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SS 21話 その頃、先達の冒険者達は……

【アテナズスピリッツ】に所属するBランク冒険者達の目線のお話です!

トーマ達がBランクの昇格を懸けたクエストに挑む為、ティリルを発ってから2日後の事……。


———————————————


ティリルに向かって進む馬車の中


「「……」」

「イアン……イオン……?」

「「!?」」

「どうしたんですか?心ここにあらずみたいになってますけど」

「「すまない。何でもない!」」


髪型とかに若干の違いがあるものの、顔立ちが良く似ている二人の冒険者はイアンさんとイオンさんと言う、【アテナズスピリッツ】に所属するBランクパーティー【デュアルボンド】のリーダー格を務める双子の冒険者だ。

それを気に掛けるのは同メンバーであるエリーさんとサーシャさんだ。

現時点ではあるが、イアンさんとイオンさんは血の繋がった双子の兄弟である一方、エリーさんとサーシャさんは腹違いの姉妹だ。

自分で思うのも何だが、兄弟比率が最も高いパーティーであると見ている。

彼等は今、一つのクエストを終えたようで、【アテナズスピリッツ】があるティリルへと戻っている道中だ。


「トーマ達の事を考えていた」

「彼等はBランクの昇格を懸けたクエストに挑んでいるみたいだな」

「えぇ。先日、それを受けるかどうかを進言されて、やるって決断を下したみたいよ。今頃目的地に着いていると思う……」

「数ヶ月前からメキメキと力を付けているのは知っている」

「ポテンシャルも認めている」

「「願わくば、成功して欲しいと思っている!」」

((ハモってるな~!))


イアンさんとイオンさんは双子の兄弟として、幼い頃からずっと一緒に生活し、今も冒険者として支え合ってきている。

故に、以心伝心と言ってもいいくらいに息がピッタリだ。

エリーさんとサーシャさんもその絶妙なやり取りに内心驚き気味だ。


「私としては、何とかBランクの昇格を懸けたクエストに成功して欲しいな~」

「サーシャ。それには同感だけど、Bランクの昇格を懸けたクエストの過酷さ、忘れた訳じゃないわよね?あんまりお気楽に言わない方がいいわよ」

「わ、分かってるって……」

「確かに我々が挑戦した時も過酷な内容だった」

「誰かがミスをしていれば、失敗した可能性も大いにあった」

「そうね。皆の連携や果たすべき役割をやり切ってこその成功だったからね。それを忘れてしまわないようにしないと……」

「うん。あの経験は忘れないようにしよう……」


イアンさんとイオンさん達はかつて挑戦したBランクの昇格を懸けたクエストについて思いを馳せているようだった。

少なくとも、過酷であるのだけは間違いないのだろう……。


———————————————


◆冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】・飲食スペース


「あ~!クエスト終えた後のギルド飯は最高だわ~!」

「フィリナさん、ペース早過ぎでは……」

「彼女、お酒が強いので……」

「毎回こうなんですよ」

「……」

「ん~?ケイン、どうしたの?あんまり進んでないけど……」

「え?あ~、飲んでるよ」


夕方、【アテナズスピリッツ】に併設されている飲食スペースにて、ギルド飯を楽しんでいるのは、Bランクパーティー【ディープストライク】のケインさん達だ。

どうやらクエストを一つ終えての食事のようだ。

パーティーのサブリーダー的存在であり、ムードメーカーのフィリナさんを中心に盛り上がっている。

そこに少し考え込んでいる様子のケインさんにフィリナさんが声を掛ける。


「もしかして、トーマ達の事を考えてた感じ?」

「まぁな。あいつらって一昨日にティリルを発って、今頃目的地に着いている頃だと思ってな……」

「確か、ノイトレオでやるって話は出てましたね……」

「あそこって、ウェシロスから程近い街ですよ。【ティア―オブテティス】に所属していた時に何回か訪れたんですけど、物資が豊かな良い街ですよ。王都にも比較的近いですし」


ノイトレオについて語っていたのは、ケインさん達のパーティーの中でも新参者である『重戦士』のマーカスさんだ。

マーカスさんはウェシロスに拠点を置いている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に所属していた。

そこではBランクパーティー【スターレック】の一員として活動していたが、貴族や商会の界隈、ビュレガンセ王国騎士団西方支部を巻き込んだ大事件が重なってパーティーは解散し、マーカスさんは最終的に【ティア―オブテティス】から【アテナズスピリッツ】に移籍する事になった。

それからBランク冒険者として活動してきた実績や本人の希望を鑑みた結果、ケインさん達のパーティーに入る事となって今に至る。


「にしても、今回トーマ達がこれから挑むであろう立会人がBランクパーティー【ウォールクライシス】のリカルドさん達とは……。数奇な運命って言うか、何と言うか……」

「そうですね」

「ねぇ~」

「……」

「!?」


ケインさんがそう言うと、ニコラスさんとフィリナさんが割り切った様子でいるものの、エルニさんは急に無言となり、マーカスさんは疑問に思いながらも何か感じた様子だった。

因みに、俺達がBランクへの昇格を懸けたクエストに参加する事は、【アテナズスピリッツ】に所属しているBランク以上のパーティー全員が周知している。


「あの……。【ウォールクライシス】の一員であり、『付与術士』のアリエス・メイナーって……」

「はい……。私の姉です……」

(やっぱりか!)


マーカスさんが感じた質問を言い切ると、エルニさんはどこか切なそうに答えた。

俺も苗字で何となく察していたのだが、エルニさんとアリエスさんは姉妹である。

姉妹揃って冒険者とは、【デュアルボンド】のエリーさんとサーシャさんを思い出させるが、二人とは違い、別々のパーティーに所属している。


「2歳年上の姉は『付与術士』、私は『僧侶』のギフトを授かりました。私が【アテナズスピリッツ】に所属した頃には、既に姉はリカルドさんが率いるパーティーに所属しており、メキメキと頭角を現しておりました。もちろん、姉の活躍は素直に嬉しく思っていますけど、それはそれで当時は複雑でした……」

「それはショックだったと……?」

「ショックを受けていないと言えば嘘にはなります!ですが、姉と同じように冒険者向けで多くの人の役に立てるようなギフトを授かった事を知った際は、嬉しくも思いましたよ」

「「「「……」」」」

「ですけど……その……」

「あ、無粋な事を聞いちゃいましたかね……?」

「いえ!私自身も自らの意志で選んだ事ですから、それについては姉さんも理解しているので、皆さんに大きな迷惑は……」

「エルニ。分かってるよ」


マーカスさんが膨らましかけた事をエルニさんは必死に取り繕うように見せたところでケインさんはそれを窘めた。

エルニさんは自分から前に出るタイプの人物ではないものの、特定の状況ではこうして素の自分を曝け出したり、そうなりかける事もある。

実の家族に関連する話であれば、尚更だと思うがな。


「まぁ、姉は同じパーティーメンバーどころか私にもキッパリ言い切る人ですから、忖度したような判断を下す事はないと思っていますよ。あのリカルドさんも一目置いてメンバーの一人として据えているくらいですから……。姉が相応しいと認めたならば、私から何かを言うつもりはありません……」

「エルニ……」

「それに、姉さんの人を見る目は確かなので……」


そう言っているエルニさんは少し複雑な様相を見せていたけど、それがどこか、普段は落ち着きを払っている彼女が普段は見せない一面を垣間見たような場面でもあった。


「まぁ何にせよ、トーマ達が上手く行く事を願うしかないな……」


俺達の成功を心の中で祈ってくれているケインさん達だった。


———————————————


◆【ブリリアントロード】拠点の家・浴槽——————


「ふぅ……」

「ウィーネス。さっきからため息ばっかりよ……」

「え?あ~、うん……」

「もしかして、トーマやセリカ達の事……?」

「まぁ、そんなところ……」


お風呂場にはウィーネスさんとリエナさんが二人で入っている。

ウィーネスさんは俺達の心配をしているのか、短い間隔でため息を漏らしており、リエナさんもやれやれとしたような様子だ。


「でも、ウィーネスの気持ちは分かるよ。私達がBランク昇格を懸けたクエストに挑んだ時も、結構張り詰めていたからさ……」

「出発する直前まで準備にミーティングに鍛錬に、作戦の抜け漏れがないかのチェックまで、本当に立て込んでたな……」


湯船に浸かるウィーネスさんとリエナさんは自分達がBランク昇格を懸けたクエストに臨もうとした時代を思い返していた。

クエストに挑んでいる時とその前は準備に追われながらも、中々にピり付いた空気の中で過ごしていたようであり、それぞれが殆ど口を利かない日が続いていた時があったらしい。

本番が近付くにつれ、最終的には一致団結して、Bランクに昇格する事ができたって話だ。


「私はいいけど、ウィーネスとしてはどうなの?」

「どうって……?」

「トーマやセリカ達が今回のクエストを達成したら、私達と同じBランクまで上がるって事よ。そうなれば、後輩である私達よりも早くBランクに駆け上がるって事。それについてはどう思っているのかなって……」

「……」

「」


リエナさんの質問を聞いたウィーネスさんはその場で少し考えた後、口を開いた。


「上手く行ったは行ったで嫉妬しそうになっちゃうけど、成功して欲しいのは本音よ。こう言っちゃあれだけど、セリカは同じギフトを持っているアタシから見ても、とんでもないポテンシャルを秘めてるよ。それこそ、アタシを超えるような……ね……」

「ふ~ん……」

(ウィーネスが他人を褒める事は珍しくもないけど、ここまでお世辞抜きってのは中々ないんだけどね……)


リラックスしたような様子でセリカを褒めるウィーネスさんは本気で認めている様子だった。


「そう言うリエナこそ、ミレイユについてはどうなの?」

「え?」

「ミレイユと面識を持って、一時期修行して、ウェシロスで起きた事件を一緒に解決したんでしょ?かなり頑張ってたって聞いたよ」

「……」


ウィーネスさんの指摘に対し、リエナさんも口籠っているような様相だった。


「私が言うのもあれだけど、ミレイユも凄いポテンシャルを秘めているって思うわ。【水魔法】と【氷魔法】を会得しているのは共通しているけど、私と違って、【炎魔法】や【爆撃魔法】を会得しているのだから……」

「!?」

「あ、私から見ても将来的にはAランク冒険者も夢じゃないって思っているくらいだからさ……」

(リエナ……)

(【炎魔法】と【氷魔法】を高いレベルで会得している『魔術師』は意外なくらいに少ない。だからこそ、ミレイユがあれを習得するとなれば……)

「何にしても、トーマ達が何事もなく戻って来てくれる事は信じておきたいわね」

「リエナにしては随分とあっさり話を切り上げるわね。何かあった?」

「別にないわよ!」

「ハハハハハ!」


俺達が憧れる先達のBランク冒険者達は俺達の成功を願いながら、思い思いに過ごしているのだった。

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