第207話 前準備
Bランクの昇格を懸けたクエストに挑む前準備です!
いつもの冒険者生活を送る中、【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんからBランクの昇格を懸けたクエストに挑む事を進言された。
セリカ達とも話し合った末、挑戦する事を決意した。
「あれから皆で話し合いました。今回のBランク昇格を懸けたクエストを受けたく思います!」
「そうか。君達ならそう言うと思ったよ。あの時は圧を掛けるような真似をして悪かったね!」
「いえ。もう気にしておりませんので……」
俺達はカルヴァリオさんに改めて、Bランクの昇格を懸けたクエストに挑む事を伝えた。
「では、現地で待っている彼等にも連絡を取っておくから、明後日までに必要な準備をしておくようにね」
「「「「「ハイ!」」」」」
こうして話は纏まり、俺達は部屋を出て本格的に準備に取り掛かった。
それからは今日と明日にかけて、魔力を回復させるポーションや外傷を治す回復アイテムに武具を修繕させる“リペアフルード”の補充、俺達が持っている武具の手入れまで可能な限りまで行った。
模擬戦も行い、接近戦や中遠距離攻撃の対処等、考え得る事までシミュレーションしながらディベートも交えた。
イメージトレーニングは飽くまでも対策の一環でしかないけど、しておくのとしておかないのとではいざと言う時の動きのクオリティに差が出る可能性は大いにあると思う。
だからこそ、起こるかもしれないシチュエーションについてしっかり話し合った。
自分一人では気付く事も察する事もできないような意見も出たため、こうしてしっかり議論し合う機会を作るのは大事だって再度認識させられる。
(ん……あれ……?)
俺はふと、不思議な感覚になった。
モンスターとの戦いで襲われるような類ではなく、怪我をするリスクにさいなまれるような場面とは無縁で至って平和な場面で話し合っているのに、それに近いような感覚だった。
クエストに臨む時はいつもやっている作戦会議や事前準備なのに、いつになく抱かざるを得ないような緊張感があった。
(この緊張感……確か……。Cランクの昇格を懸けたクエストに挑む時と似ているような気がする……)
だが、大きさや質は当時と明らかに違う。
少なくとも、「Dランク冒険者最後の壁のモンスターの一体」と言われた“フライングタイガー”以上の強敵や修羅場にこれから向かうのは、間違いないのだから。
まだまだ完全に掴み切れてはいないと思っているけど、Bランクパーティーを率いるケインさんやウィーネスさん、イアンさんとイオンさん達がBランク向けのクエストに出向く時も、こんな気持ちなのかって感じもした。
ただ作戦を考えるだけでなく、広い視点を持たなければとも思うようになった。
出発を明日に控え、俺達は作戦を考えた後……。
「「「「「乾杯~!」」」」」
俺達は景気付けの意味も込めて、近くの飲み屋さんで飲み食いしる事にした。
当然と言えば当然だが、後に引かない程度で済ませる事は皆で決めていたけど……。
「Bランク昇格頑張ります!やってやる~!」
「その意気よ~!クルス~!私も思いっきり暴れてやるわよ~」
「結局こうなるのね……」
「あははは……」
「あらあら……」
酔いやすいミレイユはともかく、クルスもいつになく酔っては盛り上がっている。
俺とセリカとエレーナは平常運転だけど……。
「エレーナは余り気負ってない気はするけど……」
「わたくしも緊張していますよ。ですが、そのためにできるだけの準備もしてきましたし、むしろ開き直るつもりでやってみるつもりなので……」
「それもそうね!」
「そうか……。それもそうだな!」
普段は淑やかに振舞っているけど、いざって時にはドンと来いみたいに構えられるエレーナは流石だと思った。
「トーマさ~ん!エレーナ~!何を話してるんですか~?」
(これ以上はマズいな……。水を飲まそう!)
ミレイユが絡み出した辺りで俺はこれ以上飲ませるのは悪手であり、後に響くと判断し、皆でお水を飲む事にした。
それから時間を少し置き……。
「はぁあ。危うく飲み過ぎるところでした……」
「面目ないです……」
「ごめんなさい……」
「いや、大丈夫だよ」
やっと落ち着いた状況になった。
気分を高めたいのは分かるけど、本番に影響したら本末転倒だ。
「明日はBランク昇格を懸けたクエストに挑む大事な日になる。だからクエストに挑んでいる最中はこうして飲み食いする機会が巡りにくいと思うから、やっておいて損は無いと思うぞ」
「トーマさん……」
「まずは考えられるだけのプランを寝れるだけ練って、補充すべきアイテムは補充し切って、武具の手入れもやれる限り行った。そんでもって、景気を付けるための一杯を楽しんだ」
俺はBランク昇格を懸けたクエストに挑む事を決めた時から今日までにやってきた事を思いながらセリカ達に打ち明ける。
その聞いている表情も真剣さを帯び始めている。
「だからこそ、明日は互いにできるベストを尽くし、Bランクまで駆け上がろう!」
「「「「オォオーーーー!」」」」
俺はそう言い終えると、士気を高め合いながら一夜を過ごした。
翌日—————
「皆!忘れ物はないな!」
「「問題ないです!」」
「「準備に抜かりはありません!」」
「よし!行くぞ!」
そして、Bランク昇格を懸けたクエストの幕が上がるのだった。
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