SS 16話 【ミリア視点】また日常へ……
Aランク冒険者の名を冠する美しき冒険者、ミリアがメインのお話です!
次もミリアがメインのお話です!
ウェシロスの住宅街に少し大きなレンガ造りの家がある。
6人は住めそうなくらいのサイズをしている。
そんな家に一筋の陽射しが一つの部屋に差し込んだ。
「ん……。朝か……」
私の名前はミリア・メーティス。
「ふぅ。いい天気ね……」
ウェシロスを拠点にしている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に所属している冒険者だ。
私はAランクパーティー【ヴァルキリアス】を率いており、最近まで他国に遠征していた。
ギルドへ戻る道中で【ティア―オブテティス】のギルドマスターであるヒルダさんから応援要請を受けてトラブルの対処に回り、これを解決した。
遠征から帰って来てすぐの事に若干の戸惑いを覚えたけど、今となっては良い思い出の一つになっている。
朝日の光を浴び、香ばしい匂いがする部屋へと向かう。
「おはよう!」
「ミリア。おはよう」
「ライラ。朝食作ってくれてありがとう。私も手伝うよ」
「半分は済ませてるけどね。じゃあ、お皿とかコップとか用意してくれる?」
「分かった」
リビングとダイニングキッチンを兼ねた部屋に入ると、【ヴァルキリアス】の『魔術師』であるライラが料理をしている。
ライラは料理上手で家事も人並み以上にできるので、私達はいつも助けられている。
私もシンプルな料理くらいは作れるけど、彼女には及ばない。
野宿した時に振舞う手料理は大体ライラが作ってくれるので、本当に感謝している。
「ん~。いい匂い」
「おはよう」
「お、美味しそうじゃん!」
「メロ、フォネ、ターニャ!おはよう!」
料理の匂いにつられるように、同じメンバーである『付与術士』のメロ、『僧侶』のフォネ、『武闘家』のターニャも起きてきた。
それから配膳も済ませ、テーブルには焼き上がったパンやベーコンエッグ、サラダやデザートが並べられた。
「「「「「いただきまーす!」」」」」
「う~ん、美味しい!」
「ライラ。また腕を上げたんじゃない!?」
「味付けは少し変えてみたんだけどね」
「いいじゃん!美味しいのはマジなんだからさ!」
「うまうま」
ライラが作った料理が美味しかったのもあるが、朝食を味わう私達の雰囲気は暖かかった。
私やメロ、フォネも時々料理する事はあるけど、クオリティはいくらか落ちる。
ターニャに至っては野宿の際、肉や魚の丸焼きとかがほぼ当たり前なアバウトな献立になってしまうので、彼女に料理はあまりお願いしないようにしている。
それから朝食と身支度を済ませ……。
「まずはギルドに行きましょう」
「そうね」
「オッケー」
「「は~い!」」
私達はいつもの冒険者として活動するための装備に身を包み、冒険者ギルド【ティア―オブテティス】へと脚を運んだ。
「皆、おはよう」
「ミリアさん!おはようございます!」
「今日はクエストか何かで?」
「ん~。ちょっと違う感じかな……」
ギルドに入ると、所属している冒険者達が私達の周りに集まってきた。
長らくギルドを空けていただけに、皆は私達が来る度にこうして出迎えてくれる。
嬉しいのは本当だけど、何か申し訳ない気持ちも少しあったりする。
「今日はヒルダさんと話をするために来たんだ。今いるかな?」
「いますよ」
「ありがとう」
一人の後輩冒険者にヒルダさんがいる事を確認すると、私達は執務室へと向かった。
辿り着くと、そのドアをノックした。
「はい」
「ミリアです。メンバー全員揃っています」
「どうぞ」
「失礼します」
扉を開け、私を先頭に全員が執務室へと入っていった。
「ごめんなさいね。遠征先から帰ってきたばかりでいろいろトラブルに巻き込ませて……」
「いえ、気にしないで下さい。私達も助けたくて助けているだけですので……」
「そうですよ」
「それに、【アテナズスピリッツ】の冒険者達が協力してくれたから被害も最小限で済んだんですから!」
「「そうです!」」
「そう。ありがとう」
「ヒルダさん。遠征の結果についてお話する件ですが……」
「そうだったわね。概ね知ってはいるけど改めて……」
ヒルダさんは帰って来て早々に緊急度の高い役回りをさせた事を詫びていたが、私達は気にしていないと窘めた。
それからすぐに私は中長期に渡って携わっていた遠征の成果について報告した。
「本当にお疲れ様だったわね」
「大変ではありましたけど、有意義な経験ができたと思っております」
「「「「ミリアに同じく!」」」」
「そう、良かったわ」
ヒルダさんに労われ、まずはホッとした。
私自身、他国への遠征に行くのは初めてだったけど、今となっては本当に良い経験ができたのは事実であり、ライラ達も同様だ。
今回ギルドに来たのは遠征を終えた報告だけではない。
「ヒルダさん、【ティア―オブテティス】を含めた冒険者達が行方不明になった事件について、詳しくお伺いしたいのですが……」
「そうだったね。まずは……」
私達は遠征へ行っている間にウェシロスで何が起きたかをヒルダさんから聞かされた。
手元には事の経緯がまとめられた資料もあり、それにも目を通した。
「何つう話だよ」
「クジャール伯爵家の当主がヴェヌトイル商会の会長とそんな黒い関係だったなんて……」
「社会の闇って感じだわ……」
「……」
ターニャ、メロ、フォネはクジャール伯爵家やヴェヌトイル商会の実態を知って驚愕している。
私も聞いた時は驚き、いや、戦慄を感じていたくらいだったから。
違法薬物や命を奪うような危険な魔道具の生成、冒険者等を攫っては魔道具を作るための生贄だけで飽き足らず、肉体的に強そうな人間を麻薬成分のある“ニコテク”で操ってはデスゲームをさせてそれを見て楽しむ等、聞いていて気分が悪くなりそうな話でいっぱいだった。
私達がいない時にそんな事件が起きていて、知った時には早く何とかしたい気持ちで先走りかけた事が何度あったのやら。
「それで今回の事件の被害者を出していた【アテナズスピリッツ】の皆様がウェシロスに赴き、成り行きで協力する事になり、ビュレガンセ王国騎士団西方支部の腐敗も解決する事にもなったと……」
「えぇ。実際に私も西方支部の騎士団の対応には若干の不信感はあったからね……」
「言われて思い返せば、確かにウェシロスやその近辺にいる衛兵の騎士達の大多数が真剣にやっているようには見えませんでしたね。数年前、西方支部の騎士団の隊長が変わった辺りから……」
「今回の事件が解決されてから考えてみれば、納得がいくわ……」
ライラやヒルダさんは思った意見を述べている。
騎士団は国や地方の治安を守る事を生業としている組織だ。
ビュレガンセの王都であるファランテスにある騎士団本部を筆頭に、北方・東方・南方・西方支部の騎士団を構えており、ウェシロスは西方支部の騎士団が管轄だ。
だが、西方支部の騎士団の隊長であったノージン・メノオを筆頭にした騎士達はクジャール伯爵家の当主であったポドルゾやヴェヌトイル商会の会長だったゲルグオと癒着しては賄賂と引き換えに不都合な事件や事象を次々と揉み消していた。
そう、西方支部の騎士団は腐敗していたのだった。
実際、【ティア―オブテティス】に所属している冒険者達が行方不明になった時にヒルダさんも捜索願を出して対応をお願いしたものの、動く気配すらなかったと聞かされた。
「流れでトーマさん達と協力できたのは、本当に幸運だったって話なのですね」
「振り返れば、そう思わざるを得ないわ……」
行方不明になった冒険者達の捜索に暗礁に乗り上げていた頃、トーマさん達が協力してくれたお陰で、解決へと繋がるに至った。
ヒルダさんによると、トーマさん達は作戦を一緒に考えてくれただけでなく、ノージン達の制圧にも手を貸してくれたとの事だ。
ビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長であり、腐敗の現状を嘆いていたエルヴォスさんを筆頭にした良識派の騎士達がポドルゾやゲルグオらの逮捕に成功し、事件の解決を終息へと迎えていったのだ。
「騎士団の腐敗が露呈して解決に向かっているのを知ったのは、本当につい最近だっただけに驚きでいっぱいでしたよ」
「それから多方面でてんてこまいになった末に、解決できたって話なのよ……」
「“ゴーレム”の改造手術を施された“メガオーク”が残した爆発をトーマさん達から守ろうとした際、汗が噴き出たような感覚になりましたけどね……」
「「「分かる分かる!」」」
私は当時のトーマ達を守ろうとしていた状況の事を思い出していた。
トーマ達はウェシロスに向かおうとしていた“ゴーレム”の改造手術をされ、強力なモンスターで知られる“メガオーク”を食い止めるために戦っていた事を覚えている。
そこに凄まじい大爆発に巻き込まれかけていたトーマ達を守るため、私とライラとターニャが持てる力で守り、メロによる【付与魔法】でフォローし、フォネが【回復魔法】で手当てをした事で、彼等を守る事ができた。
最終的に悪事を働いたポドルゾ達は王都へと移送され、法の裁きを受ける事になった。
「本当にてんやわんやだったけど、ミリア達が丁度いいタイミングで戻って来てくれて良かったわ。本当にありがとう」
「いえ、そんな。当然の事をしたまでですよ」
「本当に謙虚で飾らない人ね。ミリアは……」
私は改めてヒルダさんにお礼を言われた。
それから少し談笑を交わした後……。
「それはそうとミリア達。遠征から帰って来た後、何か予定や用事は無いのかしら?」
「予定ですか?私はこれと言ってございませんよ。皆は?」
「私もございません」
「アタシもないです」
「私も」
「メロに同じく」
「だそうです」
「そう。それなら渡したい物があるのよ」
私を含めてライラ達の当面の予定が無い事を確認すると、ヒルダさんは懐から便箋のような何かを手に取り、テーブルの上に差し出した。
「これは……。ルゾイエンにあるホテルの宿泊券でしょうか?」
「そうよ。遠征や長旅で疲れているだろうと思って、ミリア達が帰って来たら渡すために用意しといたわ。まぁ、リフレッシュしてきなさいって意味よ」
「よ、よろしいのでしょうか?」
「ご褒美だと思って、思い切り楽しんできなさい!」
「ありがとうございます!では、お言葉に甘えて……」
何と渡されたのはリゾート地で有名なルゾイエンにある宿泊施設に泊まるための優待券であり、貴族や豪商もよく使う事で有名な所だった。
せっかくの機会だからしばらく休暇を満喫する事を決める私達であるのだった。
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