第210話 【セリカ視点】月夜の下で……
セリカ視点のお話です!
いつもの冒険者生活を送る中、【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんからBランクの昇格を懸けたクエストに挑む事を進言された。
トーマさん達とも話し合った末、受ける事を決めた私達はノイトレオに赴き、Bランクパーティー【ウォールクライシス】の皆様と合流した後、クエストの説明を受けた。
「明日か……」
私達はいよいよ、Bランクの昇格を懸けたクエストに挑む事になり、その前夜を過ごしている。
(ものの見事に美しい満月だな……。そう言えば、Cランクの昇格を懸けたクエストに挑む前日の夜もそうだったような……)
私はミレイユとエレーナと一緒に泊まっている部屋にて、一人で月を見ており、それはいつになく綺麗に輝いてるように思えた。
Dランクパーティー時代、Cランクの昇格を懸けたクエストに臨む前の夜も、今のように美しい満月だった。
「セリカ」
「ミレイユ!エレーナ!」
月を見上げている時、ミレイユが声を掛けてきて、そこにはエレーナもいる。
「眠れないの?」
「ん~。そう言う訳じゃないんだけど、明日の事を考えていたら、綺麗に輝く満月を見てたくなっちゃって」
「そうですね……。心なしか、美しく見えます……」
気付けば、ミレイユやエレーナと一緒に月を見上げている。
二人も私と似たような気持ちを抱いているようにも思えた。
「わたくしも綺麗な満月が見えたら、どことなく眺めたくなる気持ちになるんですよね……。誰でも拝められるはずなのに、とても神秘的って感じますから……」
「綺麗な満月を拝めるのに、身分も生まれも関係ないって思うわ……」
エレーナとミレイユはそう呟いた。
遮る雲一つない満月が見える時、どんな美術品や工芸品よりも美しく感じる。
「何か……。今でも信じられないよ……。私達がBランクの昇格を懸けたクエストに挑むなんて……数年前の私だったら考えられないよ。って言っても、ネガティブな意味じゃないよ!むしろ、緊張はしてるけど、嬉しくも思っているって言うか……」
「そうですね……。もしも明日のクエストに成功したら、私達の冒険者ランクはBに上がるのですから……。まぁ、上手くいけばの話ですけどね」
「……」
「セリカ?」
私が少し考え込むと、ミレイユに声を掛けられた。
「何か……。二人を見ていたら、落ち着いてきちゃった」
「「え?」」
「明日挑むBランクの昇格を懸けたクエストの事を考えていたら、色んな事が私の頭の中を巡ってた。作戦の事、ヤバいと思うシチュエーション、対処法に戦略……。どこか張り詰めてたけど……。何か落ち着いてきた」
私は今回のBランクへ上がるかどうかを懸けたクエストに挑むため、自分でもでき得る事も考え続けていた。
張り詰めていたから、綺麗な月を見て安心したい気持ちも少なからずあった。
けど、ミレイユやエレーナの顔を見ていたら、気持ちも落ち着いていった。
同年代である事を加味しても、どうしてかな……ホッとさせてくれた。
改めて思う。
ミレイユとエレーナは私にとって信頼できる大切な仲間。
そして、かけがえのない親友だ。
「ここに来る前のトーマさんの言う通り、私達もできる限りの準備をしてきた。トーマさんやクルスも今までにない心強い武器だって用意している。それに……」
「これは私の我儘にはなっちゃうけど……。もっと色んなところに行ってみたいし、色んな事をやってみたい!【トラストフォース】の皆でね……」
「セリカ……」
「セリカさん……」
気持ちが昂った私はミレイユとエレーナに自分の本音を伝えた。
それを聞いた二人は……。
「うん、そうだね……。私達がこうしてパーティーを組んで、ここまで来たんだもの……。それに、トーマさんやクルスも同じ気持ちよ!」
「わたくしも、お二人と同じ気持ちです!」
「……」
Bランクの昇格を懸けたクエストを明日に控え、私達は同じ気持ちを抱き、同じ方向を見ている事をもう一度確認できた。
ティリルを発つまでにやれる限りの準備や対策はしてきた。
気力も充実している。
後は……。
「明日はリカルドさんが言っていたように9時集合。今日はもう寝て休もう!」
「うん!」
「ハイ!」
そうして、私達はベッドに入って睡眠を取る事になった。
翌日——————
「いよいよですね!」
「準備万端よ!」
「じゃあ、行こうか!」
朝食を済ませ、装備を整えておいたミレイユとエレーナはやる気十分だ。
かく言うこの私も同じだ。
「お待たせしてごめんなさい!」
「いや、待ってないし、俺達も準備が終わったばかりだぞ」
宿屋のロビーに着くと、トーマさんとクルス、私達をBランクに引き上げるに相応しいかどうかを見定めるBランクパーティー【ウォールクライシス】のリーダー格であるリカルドさん達が待っていた。
「よし、もうすぐ時間だ。目的の場所まで案内してやる。心して掛かれよ!」
「「「「「ハイ!」」」」
トーマさん達もよく眠れたのか、その顔色は真剣だけど、気負い過ぎている様子はなく、ベストなコンディションだと言う事が分かる。
ここまで来た……。後は、全てを出し切るだけだ。
こうして、私達Cランクパーティー【トラストフォース】はBランクの昇格を懸けたクエストが行われる場所へと足を進めるのだった。
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