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第196話 チェルシアの気持ち

俺達はウェシロスで起きた事件を解決してすぐに王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部を訪れた後、拠点にしている街であるティリルに帰って来た。

休暇を満喫している中、ハイレンド伯爵家の嫡男であり、エレーナの実兄であるガレル様とヒライト子爵家のご令嬢であるチェルシア様とティリルで再会した。


翌日———————


「では、私は屋敷に戻らせてもらうよ」

「もう行かれるんですか?」

「余り長い事留守にしてしまっては、父上の負担も大きくなるからな」


俺達は拠点にしている邸宅を訪れたガレル様を見送っている。

もう少しいてもいいのにって思ったが、ガレル様にはハイレンド伯爵家の当主であり実父であるロミック様の仕事も手伝ういや跡取りのための勉強等、やる事も多く残っているため、早めに戻る事になった。


「それに……」

「……」

「エレーナが元気でいる事も確認できたからな」

「お兄様……」


ガレル様の視線の先にはエレーナがいる。

兄妹の再会を果たせたのが何だかんだで嬉しかったのか、エレーナは名残惜しい表情をしている。


「エレーナ。たまには帰って来て、父上の顔も見てあげなさい」

「分かりましたわ」

「トーマ殿。皆の者。エレーナの事をどうかよろしく頼む」

「はい。お任せ下さい」


俺はガレル様と握手を交わした。

こうしてガレル様はティリルの馬車ターミナルへと向かい、俺達と別れた。

ちなみにお忍びで来ているため、変装しているのはご愛嬌だ。

それから数分後……。


「皆様、お待たせしました」

「チェルシア様!」


ガレル様と入れ替わる形でチェルシア様がやって来た。

昨日泊まっていた宿屋で荷物を纏めた後、合流すると事前に決めていたのだ。


「では皆様、数日の間ではありますが、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


こうして俺達はチェルシア様と一緒にティリルを巡る事になった。

初めてグリナムを訪れた時にはチェルシア様に案内してもらったのだが、今度は俺達が彼女にティリルの良い所や気に入っている場所を紹介する事になった。

まぁ、護衛の意味も含まれているけどね。

それから俺達はチェルシア様と一緒にティリルの中央道を歩いている。


「昨日もこの辺りを歩いてみたのですが、グリナムとは違った賑やかさを感じますね」

「ここには様々な種類のお店や露店もあるので、クエスト帰りで寄る事もしばしばなんですよ」

「辺境の街とも言われていますけど、豊かに暮らすには充分な物資が揃っていますよ」

「グリナムほど緑や自然が豊かではないですけど、また違った活気を感じますね。冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】があるだけにですかね……?」

「確かにティリルには、【アテナズスピリッツ】があるだけに、冒険者が目に付く事も珍しくはないですからね。それだけに、冒険者に向けたお店もグリナムよりも多いので……」

「グリナムは冒険者に向けたアイテムショップはともかく、武具屋はティリルと比べれば、大分少ないですからね……」


チェルシア様とティリルを散策していると、彼女は思ったコメントを口に出している。

ティリルは【アテナズスピリッツ】を拠点として構えているだけに、そこに所属している冒険者以外にも、他のギルドに所属している冒険者が訪れている事も珍しい話ではない。

故に、冒険者が頻繁に出てくる要素を鑑みて、チェルシア様からは新たな発見を見つけんばかりの気概を要素で垣間見る。

しばらく街を散策した後、俺達は昼食を取る事になった。


「ん!このステーキ、とっても美味しいです!」

「最近見つけたお店でして、私もお気に入りなんですよ!」

「お店のインテリアも、グリナムにある飲食店と結構似ていますしね!」

「ここはスイーツも美味しんですよ!」

「後で頼みましょう!」

「盛り上がっているな~。女子達」

「入り込む余地がないですね」

(でも、チェルシア様……。楽しそうだな)


雰囲気の良い飲食店で食事を楽しむチェルシア様は活き活きとしている。

セリカ達と同年代の友人が少ない彼女にとって、貴族界隈にはない有意義かつかけがえのない繋がりである事を教えてくれる。

こうして見ると、冒険者や貴族の関係を超えた素晴らしい関係だと実感させられるな。

昼食を終えると、俺達は街から少し離れた草原へと赴いた。


「う~ん。風が心地良いですね~」

「気分がモヤモヤしている時や考え事をしたい時には結構訪れるんですよ」

「ティリルの街並みもよく見えるので、気に入ってます」

「うんうん。確かに……」


草原には人目もないので、帽子や眼鏡で変装していたチェルシア様は素顔に戻っている。

こうして見ると、何もない草原で淑やかに佇んでいる姿一つ取っても、絵になるくらいの魅力を醸し出している。


「わたくし……。思い切ってティリルに来て良かったと心から思っております。グリナムを発展させるためのお忍びで観光に来た事実に間違いはございませんし、楽しく過ごしながらも、有意義な経験ができております」

「と……。申し上げますと……?」


するとチェルシア様はどこか切ない表情を見せている。

そして口を開いた。


「わたくしがティリルに来た目的は二つあるんですよ。一つは先ほども申し上げたように、グリナムを発展させるためのきっかけを得る視察。もう一つは……。トーマさん達に会いたかったからなんですよ……」

「え?」

「「「「……」」」」


視察と社会勉強の一環でティリルに来たチェルシア様だったが、どうやら俺達に会いに来る事も兼ねていたのが分かった。

むしろ、会いたがっているのが強そうにも見えたが、そこは突っ込まないようにせず、しっかり話を聞く姿勢を取った。


「先日起きたウェシロスの事件を存じ上げた時、トーマさん達の安否も気掛かりになったのは当然でしたが、今までとは毛色が違うと感じました」

「毛色……?あぁ、確かにそう言えますね……」


チェルシア様の仰ったように、俺達が関わったウェシロスで発生した事件は、イントミスで起きた闇ギルド事件とは確かに勝手が違っていた。

異常と言うより、異質と言ってもいいくらいにだ。


「クジャール伯爵家とヴェヌトイル商会が手を組んで危険な魔道具を作っていて、そのために冒険者達を誘拐して、ビュレガンセ王国騎士団西方支部に賄賂を渡して不都合な事件を揉み消して悪事を引き起こすなんて、非常に恐ろしい事件だとわたくしは思っています。それだけではなく、“ゴーレム”の改造手術を施したモンスターも『テイマー』によって操られ、あわや街を襲いそうになったとも伺いました」

「そんな事もありましたね……」

「最終的にはウェシロスに拠点を置いている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】の方々や西方支部の志のある騎士達の協力で解決に至ったものの、ただならぬ出来事にトーマさん達が遭遇したと聞いたら心配でした」

「チェルシア様……」


チェルシア様は純粋に俺達の事を心配していた。

貴族や商会が騎士団を買収して悪事を働くと言う所業は冒険者の俺達だけでなく、冒険者でもないチェルシア様だってすぐに理解できる。

そして、事の重大さも深刻さも……。


「だとしたら、心配かけて申し訳ありませんでしたね……」

「え?あ、謝って欲しいとかではなくて、ただ……その……」

「一回落ち着きましょう」

「「はい……」」


俺が謝罪すると、チェルシア様があたふたし始めるが、エレーナによって静まった。

それから一呼吸置いた。


「確かにあの一件は想像していた以上にシビアな内容でしたね」

「冒険者達の捜索のはずがとんでもない事件になるとは思いもしなかっただけにですね」

「本当に波乱の一言に尽きました……」

「思い返すだけでも、厳しかったですね……」


俺達はウェシロスで起きた事件やその前後について起きた出来事をチェルシア様に語っている。

チェルシア様は夢中になって聞いてくれた。


「本当に波乱万丈だったんですね」

「はい……」

「うふふ。心配なのは本当でしたけど、トーマさん達にはいつも驚かされますね。だからこそ、皆様には目が離せませんわ」

「チェルシア様」


俺達が一通り話を終えると、チェルシア様は再び笑顔を見せてくれた。


「わたくし、トーマさん達の下へ会いに行って良かったと心から思います。お陰で、元気や活力をもらえたような気がしました」

「それは良かったです」

「もう日も暮れそうですし、街に戻ったらどこか食べに行きませんか?僕も美味しいお店を知っているんですよ!」

「お前を歓迎した時のあの店か!」

「あそこのお店も美味しいですよ!どうですか?」

「行ってみたいです!」

「では、行きますか!?」

「「「「「ハイ!」」」」」


俺達は街に戻り、少し豪華な夕食を楽しむ事になった。

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