。

感知系スキルや隠密行動に優れたクルスがいなかったら、危うかった場面が多くあったのもあり、その有難さは言葉で表現するのは難しかった。

いや……。有難いなんて言葉で足りるかどうか分からないくらいに……。


「あのさ……ミレイユ……」

「ん?」


するとクルスがどこか畏まった様子で話し掛けてきて、私はそこで立ち止まった。


「僕達……。出会えて良かったな……」

「え?」


不意にクルスが大好きな……。それこそ、将来を約束したような婚約者とかに向けるだろう言葉を私にぶつけてきた。


「あの時……。トーマさんが僕をパーティーに入れてくれなかったら……。勇気を出していなかったら、ここまで来れなかったって思っているんだ……。そうでなければ、僕は今頃、Bランクまで上がれていたか……。ましてや、こうして冒険者を続けられていた事すら、叶わなかったから……」

「あの時?」

(それって、クルスが前にいた……)


クルスが何気なく呟いた言葉を聞いて、私も色んな事が自分の中を巡っていた。

クルスが経験してきた事と私が経験してきた事に、大きな共通点があったから……。


「トーマさん達と出会ってすぐ、前に所属していたパーティーから追放されて、僕は一人になってしまった。そんな時、トーマさん達と一緒のクエストに行ったんだ」

「あぁ、私もよく覚えてるよ」


私もDランクだった時、トーマさん達と出会う前に所属していたパーティーのメンバーに雑な扱いを受けていた時期があって、挙句に捨て駒にされた。

一人でボロボロになっていたところでトーマさんやセリカと出会い、命を救われ、誘われて仲間になった。

クルスも【パワートーチャー】と言うパーティーのメンバーの一人だったが、些細なきっかけで追放された。

それが縁で一度だけ、アライアンスを組んでクエストに行った事があったけど、『シーフ』であるクルスの働きは大きく、達成に大きく貢献してくれた。

クルスの熱意を感じたトーマさんはその心意気を買う形でパーティーに迎え入れた。

私とクルスの共通点。それは、パーティーを追放されてしまった事であり、トーマさんがきっかけで冒険者として再起を果たせたって事だ。


「私達……ギフトは違うけど、似たような経験してきたね……」

「そうだな……。振り返ってみれば、運命だって思っているくらいだ……」

「それからは本当に波瀾万丈だったよね。Cランクの昇格を懸けたクエストに挑む時にチェルシア様と面識を持って、“フライングタイガー”を相手にして勝ったと思ったら貴族の空間に放り込まれて……」

「あぁ、あれはとんでもなく貴重な体験だったな。ミレイユのドレス姿、素敵だったよ!」

「ちょっとクルス!」


私はクルスと出会ってから今まで起きた事を思い付いた限り語り合った。

気が付けば、朝日が昇り切ろうとしていた。


「そろそろ戻るか……」

「うん!」


私達は拠点にしている自宅へと戻っていった。


「ねぇ、クルス……」

「ん?」


私はクルスに話し掛けた。

数秒の沈黙を置いて……。


「クルス……。初めて会った頃よりも見違えたね……」

「え?」

「最初に出会った頃のクルスってさ……。何か暗いって言うか、自分に自信を持ててないような印象だったのよ……。でも、私達の仲間になってからは明るくなって……時に溌剌とした一面も見せるようになって……。そして、逞しくなって、自分の信念を持つようになって……。本当に変わったよ!」

「ミレイユ……」


こう言ってはあれだけど、初めて会った時のクルスは謙虚で穏やかだけど、当時の状況もあって、自信が無さ過ぎるような印象だった。

けど、私達の仲間になってからは本来の自分を取り戻すように明るくなって、感情表情も豊かになって、優しく思慮深いところが顕著に出るようになっていった。

手先も器用であり、クエストでも日常生活でも頼りになるから、私達も心からの信頼を置いていて、クルスを好ましく思ってくれる人物も多い。


「ありがとうな……。それを言うならミレイユだって……」

「いや、本音を言ってみただけで……」

「「……」」

(改めて見ると、クルス……。あの頃よりも逞しく……凛々しくなったな……)

(こうして見ると、ミレイユ……。初めて会った頃よりも素敵になっているような……)


私とクルスはそれぞれ見つめ合っていた。

けど……。


「クルス。ミレイユ。二人も散歩か?」

「「ハッ!トーマさん?」」


私とクルスはトーマさんに声を掛けられて我に返った。

セリカも一緒にいる事から、二人も朝の散歩に出ていたようだ。


「えぇ、まぁ、はい!そんなところです!」

「偶然ですね……。トーマさんとセリカも……」

「「?」」


私はクルスと一緒にその場で慌てふためいていた。

その後、トーマさんやセリカには普通に散歩していた事を必死に強調して誤魔化したのは、ここだけの話だ。

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