第191話 そして、日常へと戻っていく……
バタバタした日々から落ち着いた日常に戻ります!
俺達は王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部へと向かう事になり、その代表であるゼラカール・フォートレイン総帥と邂逅した。
ベカトルブ近辺で発見されたダンジョンの最奥で見つけた魔道具“ヴァラミティーム”を正式に授かる事になった後、王都を観光した。
「ふう。帰って来たな~」
「明日以降は緊急の予定はないから、ゆっくりできますね!」
「そうだな」
(ウェシロスから戻って来てすぐに王都へ向かっただけにな……)
俺達は王都ファランテスから拠点にしている街であるティリルに帰って来た。
ウェシロスに赴いてしばらく滞在し、ティリルに戻ってすぐに王都へ赴いたのもあってか、どこか懐かしさを感じた。
本当だったら何日かゆっくり過ごす予定があっただけにだ。
「トーマさん。この後ギルドに寄ってカルヴァリオさん達に報告くらいはしておいた方が良いと思いますけど……」
「それもそうだな。まずはギルドに向かうか!」
セリカの進言で、俺達は所属している冒険者ギルドへと足を運んだ。
「お疲れ様です。ギルドマスターは現在おりますよ」
「そうですか。ありがとうございます」
ナミネさんに事の経緯を話すと、ギルドマスターの執務室に通してもらえる事になった。
それから俺達はその場所に案内された。
中に入るとカルヴァリオさんがおり、俺達は王都へ訪れ、ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部のトップであるゼラカール総帥との話で何があったかを報告した。
「なるほど。ベカトルブ近辺で発見されたダンジョンの最奥で見つけた魔道具の名前が“ヴァラミティーム”である事やその性能が明らかになったと言う事なんだね」
「はい」
「私もゼラカール総帥とその件で話し合った事はあったんだが、今回トーマ達が訪れ、話を聞いて資料もくれたお陰で謎だったその“ヴァラミティーム”について分かったからね」
「それでゼラカール総帥から、私に持っていて欲しいと願い出されたと言う事です」
「ギフトを加味して、ゼラカール総帥がそう決めたのであれば、私から何かを言うのも野暮だな。とにかく、今回のビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部に訪れる件については、本当にお疲れ様だった。トーマ達【トラストフォース】の5名には、今日から約一カ月の休養を命じる」
「え?」
俺達は王都で起きた経緯を伝えると、カルヴァリオさんからしばらくの間はクエストに出向かず、約一月の休養期間を言い渡された。
理由としては、行方不明になった同じギルドに所属しているギンゼルさん達の捜索や救出のために、予定以上に長引かせる形で携わらせてしまった事に加え、想定した以上に厳しい内容となってしまったため、リフレッシュの意味でしばらくの休暇を取るように命じられた。
「ギンゼル達を始めとする冒険者達が行方不明になった事件が想像以上に長引いた上に中身も過酷だったからね。トーマ達は無論、ウィーネス達がギルドに戻って来たら、しばらくの休養を命じるつもりだ」
「は、はぁあ……」
(確かにウェシロスに赴くのは良いにしても、加えて想像以上に大変な事件があったのだからな……)
ウェシロスで起きた事件が長引いた事や内容の酷さを鑑みての処置だろうけど、そんなに休養する期間をもらっていいのか分からない自分がいる。
それはセリカ達も同じだ。
「本当にありがとうな……。ギルドの仲間を助けるために、命を懸けてくれたお前達は、私の誇りだ……」
「恐れ多いお言葉です……」
「同じギルドの仲間達を救い、苦しんでいた人達の力になって解決へと導いてくれたのだ。誇って良い」
「ありがとうございます」
カルヴァリオさんの裏表のない賞賛に対し、俺達はそれ以上に返す言葉がなかった。
俺は【アテナズスピリッツ】の冒険者で良かったと心から思い直す。
「それでですね。ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部のトップであるゼラカール総帥から正式に授かる事になった“ヴァラミティーム”なんですけど……」
「どれどれ?」
俺は腰に差してある“ヴァラミティーム”を差し出した。
「これがベカトルブ近辺で発見されたダンジョンの最奥で見つけた物か……。改めて見てみると、感慨深さも抱きそうだよ……」
「効果は知っているつもりなのですが、実戦で馴染ませていこうと思いまして……」
「なるほど。それなら休養のついでに鍛錬をする時間も作った方がいいかもな。もちろん、無理しない程度で……」
「はい。心得ております。それからもう一つ、できればいいなって思う事があります」
「何かな?」
俺はカルヴァリオさんに一つの相談を兼ねたお願い事を申し出した。
続いてその要件を伝えると……。
「そう言う事なら、まずは私からコンタクトを取って予定を調整してみよう。トーマが言っていたスキルや今後の修行方針についても彼女達に聞いてみるのが最適だと思うからね」
「ありがとうございます」
こうして俺達は用を済ませて部屋を出た。
ギルドを出た俺達は拠点にしている邸宅に着いてすぐ、装備品を脱いでベッドに寝そべる。
「ふう。ようやく一段落だな……」
(ウェシロスでの一件が思っていた以上にハードだったのに加え、その足で王都へ赴いたからな……。やっと安息の時間が手に入ったって感じだよ)
思い返せば、邸宅でゆったり過ごす時間はここ最近少なかった。
王都へ赴いた際に観光や買い物をする機会はあっても、こうしてゆっくりする時間が得られたと考えれば、ホッとする。
やっと一息つけたと……。
少し横になって身体を起こし、テーブルに置いてある“ヴァラミティーム”を見つめている。
(あのダンジョンで発見して手に入れたこれが、俺だけの武器になるなんてな……。何か信じられないっつーか、何と言うか……)
俺はベカトルブ近辺で発見されたダンジョンでの出来事やビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部のトップであるゼラカール総帥とのやり取りを思い出している。
厳しかった事や大変だった事、恐ろしかった事も確かに会ったけど、セリカ達や協力してくれる頼もしい人達がいたから、乗り越える事ができた。
その経験は俺達にとっての糧となり、力になった。
そして、ウェシロスで起きた事件を解決し、更なる成長へと繋がったと心から思う。
皆がいたから、俺は強くなれた。
(この武器を遺憾なく活かせるようになれば、どんな自分になれるか楽しみだな……)
「トーマさん!ご飯できましたよ!」
「あぁ。今行く!」
これから先の事は分からないけど、それと同時にワクワクや好奇心も溢れてきた。
そうして、慌しかった日常は終わりを告げるのだった。
二日後……。
「トーマさん。ギルドからお手紙が届きましたよ。多分、例の……」
「本当か?」
クエストとは無縁の休日を過ごしていた頃、セリカから手紙を受け取り、送り主を確認すると、所属している冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】と記載されている。
俺はその場で封を空けた。
「よっしゃ。早速行こう!」
「ハイ!」
俺達はいつもの冒険者ルックに着替えた。
クエストに赴くためではなく、ある人物に会いに行くためだ。
それから俺達は手紙に記載されている場所の近辺まで赴く。
「あっ。あれだ」
「私達が住んでいる家よりも少し大きいですね……」
「ここにあの方達が住んでいると……」
ティリルにほど近い場所に一軒の家があった。
石造りをベースにした二階建ての建物であり、貴族が持つような屋敷には到底及ばないが中々に立派な邸宅だと感じさせる。
俺達はドアの前に立ってノックをした。
「ごめんください。【トラストフォース】のトーマです」
「は~い」
すると、扉が開かれた。
その相手は……。
「すみません。突然訪れてしまって……」
「いいのよ。待っていたわ」
「相談する機会を設けていただき、ありがとうございます。ウルミナさん」
俺達と同じギルドに所属し、Aランクパーティー【ノーブルウィング】を率いる『魔術師』、ウルミナさんであり、後ろにはサブリーダー的存在のルエミさんが後ろにいる。
そう、俺達はウルミナさん達とある事についての相談をするために訪れたのだ。
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