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第209話 顔合わせと決意

Bランク昇格を懸けたクエストの決戦前夜も兼ねてます!

いつもの冒険者生活を送る中、【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんからBランクの昇格を懸けたクエストに挑む事を進言された。

セリカ達とも話し合った末、受ける事を決めた俺達はノイトレオに赴き、Bランクパーティー【ウォールクライシス】のレミーさんとブラゴスさんと合流した後、残りのメンバーと対面をしている。


「初めましてだな。【トラストフォース】の皆さん……」

「は、初めまして……」


互いに挨拶を交わすと、まずは真ん中に座っている男性が立ち上がった。


「まずは俺から自己紹介だな。俺はBランクパーティー【ウォールクライシス】のリーダーをやっている『重戦士』のリカルド・バークレイズだ。今回のBランクの昇格を懸けたクエストの監督をやらせてもらうから、よろしくな!」

自信満々に自己紹介をしているリカルドさんはパーティーのリーダー格だ。

肩まで届く長さの茶色の髪と左額に古傷が刻まれており、褐色肌に恵まれた体格もあってワイルドさを感じさせる男性だ。


「同じく君達を監督する俺は『魔術師』だ。名前はウォード・フィシトマだ。」

ウォードさんはパーティーのサブリーダー的存在だ。

少し伸びた緑髪をオールバックに纏め、右前髪を垂れ下げた髪型をしている男性だ。

黒いローブに身を包んでおり、壁に立てかけられている杖も一目でかなり上等な物である事が分かる。


「私は『付与術士』のアリエス・メイナーよ。今回はよろしくね。【トラストフォース】の皆様!」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」


最後に挨拶をしてくれたのはアリエスさんだ。

ベージュのショートヘアに緑のかかった黄土色の瞳をした綺麗な女性だ。

機動力を重視しているような白を基調にした法衣に身を包んでおり、どことなく勝気な印象を持っている。


「互いの自己紹介は済んだな。じゃあ、今からお前達が挑む今回のBランクの昇格を懸けたクエストの詳細について説明させてもらうぜ」

「は、はい……」


リカルドさんから俺達が挑戦するBランク昇格を懸けたクエストについての詳細を聞かされることになる。

再び背筋がピンとなり、姿勢も自ずと正された。

それはセリカ達も同じだ。


「カルヴァリオさんから受け取った資料に目を通しているから概要は知っていると思うが、俺達からも確認したい事がある。——————Bランクの昇格を懸けたクエスト……。本気で受ける気だな?」

「「「「「ハイ!」」」」」

「分かった。じゃあ、詳しい事の説明をするぜ」


今回のBランクの昇格を懸けたクエストに関する内容は資料で確認しており、リカルドさんから再度確認されたものの、俺達の答えに変わりはない。

それからリカルドさんから説明を受けた。


「今回【トラストフォース】に挑むのは……。ノイトレオ近郊で発生したダンジョンの攻略を成し遂げる事だ!」

「はい……?」


かつて俺達がベカトルブ近辺で発見された時と同じ、ダンジョン攻略だ。

ダンジョン攻略は冒険者にとっては一つの目標であり、大きな夢の一つでもある。

俺達【トラストフォース】もダンジョン攻略に関わった経験があるのは確かだが、飽くまでもそれは同じギルドのAランクパーティー【ノーブルウィング】や協力を申し出た冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】が抱えるAランクパーティーの庇護下に置かれた中でフォローが中心だった。

フォローで収まるだけならともかく、俺達【トラストフォース】5人だけで挑むとなれば大いに変わってくる。

聞いた時点で俺達も冷や汗をかいた……。


「ダンジョン攻略……。でしょうか?」

「あぁ。トーマ達のパーティー編成を鑑みて、今も出現しているダンジョンの攻略とBランクの昇格を天秤にかけるには悪くない条件だってギルド側も判断を下している。ダンジョンそのものはCランクパーティーでも上位の実力を持っていると見て、頑張れば行けると踏まえて判断した。因みに規模はトーマ達がベカトルブのダンジョンよりも小さいぞ」

(ベカトルブのダンジョンと比べれば規模は大分マシって事ね……)


前に見た資料で把握はしていたものの、ダンジョン攻略と言われたら、まだ緊張する俺達がいるのもまた事実。

ダンジョンにはモンスターが多くおり、トラップだってある。

モンスターを相手に討伐していく事そのものは冒険者として当然だ。

だが、Bランクの昇格を懸けたクエストにダンジョン攻略も絡んできたら、緊張感は一気に高まってきてしまう。


「だから今回はトーマ達にそのダンジョン攻略をやってもらいたく思い、その働き具合や立ち回りを見て、Bランクへの昇格を見極めさせてもらいたく思っている。俺達もピンチの場面やお前らの命が危ない時は助ける。但し、その頻度が多いようならば、Bランクへの昇格が叶わないと思ってくれ……」

「はい……」


リカルドさんからの説明を受けて、今回のBランクへの昇格を懸けたクエストがどれほどの難易度や意味合いかを再度認識される事になった。

内容を確認しても、正に上のステージへ昇るための試練である事をまざまざと感じさせられる。

この要素は俺達がDランクからCランクに上がるためのクエストを受けた時と同じだが、大きく違うのはダンジョン攻略と言う過酷さだ。

ベカトルブ近辺で発見されたダンジョンに臨んだ時はAランクパーティーの庇護下の中で攻略できたため、ある種の安心感を抱けた。

しかし、今回はそうもいかない。

当時よりもスケールが小さいとは言え、ダンジョン攻略であり、俺達【トラストフォース】の5人だけで挑まなければならない。

ダンジョンの最奥にはそのボスモンスターがおり、その力は強大だ。

その道中にはかなりの数のモンスターや危険なトラップもあり、並みのパーティーでは攻略するのが絶望的に難しくなる。


「説明は以上だ。そうそう、一つ言い忘れてたけど、ダンジョン内で見つけたアイテムとかは貰ってもいいからな」

「はい……。分かりました」

「明日は9時に集合だ。遅れた場合も失格だからな」

(シビアだな……)


こうして、リカルドさんから昇格を懸けたクエストの説明が終わり、俺達は泊まる部屋へと戻っていった。


「ふぅ。またダンジョン攻略に挑む事になるとはなぁ……」

「はい。それも今回は僕達5人のみでやるとは……。プレッシャー物ですね」

「そうだな……」


俺はクルスと、セリカはミレイユとエレーナと同じ部屋になった。

5人で外泊する時の基本的には男女別の組み合わせになる。

まぁ、当然と言えば、当然だ。


「でも……。今は緊張もしていますけど、一種の好奇心のような気持ちも抱いているんですよ。自分の可能性を試すにはこれ以上ない機会だって……」

「え……?」


普段は自分から前に出る事が中々ないクルスは意外な事を言った。


「前にベカトルブ近辺で発見されたダンジョン攻略に参加した時、最初は不安だったんですよ。自分なんかでサポートも務まるかどうかって。その時は【ノーブルウィング】の『シーフ』だったラルフさんから少しではありますけど、ノウハウとかを教わって、今度はそれを活かして何とかするって考えたら……。そう思うと、Bランクの昇格を懸けたダンジョン攻略は僕の中では一つのターニングポイントになるかもしれないと考えているんです」

「クルス……」


そう言ったクルスの表情は、気負いの中にどこかワクワクしているようにも見えた。


「こう言ってはあれなんですけど、前のダンジョン攻略は【ノーブルウィング】の『シーフ』であるラルフさんから少なからずノウハウを教えてもらったんですよ。もちろん、昇格を懸けたクエストの中で確実に活かせるかどうかの保証はできません……」


その表情の中には、憂いとも、不安とも見て取れるような様相もしていたが……。


「それでも……。今はこのクエスト……必ず成功させてやるって気持ちで一杯です!僕は【トラストフォース】の『シーフ』。ダンジョン攻略は僕が導きます!」

(クルス……。コイツ……逞しくなったな……)


クルスの目には光が宿っていた。

初めて会った頃のクルスはどこか自分に自信がなく、暗い雰囲気を醸し出すような印象であった。

でも、俺達の仲間になり、多くの修羅場やクエストを乗り越えていく中で少しずつ確実に成長していき、今では無くてはならない、いや、かけがえのない仲間となった。

クルスがいなかったら、俺達の命だって危ない場面もあったのだから。

そう思ったら、クルスの成長ぶりは凄まじいモノだった。

もちろん、それはセリカやミレイユ、エレーナも同じだ。


「ありがとうな。お前のお陰で、俺も踏ん切りが着いたよ。明日のBランクの昇格を懸けたクエスト、必ず成功させるぞ!」

「ハイ!」


俺はクルスと拳を合わせ、成功を誓うのだった。

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