第198話 【ウィーネス視点】回顧
今回はウィーネスとリエナがメインのお話です!
「ん……。ふぁあ~。朝か……」
アタシの名前はウィーネス・ルーライン。
冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に所属し、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のリーダーをしている。
アタシは起きてすぐに寝間着からラフな格好に着替えて外に出て、散歩を始めた。
早起きして天気が良かったら身体を動かすのがモーニングルーティーンだ。
ジョギングする事もあれば、鍛錬の一環で剣を振るう事もあり、今日みたいにゆっくり外の空気を吸いながら散歩する事もある。
ここ数日、散歩が続いているけど、それには理由がある。
「思い返せば、あの事件は想像以上にハードでシリアスだったからな~」
そう、先のウェシロス周辺で起きた冒険者達が行方不明になる事件だ。
所属している冒険者ギルドの仲間であるCランクパーティー【ゴーファイターズ】のギンゼル達もその事件に巻き込まれた事により、アタシ達が捜索に出向く運びになった。
最終的にはギンゼル達は助かったものの、クジャール伯爵家や気鋭の商会として知られていたヴェヌトイル商会、更にはビュレガンセ王国騎士団西方支部が絡んでいたりで想像以上にシビアだった。
ヴェヌトイル商会がクジャール伯爵家と手を組んで危険な魔道具開発のために各地から冒険者達を攫っていた事や違法薬物を製造していただけではなく、ビュレガンセ王国騎士団西方支部と繋がって不正を揉み消している事も分かってしまったのだから。
それらに加担していた人物達は漏れなく法の裁きを受ける事になったが、今回の事件は国中を駆け巡る大ニュースになった。
そりゃ貴族が商会や騎士団と繋がって悪事を働いていましたなんて、世間がほっとく筈がないからね。
「う~ん。にしても一カ月の休養期間か……」
ギンゼル達が見つかり、回復し切るのを見計らってウェシロスからティリルに戻ったアタシ達は【アテナズスピリッツ】のギルドマスターであるカルヴァリオさんに事の顛末を報告し、一カ月の休暇を貰える事になった。
想像を大きく超えた事件に巻き込んでしまった事や解決に大きく貢献してくれた事を考慮しての判断であり、アタシ達は受け入れた。
貰い過ぎな気もしたけど、リフレッシュは大事だからね。
「ただいま~!」
「お帰り。もうすぐ朝ごはんできるわよ」
「匂いでなんとなく分かってた」
拠点にしている邸宅に戻ると、同じパーティーメンバーであるリエナと鉢合わせた。
彼女は『魔術師』のギフトを持っており、パーティーを起ち上げた時からの付き合いだ。
アタシとリエナがリビングに向かうと、仲間であるバダックやモレラ、トクサが朝食の準備を済ませてくれていた。
時々アタシも朝食の準備をする事もあるが、手の込んだ料理を作るのはそこまで得意ではないので、大体他のメンバーがやっている。
それについては本当に感謝だ。
「「「「「いただきま~す!」」」」」
皆が揃ったところでアタシ達は朝食をいただいた。
食べ終わったら皆で片づけを済ませる。
「では、ギンゼル達の見舞いに行ったら日用品とかの買い出しに行ってくる。昼飯は各自で済ませるって事でいいな?」
「えぇ。女二人で楽しんでくるわ!」
今日は5人で行動……ではなく、男女それぞれに分かれて行動する事になった。
バダック、モレラ、トクサの3人は療養を余儀なくされているギンゼル達の下へお見舞いに行きがてら、日用品やアイテムの買い出しに赴いた。
前回はアタシとリエナの二人でお見舞いに行ったので、今回は余暇を過ごす事になった。
「こうしてゆったりと街をブラブラするなんて、しばらく無かったよね」
「そうね。カルヴァリオさんには感謝するしかないわ」
ティリルのオシャレで雰囲気の良いカフェにて、アタシはリエナと一緒にまったり過ごしている。
「少なくともここ数週間はこうして心置きなく休む機会は無かっただけにね……」
「違いないわね」
ウェシロスで起きた事件が分かってから、要所で息抜きする時間こそあれど、心の底から気が休まらなかった。
だからこそ、リエナと一緒に、気心が知れた女同士で何のしがらみややっかみ事無しで過ごせる安息の時間は大事にしたい。
「にしても、改めて思い返せば、トーマ達がいなかったら、どうなっていたのか分からなったのも事実よね」
「本当にそうよね……」
「そう言えばリエナ、トーマ達と“ゴーレム”の改造手術を施した“メガオーク”と交戦したのよね?そんでもって、トーマがトドメを刺したってまでは聞いているけど……」
「あの時のトーマはバダックと一緒に前衛で、私もミレイユと一緒に援護射撃する形で“メガオーク”と戦ったわ。やはり魔道兵器の要素を取り入れたモンスターの強さは従来のよりもパワーやタフネスは言わずもがなだけど、中遠距離攻撃する手段まで備えていたのは本当に脅威だと思ってる」
リエナは当時の状況を思い出しながら語っていた。
激しい闘いの末、トーマが大ピンチの中で新しいスキルに目覚めて逆転勝利したのはよかったものの、“ゴーレム”の改造を施した“メガオーク”の最後の切り札である大規模な爆弾を起動させる事による爆破に巻き込まれそうになった。
けど、ウェシロスを拠点にしている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のAランクパーティー【ヴァルキリアス】のミリアさん達のお陰でリエナ達は無事だった。
別行動をしていたアタシ達も巻き込まれかけたが、成り行きで行動する事になったマーカスの懸命な防御で窮地を乗り越えた。
悪徳貴族と商会が腐敗した騎士団との黒い繋がりに“ゴーレム”の要素を足したモンスターとの戦闘にあわや道連れの危機。
ウェシロスで遭遇したあの事件は半永久的に忘れないだろう。
「そう言えば、ウィーネス達も【ティア―オブテティス】のマーカスに助けられたようだけど、彼ってまだ王都で事情聴取とか受けているのかな?」
「聴取そのものは終わっていると思う。ただ、ミリアさんによると、冒険者ランクが下がるペナルティとかは受けないけど、マーカスがヴェヌトイル商会の会長だったゲルグオの親類と言う事実が知れてしまったから、それが原因でウェシロスやその近辺で活動するのは難しくなるだろうって言ってた」
冒険者を続ける事そのものはできても、【ティア―オブテティス】に所属したままでいれば、マーカスは街の人達から白い目を向けられる可能性はあり、精神的な負担を強いられてしまう可能性は大いにある。
気の毒ではあるけど、それから先の事はマーカス次第って話になる。
「でも、どこかで会ったら、その時の事について改めてお礼をしようとは思ってる」
「それが良いわね……」
アタシ達は気分を切り替えて、お茶菓子にケーキを楽しみ、他愛もない話をした。
その後は街をブラブラと歩いていた。
「そう言えば、トーマ達も休養を取るように命じられているんだよね?」
「えぇ。そうよ」
「ふ~ん」
「どうかしたの?」
ふと歩いている中、トーマ達もしばらくの休息期間を貰っている事を思い出し、アタシは少しばかり考える仕草を見せた。
10秒くらい経って……。
「ねえねえ。セリカやミレイユ、エレーナと集まらない?美味しそうなお店で食事とかしながらさ!」
「好きね、そういうの。でも、悪くないと思うわ」
「よし!決まり!」
アタシはリエナを連れてセリカ達が拠点にしている邸宅へと足を運んだ。
話を聞いたセリカ達も二つ返事で了承してくれて、明日にでも行けると言ってくれた。
のんびり穏やかに過ごせる機会は大切にしないとだね。
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