第225話 朝日の下で……
2025年1月5日は二本立てです!
いつもの冒険者生活を送る中、【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんからBランクの昇格を懸けたクエストに挑む事を進言され、受け入れた。
森林型のダンジョン攻略に挑む事となり、ダンジョンのボスモンスターである“レッドブルーバイコーン”と激しい戦闘の末に俺達は勝利し、ダンジョン攻略を成し遂げる。
俺達は遂にBランクへと昇格する事となった。
Bランクのクエストから戻った翌日———————
「う~ん。朝か……。まずは顔を洗って……」
「トーマさん!」
「ん?セリカか……?」
俺はいつもより早く目覚め、顔を洗おうとした時、廊下でセリカと鉢合わせた。
今日はクエストに出向く予定はないから休養日だ。
「今から顔を洗おうと思って……」
「わ、私も……」
「「……」」
数秒だけ続いた沈黙が続いて、俺は……。
「朝飯まで小一時間くらいあるし、良かったら少し散歩しないか?気分転換になるし!」
「そ、そうですね。まずは顔を洗ってからで!」
俺とセリカはその場を取り繕うように振舞い、それぞれが顔を洗った。
後に緩くも動きやすい格好に着替えた後、俺はセリカを連れて街の路上へと出た。
「空気が澄んでいるように感じるな……」
「そうですね……。天気も良いですし、朝焼けの光が輝いているようにも見えます」
俺はセリカと何気ない話をしながら散歩を楽しんでいる。
朝が早いのもあってか、道行く人の数もまばらだ。
セリカと話している内容の大半はBランクの昇格を懸けたクエストに関係する話であり、それで気付いた事についてポンポンと口に出しているだけだったが、妙に心地よく思えた。
一つの山場を終えたような状況になったからね……。
「Bランクか……。俺達もここまで来たんだな……」
「はい……。この銀色に輝くステータスプレートを見ると、本当になれたんだなって実感が湧いて来ますよ……」
「実を言うと、俺もなんだよな」
俺達【トラストフォース】の5人はBランク冒険者へと昇格した。
Cランクでも十分な実力を備えていると示す証となっているものの、Bランクともなれば、その信用力や周囲への影響力もCランク以上なのは確かだ。
「だからこそ、思い出してしまうんですよね……。Bランクの昇格を懸けたクエスト、ウェシロスで起きた事件、ベカトルブ近辺で発見されたダンジョン攻略、イントミスで起きた事件、チェルシア様との出会い、そして……。エレーナ、クルス、ミレイユ、そして……。私とトーマさんの出会い……」
「!?」
セリカの言葉で、俺は思い出していた。
(そういや……。セリカと出会ってからもう……。一年以上経つな……)
そう、俺がこの異世界に飛ばされてから、早一年が経っている。
着の身着のまま同然の俺の下にセリカが現れ、成り行きで助けられ、一緒に冒険者をしながら生活をしてきた。
それから俺とセリカはパーティーを組んで、ミレイユと出会い、クルスと出会い、エレーナと出会って仲間になった。
俺達が所属している冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】には尊敬できる先達の冒険者達が沢山いて、多くの事を学び、共に行動して有意義な経験を重ねてきた。
他のギルドにも、実力も人格も優れた冒険者だった多くいて、共に過ごした日々も宝だ。
まぁ、問題のある厄介な冒険者もいたんだけどね……。
結構危険な場面に何度か遭遇した事はあったけど、今となってはそれらも良い思い出だ。
「そうだな……。あの時、セリカと出会ってから、俺の運命が変わったんだよな……。冒険者になって。パーティーを組んで。ミレイユにクルスにエレーナと出会って仲間になって。色んな人と出会って……。色んな場所に行って……。色んな体験もして……。世界は広いって心から思っているよ……」
「トーマさん……」
俺はこの世界に来てからの出来事を振り返りながら語っている。
仲間との出会い、王侯貴族の方々との繋がり、強力なモンスターとの戦い、悪に手を染めた人物相手に事件の解決、ダンジョン攻略、思い返すだけでも本当に濃厚な日々だった。
予期せぬタイミングで憧れていたファンタジーの世界に飛び込んで、厳しい事や辛い事もあったけど、信頼し合える仲間がいたから、乗り越えていけた。
その時にいてくれたのが……。
「セリカ……」
「はい……?」
街の広場に付いた頃、俺はその場で足を止めてセリカと向き合った。
「いつも……。ありがとうな……。俺の事……支えてくれてよ……」
「へ!?」
俺が呟くと、セリカは目を開きながら、少しだけ頬を赤くしながら驚いた。
「あの日……。途方に暮れたような状況で出会ったのがセリカじゃなかったら……。俺はここまで来れなかった。いや……。こうして生きて来れたのかどうかすら……分からなかった。だから……。セリカと出会えて良かったよ……」
「トーマさん……」
どこか不器用でありきたりのようだけど、言わずにはいられない想いをセリカに伝えずにはいられなかった。
セリカは……。この世界で生きる事になった俺にとっての命の恩人であり、人生の恩人でもあるから……。
「それを言うなら……。私もですよ……。トーマさん……」
「セリカ……」
(セリカって……こうして見ると本当に素敵な女性だな……。強くて……優しくて……綺麗で……)
(トーマさん……。初めて会った時よりも、逞しくなって……素敵で……強くなって……)
俺はセリカとしばらく見つめ合っていた。
数秒後……。
「ママ~!あのお兄ちゃんとお姉ちゃん何してるの?」
「こらっ!人を指差しちゃダメよ!」
「「え!?いえ、何でもありません!」」
道行く子供の無邪気で何気ない一言により、俺とセリカは我に返った。
俺達はその場から逃げるように去った。
気恥ずかしい……。
「はぁ……はぁ……。ここまで来たら大丈夫だろ……」
「広場であんなボーっとしちゃうなんて……ちょっと油断してました……」
少し走った後、俺はセリカと一緒に帰路に着いていた。
「さて、そろそろ戻ろうか?皆を待たせたくないし……」
「そうですね……」
昇った朝日を背に、俺とセリカは歩いていくのだった。
晴れやかな笑顔を向け合いながら……。
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