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何でも屋として生きていくアラサーの異世界ライフ ~サブカルチャー大好きな高卒アラサーが異世界に召喚されて現実世界で得た知識と経験をフル活用したら多方面で無双しかけている件~  作者: カワチャン
第三章 大事件の遭遇と偉大な人物達との邂逅

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SS 18話 【ケイン視点】来てくれてありがとう

久しぶりにケイン目線のお話です!

「【武術LV.2】『バルカンラッシュ』!」

「「「「グガァアアア!」」」」


俺達はティリルの外れにある岩場にて、ゴブリンのコロニー殲滅のクエストを実行している。

今まさに、フィリナが“ゴブリンソルジャー”数体を一気に蹴散らしており、その身体は紙のように吹き飛びながら魔石となって消滅していった。

モンスター討伐やそのコロニー殲滅の経験は何度もあるが、いつもと違う事が一つある。


「ギィイイイイ!」

「ハッ!」

「ナイス!ヤァアア!」

「グエェエエ!」

「やりますね!フィリナさん!」

「マーカスも見事な防御よ!」


フィリナと褒め合っているのは、マーカス・クレヴァン。

俺が率いる冒険者パーティー【ディープストライク】の新参者だ。

元々マーカスはウェシロスを拠点とする冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に所属し、Bランクパーティーに身を置いていたのだが、現在はティリルを拠点とし、俺達も所属している冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に移籍、俺達のパーティーに加入した。

ギフトは『重戦士』であるマーカスの主な武器は身の丈近くほどある大きな盾であり、その防御力は折り紙付きだ。

それに加えて……


「【氷魔法LV.2】『アイスジャベリン』!」

「「ギィアアア!」」

「お~。凄いわね。2体同時に“ゴブリンナイト”を倒しちゃうとは……」


続け様にマーカスは【氷魔法LV.2】『アイスジャベリン』で“ゴブリンナイト”2体を倒す。

マーカスは『重戦士』としては珍しく、【水魔法】や【氷魔法】を得意としている。

『重戦士』のギフト持ちは【土魔法】や【岩石魔法】を会得している傾向が強く、マーカスのような例は中々に珍しいケースだ。

まあ、それはそれで頼もしいがな。


「後はあれですね」

「そうだな。フィリナ。今回は俺とマーカスでやってみてもいいか?」

「どうぞ。危なくなったら、アタシとニコラスで援護してあげる」

「怪我した時の回復は任せて下さい」

「行くぞ」

「ハイ!」


俺はフィリナを下げさせ、マーカスと共にコロニーのボスである“ゴブリンジェネラル”と対峙する。

当然、パワーも頑強さもサイズも“ゴブリンナイト”の数倍あり、しっかり対策を立てないと実力のある冒険者でも苦戦する事も珍しくない。

だが、今回はいつも以上の安心感がある。


「ガァアアア!」

「フン!」

「ガォオ!」

「ハッ!」

「グォ!?」


“ゴブリンジェネラル”が振るう最初の一振りを盾で防ぎ、二振り目は角度を付けて受け止める事で、その身体は前のめりになった。


(ただ防ぐだけじゃない。攻撃が飛んで来る方向に沿って受け流し、体勢を崩させた。続いて……)

「オラァ!」

「ゴォオオ!?」

(すかさず【氷魔法】で盾の表面を覆うように凍らせ、強度を上げてからの体当たり。攻防一体の戦術だな……)


マーカスは盾の表面を【氷魔法】で凍らせる事でその強度を高めさせ、“ゴブリンジェネラル”の顔面に向かって盾で突進し、その身体を吹き飛ばした。

ガタイやパワーだけでなく、戦闘巧者としての面もあるな……。


「【氷魔法LV.1】『ブリザード』!」

「グォオオ!」

「ケインさん!」

「あぁ!」


盾から【氷魔法LV.1】『ブリザード』が放たれ、吹雪に包まれた“ゴブリンジェネラル”の身体は凍っていった。

すぐに氷を取っ払ったものの、俺はもう既に間合いを詰めている。


「【剣戟LV.3】『疾空双斬』!」

「ギャァアアア!」


俺は一呼吸で強烈な十字の斬撃を放つ【剣戟LV.3】『疾空双斬』を決め、“ゴブリンジェネラル”の身体を斬り裂いた。

その身体は魔石を残し、光の粒子となって消えた。


「よし!これでクエスト達成だ!」

「「「「やったーー!」」」」


俺達はコロニー殲滅を完了させ、クエストを発注した依頼主の下に戻って完了報告を済ませた。

それからその足で所属している冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】へと帰っていった。


「お疲れ様でした!こちらがクエスト達成の報酬です!」

「ありがとうございます!」


夕方になり、俺はクエスト完了の手続きを済ませた。

それからは定番の……。


「「「「「乾杯~!」」」」」

「あ~!クエスト終わりの一杯は最高だな!」

「本当にそれね!」

「……」


日が沈んだ頃、俺達はギルドにある飲食スペースで存分にギルド飯を堪能した。

クエスト終わりのエールは本当に美味いんだよな。

俺とフィリナはグイッと飲んでいるけど、ニコラスとエルニは割とチビチビ飲んでいる。

そして、マーカスはと言うと……。


「ん?もうエールが空になりかけているぞ。お代わり頼むか?」

「え?」

「どうする?飲みたいなら頼むぞ」

「でしたら、もう一杯……」

「分かった。俺とフィリナの分を含めてもう3杯頼むか!」


そうして俺達はエールやそれに合うおつまみ数点を注文した。

マーカスも見た感じ酒が弱いとは思わないものの、どこか乗り気ではない、と言うよりも、我儘を決して通してはいけないような気持ちでいるとも見て取れた。


「どうしたのマーカス?今回はコロニー殲滅のクエストを達成できたから入ってくるお金も結構な額よ。腹一杯食べても懐は寒くならないよ!」

「え?あぁ。はい……」


入って間もない新参者で最年少とは言え、マーカスは中々に遠慮がちだった。

俺達としては、砕けた雰囲気における酒の場面で遠慮しなくてもいいのだがな……。


「すみません。ここのところ、心から宴席を楽しめなかったもので……」

「「「「……」」」」

「ここのところどころか……。長らくの間違いだと思うぞ……」

「え……?」


マーカスのこれまでの経緯は聞いている。

ヴェヌトイル商会の会長だったゲルグオの親族であった事、実の両親を失ってから引き取られた後の事、【ティア―オブテティス】に所属していた時代の頃、ウェシロスで起きた事件において関わった事まで俺達に共有されている。

聞いているだけでも壮絶、と言うよりも他人に使われて当たり前のような人生を送ってきたとも感じざるを得なかった。

特にここ約一年は元パーティーメンバーであり、現在は囚人奴隷として鉱山勤務を余儀なくされているジゲラに恩着せがましい要求を何度も突き付けられたりと、不遇の時期を送ってきた事を知らされた際には同情せざるを得ない気持ちにもなった。

こうして俺達のパーティーの一員になった後も、マーカスは馴染めていないような様子だった。


「俺は今まで、自分らしい生き方をする事ができなかったんです。ジゲラに自分がヴェヌトイル商会の会長の親戚と知られてからはかつてのメンバー達からは便利な道具のようにしか見てもらえなくなりました。悪事に加担していると知った時には怖気すら覚えました」

「ジゲラって【ティア―オブテティス】の中でも評判悪かったとか言ってましたね」

「上に登り詰めようとする向上心、正確には野心と言った方が正しいですね。パーティーを組み始めた頃から絶対にAランク冒険者になるって語っておりましたし、俺にもそう言ってました。振り返れば、駆け出しからCランクになるまでは本当の仲間って言えるような関係だったと思います。心なしか、雑用も押し付けられ気味にもなっていましたから……」

「ジゲラさん……」


冒険者パーティーを結成すれば、自ずとそれぞれのメンバーにこなすべき役割が振られるのは当然の事である。

戦闘における前衛だの後衛だのの話ばかりではなく、生活においても雑務までそれぞれのやるべき役割をこなし、支え合っていかなければパーティーはやっていけない。

実際、俺達もクエストのない日には俺達で武具の手入れや必要なアイテムの買い出し、日々の家事まで助け合ってきた。

だからこそ、改めて聞くとマーカスを不憫に思う。


「そんな事を考えても時間の無駄ですよね。そもそも、温情で【アテナズスピリッツ】に移籍する手助けまでさせていただいた上に俺は【ディープストライク】で一番の新入りですから……」

「ちょいちょいマーカス!」

「「「!?」」」

「フィリナ?」


自虐気味になっているマーカスの言葉を遮るように、フィリナが口を開いた。


「これまでの経緯を知って、聞いてて思ったんだけどさ、あんまり過去の事は必要以上に引きずらない方がいいと思うよ」

「……」

「そりゃマーカスが前にいたギルドで味わった事を忘れろなんて言うつもりはないよ。と言うより、忘れるに忘れられないと思うな」

「はぁ……」


酒が入っているとは言え、フィリナが妙に説教染みた事を語り出す。

ある程度酔うと口数が多くなるからな。

マーカスはポカンとしている。


「それでもね……。今のあんたは【アテナズスピリッツ】のマーカス・クレヴァンでしょ!そんでもって、アタシ達と同じパーティーの仲間よ!」

「フィリナさん……」


そう言い切るフィリナは弾けるような笑顔を見せた。


「マーカス。お前は自分の意志で俺達【ディープストライク】に入る事を選んだんだ。少なくとも俺は……これも何かの縁であり、運命とも思っている。あのヴェヌトイル商会の会長の親戚だったのだから、尚の事だけどな。だから……」


俺は言葉を紡いでいき……。


「マーカスの気持ちは何にしても、俺は来てくれて良かったと心から思うよ。これからもよろしくな。マーカス」

「ケインさん……。ニコラスさん……。エルニさん……」


マーカスの方に向けて右手を差し出した。

ニコラスとエルニも笑顔で迎え入れようとしている様子だ。

そして数秒が経って……。


「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」

「ちょっと~、泣く事無いでしょ」

「泣いてません!」

「「「ハハハハハハハ!」」」


実際に涙は零していないが、泣く一歩手前だったマーカスに対し、フィリナは軽く茶化していた。


それからも約二時間近く飲み食いしながら、他愛もない話をしながら、その一夜を過ごした。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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