第197話 【セリカ視点】女子達の楽しい一夜
SS 9話 【セリカ視点】パジャマパーティーの若い年代のみバージョンです!
私達はウェシロスで起きた事件を解決してすぐに王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部を訪れた後、拠点にしている街であるティリルに帰って来た。
そんな中、ヒライト子爵家のご令嬢であるチェルシア様とティリルで再会し、共に余暇を楽しむ事になった。
チェルシア様がティリルに来て4日間、俺達は視察を兼ねた観光に付き添う事となったが、とても充実した日々だった。
そして、チェルシア様がティリルに滞在する最後の夜を迎えるのだった。
楽しい時間ほどあっという間に過ぎてしまうものだけど、やっぱり嬉しい時間である事に変わりはない。
「皆様、お待たせしました!」
「いいですよ」
「その寝間着可愛いですね!」
「うふふ。お気に入りなんです」
「素材も上質な物ですね。見て分かりました」
私達は拠点にしている邸宅のエレーナの部屋に集まっている。
そう、女子だけのパジャマパーティーだ。
(ミレイユはともかくだけど、エレーナとチェルシア様はお嬢様って感じさせるわね……)
私は黄緑色のノースリーブスとショートパンツと緩い格好で、ミレイユはオレンジ色の半袖ミニスカートのワンピースタイプの寝間着だった。
一方、エレーナは薄いピンク色の柔らかな素材で作られたであろうガウンに身を包んでおり、漂わせる気品もあってか、彼女が貴族出身である事を再び思い起こさせる。
チェルシア様は緑にベージュをかけたようなネグリジェを着ており、薄めの若草色の羽織と、露出は最低限にしつつも、品の良さをまざまざと感じさせるような装いだった。
子爵家のご令嬢だから、そりゃそうだって話よね。
「では、始めますかね!?」
「えぇ!」
「「ハイ!」」
「改めて乾杯~!」
「「「「乾杯!」」」」
私達は道中で買ったシャンパンで乾杯を交わして始める事になった。
そう。女子会だ。
「皆様、この度は本当にありがとうございました。お陰でティリルがどんな街なのかを知り、わたくしが拠点にしているグリナムを発展させるために必要な要素を学ぶ事ができました。何より、こうして再会できた事を心から嬉しく思います」
「チェルシア様……」
そう言っているチェルシア様の表情は晴れやかだった。
私達がチェルシア様とティリルで再会した時はビックリしたけど、それから今に至るまでは本当に充実していた。
美味しい物を食べて、可愛い服を着て、雰囲気の良い場所を訪れて、お酒を飲み明かしては笑い合ったりと楽しかった。
「ティリルに訪れていた事を知った際には驚きましたけど、ここまでの数日は本当に楽しかったですし、街の良さを知っていただけて嬉しいです」
「はい。グリナムにいたままでは知らないでいただろう事も知る事ができて、本当に有意義でした」
「良かったです。身体を休めるようにと言われていた中でチェルシア様とこうして過ごす事ができたのは幸運でした」
「わたくしもこうして繋がりを持てて良かったと思っていますよ」
私達はそれぞれの気持ちを伝え合った後、お酒やお菓子を飲み食いした。
女性らしい話もあれば、それぞれの近況を報告し合った。
ウェシロスで起きた事件についてはグリナム、もといチェルシア様のご両親であるアスバン様とミクラ様の耳にも届いており、その活躍をとても好ましく思っていただけている事を知った。
お二人は私達の活躍を聞く度に嬉しい気持ちになっていると聞かされた時、自分達の努力や頑張りが誰かの力になっている事を知った。
ましてや子爵の爵位を授かっている貴族の方がその人物の一人であるならば、尚の事だ。
よく考えてみれば、今の段階で特に付き合いのある貴族と言えば、チェルシア様達ヒライト家の皆様だと思っている。
繋がりを持ったのは本当に偶然ではあったけど、こうして良い付き合いができて、素直に嬉しい。
それから一時間くらいが過ぎた頃だった。
「うふふ。わたくし、こうして皆様と寝間着姿でお酒を楽しみながらお話するのは初めですわ!」
「喜んでもらえて何よりです」
どうやら楽しんで頂けているようで、私も嬉しくなる。
「そう言えば、チェルシア様に聞いてみたい事があるんですけど……」
「はい?」
お酒が進んだのもあってか、ミレイユは初めの頃よりも大分フランク、と言うより馴れ馴れしい様子でチェルシア様に質問してきた。
水入らずでやろうって言うのは本当でも、失礼な事をしでかしかけた時には止めるつもりでいる。
「チェルシア様って……どんな人がタイプなんですか?」
「好みのタイプですか?」
(ほらやっぱり!でも、気になる!)
女性同士の話でほぼ必ず出てくる恋バナだった。
少し戸惑いつつも、興味本位で知りたい自分もいる。
数秒間を置いて、チェルシア様が口を開いた。
「そうですね……。実直で誠実な方がタイプですね……」
「はぁ……」
意外と言うか、まぁ普通な答えだった。
「わたくしも男性の方とはお父様や護衛の騎士、従者くらいしか接する機会がございませんので、ふわりとした答えしか言えませんが、やはりお付き合いするならば自分の芯を持っていて真っ直ぐな方がよろしいですね」
「それは分かりますよ。わたくしもお付き合いするならば誠実でお優しい方が良いと思っております。もちろん、自分の目で見て、本当にそうであるかどうかは判断させていただきますけど……」
「そうですね」
チェルシア様の答えにエレーナも同意した。
二人は貴族の家の生まれなだけに、予想以上に素朴な好みだった。
でも、意外なほどに感性は一般のそれであるからこそ、逆に親しみやすかったりするし、現にこうして気軽に話せている。
「では、わたくしからも質問です。セリカさんやミレイユさんはどんな方がタイプなのでしょうか?」
「私達ですか?えっと……」
チェルシア様の問いに私とミレイユはふっと考えるような仕草を見せるが、次の瞬間……。
「トーマさんやクルスさんのような方がお好きとか?」
「「え?」」
(あらまぁ……)
モンスターの不意討ちのように飛んで来た質問に私とミレイユは思わず固まった。
エレーナも「まぁ、大胆に」みたいな様子だ。
「そ、それは。た、確かにトーマさんやクルスは同じパーティーの仲間ですし、頼りになりますし、その……」
「二人共、本当にいると安心するって言いますか、人柄も信頼できる事に噓偽りはないですけど、それとこれとは……えっと……」
突然の質問にミレイユの酔いも醒めたようだった。
トーマさんもクルスも私達の大事な仲間であるのは確かだけど、それが恋愛感情に関係するとなれば話は別だ。
特に、ミレイユから見てのクルスは……。
「クルスは、その……。何かと共通しているところがあるから、話も合うし、優しいし、逞しくて向上心もあるしで、一緒にいると私も頼もしいって思っているので……」
ミレイユは恥じらいながらクルスについて語っている。
私から見てミレイユとクルスには共通点がある。
二人共、私達の一つ前に所属していたパーティーを追放された経験があると言う事だ。
無理矢理追い出される辛さと悲しみを知っているミレイユとクルスだから、互いに気心が知れており、早い段階で打ち解けた。
心なしか、意識し合っているのではと思う場面も数回見た事はある。
「それが恋かどうかは別として、心から信頼できるって意味ですかね?」
「は、はい!その通りです!」
「セリカさんはトーマさんの事をどう思っております?」
「へ?私ですか?」
続いて私への質問が飛んで来て、少し焦った。
皆が答えているのに自分だけ誤魔化すなんてズルい事はしたくないと思ったので、この際だと思って打ち明ける事にした。
「トーマさんは……。いつも私達の事を支えてくれて……。助けてくれて……。頼り甲斐のある素敵な人だって思っていますよ。先のウェシロスで起きた事件も、トーマさんがいなかったらどうなっていたかも分かりませんでしたし……。何より……」
「一緒にいると……。安心させてくれるような気持ちになるんですよ……」
「セリカ……」
(セリカさん……。もしかして……)
「うふふ……」
気付けば私はそう言葉を零していた。
するとチェルシア様はくすりと笑った。
「セリカさん達。トーマさんとクルスさんの事を本当に信頼しているのですね。分かりますよ。お二人共、実力だけではない、素晴らしい人間性も備えた素晴らしい方々だって事はわたくしも思っておりますよ。お父様もお母様もそう申しております」
「チェルシア様……」
「ふぅ……。やっぱり、皆様とこうして再会して、いろいろな場所を巡って、お話して……。思い切ってティリルまで足を運んで良かったって心から思いますわ。セリカさん達といると、自分らしい自分でいられて、勇気や元気をもらえます」
そう言うチェルシア様の表情は明るかった。
来て良かったと言ってくれただけで、今回の視察を兼ねた観光に意義はあったと私も思えた。
「わたくし……。今回ここに来た経験を活かして、お父様が治めるグリナムの発展に貢献できるように精進していきますわ!」
「わたくしも応援しますよ」
「きっとできますよ!一人でティリルまで来るくらいなんですから!」
「今夜はパーッといきましょう!パーッと!」
「ハイ!パーッといきましょう!」
「では、改めて……」
「「「「乾杯~!」」」」
もう一度乾杯した後は、他愛もない話からこれからの事まで語り尽くした。
安らかで暖かなひと時を存分に楽しむ瞬間は大事にしなきゃだね。
翌日、私達は護衛の意味も含めて、チェルシア様をグリナムまで送り届けた。
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