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第200話 休暇の終わりが近付いて……

もうすぐトーマ達の休養期間が明けます!

俺達はウェシロスで起きた事件を解決してすぐに王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部を訪れた後、拠点にしている街であるティリルに戻っていた。

俺達はしばらくの休養を満喫している。


セリカ達がウィーネスさんと女子会をしている頃……。


「クルス。いつも使う炸裂弾や投げナイフがあったぞ」

「ありがとうございます。こっちも体力や魔力を回復させるポーションがありました」


俺はクルスと一緒に馴染みの武具屋『ロマンガドーン』に来ている。

休養期間とは言え、いつでもクエストに出られるように準備をしておきたいってのもあるんだけど……。


(うぉお……。あれってミスリル製の槍やハンマーじゃねえか。やっぱりミスリル製の武器って高いけどロマンある~!)


どんな武具が入荷されているかの確認もある。

新たに入荷された物を見ているだけでも楽しいと思うのは冒険者、いや、男の性とも思っている。

今はミスリル製の長剣に“ヴァラミティーム”があるため、俺自体は武器について困った事は現時点でない。


「……」

「どうした?クルス?」

「あぁ、ちょっと……。少し気になるのがありまして……」

「どれだ?」

「このナイフです」

「どれどれ?」

(見た感じミスリル製に見えるけど……)


クルスが指差した方角に視線をやると、ロングナイフのようだが、彼が持っている物と形状が明らかに違う。


(何だろう?ロングナイフって言うより小さい鎌みたいだな……。それに、刃も柄も暗闇のような、いや、漆黒とも言える黒さだ……)


刀身は30センチもあるかないかってところだが、その根元から先端まで少しずつ内側に反っている独特な形状をしている。

柄の形もグリップのようになっている。

俺はこのような形状をしたナイフを現実世界で見た事があるけど、名前が思い出せない。


「それはカランビットナイフって武器じゃよ」

「店主さん」


奥から『ロマンガドーン』の店主さんがやって来て、クルスが興味を示している武器の名前について教えてくれた。

そうだ、カランビットナイフって名前だったな!思い出した!


「カランビットナイフ自体、元々は農作業向けの道具じゃったんじゃが、時代が進むにつれて武器として震えるように作られるようになったんじゃよ。そいつは本来のカランビットナイフよりも刀身を長めに作り、刃の根元から中間までを片刃にする事で頑丈さを付けておる。刀身や柄は真っ黒になっておるじゃろう?それは特殊な塗料を塗り込みながら加工しておるから、光を吸収し、影や暗がりに入れば刀身、状況によっては柄も見えなくなる。だからモンスターとの戦闘はもちろん、対人戦を含めた奇襲にも適しておる」

「こんな特殊な武器があるんですね……」


店主さんの解説を聞いてクルスは関心を示している様子だ。

本来のカランビットナイフの刀身は今クルスが興味を示している形状の半分もない長さであり、暗闇に紛れれば視認し辛い特殊加工しているのもあって、隙を見て奇襲するのは当然だが、状況次第では近接戦に向いたギフト持ちの相手でも優位に立てそうだ。

店主さんが影のあるところまでそれを持っていくと、ぼんやりとしか見えず、もっと暗い場所に行けば本当に視認できなくなりそうだった。

まるで『シーフ』のための、クルスのためにあるような武器だと直感した。


「凄いじゃないか?今のお前にピッタリと言ってもいいような武器じゃないか?」

「興味はあるんですけど……」

「ん?」


クルスが下に指を差し、俺はそっちに視線を送った。

値段が買いてあったのだが……。


「120万エドル?クルスに初めて買い与えたミスリル製のロングナイフより高い!」

「当然じゃろう?ミスリル製に加えて、特殊な製法で作ったんじゃからそれくらいはするだろう?これでも良心的な価格にしているつもりなんじゃがな……。どうする?今ここで買わなければ他の誰かが買ってしまうかもしれんぞ」

(商売魂を感じる!)


オーダーメイドを始め、特殊な製法で作られた物は大体高いとはよく聞くが、やはり例外ではなかったな。

俺はクルスに一瞬だけ視線をやると……。


「……」

(欲しそうだな……)


そして俺は決断した。


「店主。このナイフを買います!」

「おぉ!本当か?」

「トーマさん?そんな、ポンッと買ってしまって……」

「クルス。ちょっとこっちへ!」


俺は買う事にした。

するとクルスが慌てた様子で俺に詰め寄るが、すぐに窘めて建物の隅っこにやった。


「これからの事を考えれば、『シーフ』のギフトを持つクルスにとっては一つだけでも持っておいた方がいいと俺は思ってんだよ。洞窟を始めとする暗がりな場所だったらお前の長所も遺憾なく発揮できるし、隠し武器やサブウエポンとしてはベストとも考えている。それに、ウェシロスで起きた事件を解決した時にかかった経費は落としてもらったし、特別報酬も結構もらっているから、あれくらいなら出せる。だから安心していい」

「トーマさん……」


衝動買いをするつもりは毛頭ない事を前提に、俺は説明をした。

実際、ウェシロスで起きた事件を解決に貢献したお陰でお金はかなりもらっており、クルスが興味を示した武器を一本買うくらいなら問題はない。

まぁ、セリカ達の新しい武具やアイテムについては、帰って来てから相談しよう。


「では、休養期間が空いたら、その分稼いで頑張ります!」

「よし、決まりだな!店主さん。これ購入します!」

「景気がいいねぇ。毎度!」


俺はクルスが欲しがっていた特殊なナイフを購入した。

店を出た後、クルスは笑顔で買った物を見ており、相当嬉しかったのが分かる。

それから俺達は拠点にしている邸宅に戻ってしばらくした後、セリカ達と合流した。

お互いにどう過ごしたかを共有し合って、互いに華が咲いた。

ウェシロスで起きた事件に巻き込まれたギンゼルさん達の容体。

ウィーネスさん達が俺達の事を想像以上に評価してくれていた事。

俺がクルスのために買った新しい武器について。

再起するための主なプランについてまで、夜を越しそうになるまで語り尽くした。

英気を養うための、次のステップに向けるための期間は、俺達に確かなリフレッシュの機会をくれたのは紛れもない事実だ。

だが、それも刻一刻と終わりを迎えようとしていた。


翌日————


「今日はギルドに顔を出しに行ってみようと思っている。皆、クエストもそうだけど、皆どうしているかなって思っているしね……」

「「「「賛成です!」」」」


休養期間も一週間を切っている俺達は、【アテナズスピリッツ】を訪れた。

しばらくぶりに訪れたけど、冒険者達で活気に溢れており、中には俺達の事を気に掛けてくれる人達もいた。

最近の出来事を鑑みれば、そうなるのは当然かもしれないけど、いざそうなったはなったで、どこかこそばゆい気もする。

でも、ホッとするな……。

俺達は張り出されているクエストの確認や必要になる物資の相談まで行い、休みが明けた後の準備も少しずつ始めていった。


「帰りに必要な回復アイテムとかを買っていくか!」

「そうですね!」

「もうすぐ休養期間も空けますから、リハビリも兼ねた鍛錬もしていきましょう!」

「「賛成~!」」


今日も一日、楽しく過ごせた俺達だった。


その日の夕方……。


「いや~。今日も稼いだぜ!」

「あの技は凄かったわね」

「この後ギルド飯に洒落こもうぜ!」

「当然!……って……お?」

「どうしたの?」


夕方に差し掛かった頃、【アテナズスピリッツ】の飲食スペースには冒険者達でごった返しており、活気付いている。

ギルド飯を味わおうとする冒険者達の一人がある人物を見かけて足を止めた。


「あいつってウチのギルドにいたっけ?」

「あのガタイが良くて背中に盾を背負っている奴か?」

「ワイルド系イケメンね。てか、私何かで見たような……」


緑がかかったグレーの髪色をしたミディアムヘアに逞しい体格を鎧に身を包み、自身の上背ほどのサイズの盾を背負っている一人の男性が受付に歩いている。


「失礼します。こちらのギルドマスターにお渡ししたい書類がございまして……」

「はい。確認させていただきますね」

(確か、この人は……?それに、この紹介主って……)


男性は受付嬢のナミネさんの前に立ち、彼女は差し出された封書を受け取った。

そこには『紹介状』と記載されており、封を開いたナミネさんが確認する。


「中身を確認しました。そちらに掛けてお待ち下さい。すみません。ギルドマスターがいるかどうか確認してもらえますか?」

「ハイ!」


ナミネさんは側にいる職員に指示を飛ばした。

彼女が握る書類の紹介主に一人の人物が記載されている。


冒険者ギルド【ティア―オブテティス】・ギルドマスター ヒルダ・オネルフェン……と。

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