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何でも屋として生きていくアラサーの異世界ライフ ~サブカルチャー大好きな高卒アラサーが異世界に召喚されて現実世界で得た知識と経験をフル活用したら多方面で無双しかけている件~  作者: カワチャン
第三章 大事件の遭遇と偉大な人物達との邂逅

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SS 15話 【エルヴォス視点】騎士として……

先の事件で活躍した騎士がメインのお話です!

私の名前はエルヴォス・ブレドラン。


「帰ったぞ」

「「「「「お疲れ様です!」」」」」

「私がいない間、何か変わった事は無いか?」

「ございません」


ウェシロスにあるビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長を担っている騎士だ。

私は部下数名と共にウェシロスやその周辺の町村の見回りをしてきた。

ビュレガンセには騎士団と言う組織がある。

騎士団は王都ファランテスを中心の拠点とし、ビュレガンセ各所に東方支部、北方支部、南方支部、西方支部の5カ所に、人々が住んでいる街へと騎士が派遣されている。

騎士団の主な役目としては、各支部の管轄にある街やその周辺の町村の治安を維持し、犯罪者の取り締まりを主な生業としている。

民衆が安全に過ごせるように平和を守るのが私達の役目だ。

そんな中、ある仕事にも追われている。


「副隊長。こちらが西方支部の騎士団に異動される候補のリストでございます」

「おぉ、ありがとう」

(補填としては悪くない数だな……。ただ、精査はしていかなければ意味がない)


そう、私が所属している支部の騎士団の人員不足問題だ。

以前は今以上に人数がいたものの、ある事件によって大半の騎士がいなくなった。

その理由は前隊長だったノージン・メノオを初めとする不正や癒着に手を染めていた騎士達を断罪の末に王都ファランテスへ移送・解任されたからだ。

ノージン達は伯爵の爵位を持っていたクジャール家の当主であったポドルゾやヴェヌトイル商会の会長だったゲルグオから賄賂を受け取るのと引き換えに不都合な事件を揉み消すと言う愚行を繰り返し、腐敗していた。

私や私に賛同してくれる部下の騎士達はその膿を除去するため、業務の傍らで密かに行動していたが、ノージンのバックには幅を利かせる貴族や気鋭の商会の会長が付いていたため、思うように行動できなかった。

ウェシロスを拠点としている冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のギルドマスターであるヒルダ殿からも「冒険者数組が行方不明になった」と報せを受けて対処しようとしたが、ノージンによって全て阻まれていた。


「エルヴォス副隊長、お疲れ様です。紅茶をお持ちしました」

「ありがとう。シモーヌ」


書類に目を通していたところに紅茶を差し入れてくれたのはシモーヌ・フィオンであり、私にとって信頼できる部下だ。

私と同じく、騎士団の腐敗を嘆いていた人物の一人でもあり、積極的に協力してくれた。


「副隊長、西方支部の騎士団に異動する事を希望している騎士で目ぼしい方はいらっしゃいましたか?」

「何人かはピックアップしている。ただ、素性や素行について問題がないかも調べておきたいから、確定させるには少しだけ時間はかかるかもしれない」

「そうですか。確かに、今回の事件を繰り返してしまわないためにも、実力以上に騎士としてのプライドを貫ける方が来て欲しいのが本音なんですよね……」

「同感だな」


シモーヌは私に同意してくれた。

彼女はとても真面目であり、騎士としての実力や気概は一目置いている。

加えて仕事もできるため、私も頼りにしている。


「人員は少なくなってしまいましたけど、やっと騎士団らしくなったと思うと、踏ん張って良かったと心から思います」

「そうだな。彼らがいなければ、いや、仮に会えても行動を起こしてくれなければ、今のようにはなっていなかったかもしれないな……」

「彼らって、トーマ殿達の事でしょうか?」

「あぁ」


ノージン達に阻まれ、守るべき民衆のために行動できずに燻ぶっていた私だったが、ある転機が訪れた。

それが冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に所属し、行方不明になった冒険者達を探しに出ていたトーマ殿達だ。

彼等が初めて西方支部の騎士団に来た時、俺は得も知れぬ希望を感じて声を掛けた。

腐敗していた現状を伝えると、トーマ殿は共に解決するための協力関係を結んだ。


「トーマ殿は手を貸してくれただけでなく、知恵やアイデアも授けてくれたからな」

「はい。我々が集めていた情報を活かして立ち回ったお陰で、ノージン達を一網打尽にする事が叶いましたからね」


そして騎士団が腐敗した原因を作ったノージンを始めとする不正や癒着を働いた騎士達を拘束する事に成功し、賄賂を払っていたポドルゾらの悪行を暴く事ができた。

一時はポドルゾの側近のような存在であったマラリナと言う『テイマー』が操る“メガオーク”がウェシロスを襲おうとする事態に見舞われたが、トーマ殿達が最終的に何とかしてくれた。

こうして、私が所属する西方支部の騎士団に蔓延る腐敗は全て消えたのだった。

現時点では西方支部の騎士団の隊長は空席扱いとなっており、副隊長である私が事実上のトップになっている。

隊長の席については、王都から伝令が来る手筈なのだが、今は待つだけだ。


「思い返してみれば、トーマ殿達と出会えたのは幸運……と言うよりも……奇跡と表現しても過言じゃないのかもしれんな」

「そうだと思います」


本当にトーマ殿達と出会えて良かったと今でも私はそう思っている。


「それにしても、ノージンについては本当に残念でならないな」

「と、申しますと……?」


私は騎士を解任・更迭された前隊長だったノージンについて話し始めた。

シモーヌもそれを聞いている。


「ノージンも入団当初は志の高い男だった。実力も高く、小隊を編成した時の立ち回りや指揮力もあったから、周囲に一目置かれていたんだ。ザガール隊長からも将来を期待されていて、共に騎士としての道を歩んでいけると思っていた」


ザガール隊長はノージンの一つ前の騎士団の隊長だったお方だ。

隊長を務めるに相応しい実力と統率力に加え、騎士の鑑と言ってもいい程に人徳や人望に溢れる素晴らしい人物だった。

私やシモーヌだけでなく、ノージンも憧れた。


「だが、ノージンの野心や欲深さを、私やザガール隊長は見抜けなかった。それが腐敗の始まりだったんだと私は思う」

「副隊長……」


しかし、ノージンは道を踏み外した。

ノージンは部下の一人にザガール隊長を毒薬で弱らせ、体調を悪くしたところを事故に見せかけて彼を殺害した。

後釜としてノージンが隊長になり、副隊長には私がなった。

それからは不正や癒着を働く騎士が少しずつ、確実に増えていった。

ポドルゾやその派閥貴族から賄賂を貰うのと引き換えに出まわったら都合の悪い噂や事実を悉く握り潰すようになり、騎士団としてのあるべき姿は形だけとなり、腐敗が進んだ。


「ノージンは隊長になる前の一兵卒からよく働いていた。だが、その分損得勘定な面も目立っていたんだ。成果に見合わない報酬が貰えない事や上手く対処し切れなかった時のバッシングに嫌気を刺していたんだ。『自分はこんなにも頑張っているんだからもっと金や名誉をくれてもいいだろ』って。それでも、ザガール隊長も根気強く騎士とは何なのかを教え続けていたんだが、結局は届かなかった」

「ですが、ザガール隊長は何も悪くありませんよ。悪いのはノージンやそれに賛同していた騎士達ですよ」

「確かにノージン達のした事は絶対に許されないのは事実。だからこそ、今回の事件は決して忘れてはいけないと思っているし、二度と引き起こしてはならないとも思っている」

「副隊長……」


私は今回起きた事件は一生忘れられない、いや、忘れてはいけない要素だと思っている。


「通るかどうかの保証はないが、騎士団の待遇についても提案をしてみるつもりだ。どこまでいけるかは定かではないものの、騎士達の頑張りが反映されるように努力するよ」

「その時は、私も協力する所存です!」

「ありがとうな!」


絶対に上手くやれる保証はないが、それでも私は自分にできる事をやり抜く。

自分が信じて疑わない事をやり切る事も、騎士としてのあるべき姿だと私は思うからだ。


「では、私はこれで失礼します」

「あぁ、お疲れ」


シモーヌは部屋を出ていき、俺一人が残った。

それから片付けるべき雑務を終えた。


「ふぅ。帰るか」


私は今日やるべき仕事を全て片付け、帰路に着いた。


(ザガール隊長。あなたが大切にしてきたこの騎士団……。必ず立て直します。だからどうか、見守っていて下さい。そして、あなたのような騎士になってみせます)


夜を照らす月を見上げながら誓う私であった。

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