第189話 【ミレイユ視点】大切な存在
ミレイユ目線でのお話です!
私達は王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部へと向かう事になり、その代表であるゼラカール・フォートレイン総帥と邂逅した。
要件を済ませた私達はファランテスにいる。
「あ!このワンピース可愛い!」
「このシャツもシンプルですけど、上質な素材で作られていますね」
私は今、セリカやエレーナと一緒に王都の城下町でお買い物をしている。
普段は拠点にしているティリルでも衣食住揃ったお店もあるけど、やはり王都なだけあって、その種類は数倍にも及び中々大きな建物で商売をしているお店も多い。
今まで色んな街を巡った事はあっても、こうして王都の町を見てみると、比べるのも失礼かもしれないくらいに規模も賑やかさも別格だと思わせる。
不動産についてはまだ理解できていないけど、王都の住宅街に住もうとしたら月々いくらかかるのかってつい考えてしまう。
生まれが生まれなだけに……。
「セリカさん、ミレイユさん。あのカフェでお茶しませんか?」
「そうね。あちこち見て回ったから少し疲れたし、休憩しよう」
「賛成!」
エレーナが見つけたオシャレで雰囲気の良さそうなカフェで少し休憩を取る事になった。
入ってみると、白とベージュを基調にしたようなシンプルでいつつも洗練されたような空間が広がっており、清潔感に溢れている。
雰囲気だけで満足できそうなくらいだ。
私達は席についてすぐにお店のオススメと言われているホットケーキセットを注文した。
「それにしても、大きくて賑やかで楽しそうなところが一杯あるよね~。ファランテスって」
「国の中心と言われている王都だからね」
「貴族や豪商と言った富裕層も多く居住しておりますから……」
「それもそうね」
セリカやエレーナと話している内に注文していた料理が届いた。
「「「美味しそう!」」」
届いたホットケーキは絶妙な焼き加減でふんわりしており、フォークで軽く当ててもポヨンと跳ね返りそうなくらいの弾力だった。
クリームやフルーツの乗せ方も芸術品みたいに綺麗であり、食べるのが少し勿体ない気持ちもあったが、せっかく注文した以上はいただくことにする。
「「「ん~!美味しい!」」」
いざ実食してみると、やっぱり美味しかった。
先ほども評判になっている露店のクレープ屋さんで買い食いしたけど、甘い物はついつい食べてしまいたくなっちゃう。
「ねえねえ。このケーキとかも美味しそう!頼んじゃう?」
「いいですね。シェアしましょう!」
「これも美味しそうね!」
料理が美味しいと会話にも花が咲いてくる。
王都の城下町については当然だが、最近の事についても上がってきた。
「ミレイユさん。やっと本来の自分を取り戻してきましたね」
「え?」
「最近の……ウェシロスで起きた事件の頃からミレイユさん、どこか沈んでいたような気がしたんですけど、明るさが戻ってきたなって……」
「……」
美味しいケーキや紅茶を堪能していると、エレーナが不意に言葉を発した。
セリカも思い当たる節があるような仕草をしている。
「まぁ、行方不明になった冒険者達を探している道中でミレイユのご両親とバッタリ再会するとは思いもよらなかっただけにね。あの時のミレイユったら……」
「ちょっ。その……。あの節は……」
そう、先日まで私達は行方不明になった【アテナズスピリッツ】に所属する冒険者達の捜索をしていたのだ。
同じギルドに所属しているBランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共にウェシロスと言う街へ赴いた際、私を置いて蒸発した両親と偶然再会した。
突然私を置いていなくなった両親に対し、言い分も聞かずにこれでもかってくらいに罵詈雑言を浴びせた。
後から知った事だが、両親はウェシロスを拠点とし、勢いよく勢力を拡大していたヴェヌトイル商会の御者として雇われていたが、安い給与でかなりの重労働を強いられていた。
それからヴェヌトイル商会は黒い取引をしていた事を、私達に協力してくれたビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長を担っているエルヴォスさん達によって暴かれ、組織は壊滅へと追いやられた。
必然的に両親は酷な職場環境から解放されたものの、重要参考人として現在も王都で拘留されている。
少なからず事件の解決に貢献してくれたのもあって、前科は付かないと思うけど、会えない状況は続いている。
それでも、本当に罪を償い、前を向いて生きようとする想いを感じ取れたその時は、笑顔で迎えたいと思っている。
「両親が突然いなくなって、寂しくて辛かった時期もあったよ。でも、私利私欲でやった事じゃないって分かったら、その……。やっぱり、憎み切れないなって……」
「ミレイユ……」
「過去の辛い思い出ってさ、似たような場面に出くわしてはフラッシュバックしそうになると思うのよ。もしも私が本当に一人だったら、今頃耐えられないでどうなっていたか、どうしていたかも分からなかった」
「ミレイユさん……」
私の胸中を話すと、セリカとエレーナは物憂げな表情をしている。
「冒険者になっても辛い時期は確かにあった。でも、トーマさんやセリカ、クルスやエレーナと出会えたから私を取り戻す事ができたとも思っている」
私は『魔術師』のギフトを授かって冒険者になって数年間、心から信じてもいい仲間に出会えなかった。
トーマさん達と出会う前にいたパーティーでは囮役や尖兵的な扱い、雑務を押し付けられたりで酷な扱いを受けていた。
ある時、遺跡の調査をするクエストを受けた際、当時の私では手に負えなかったレア度Dのモンスターである“オーガナイト”と出くわした。
その時、私はその時の仲間達によって置き去りにされて死にそうになった。
命辛々で逃げ回る中、当時は二人だけのパーティーだったトーマさんやセリカと出会った。
迷う事無く助けてくれて、一緒に戦って危機を乗り越えて生き延びて、私を見捨てた元メンバー達を糾弾してくれた。
そして、私を信じてパーティーに誘ってくれた……大切な人達。
私はようやく、心から信じていい仲間に出会えた。
それからはクルスとエレーナも仲間になって、それからは大変な時は何度あっても、辛いとは思わなかった。
信じてもいい仲間と共に冒険していく事の素晴らしさを知ったから……。
「だから……。ありがとうね……」
「「!?」」
私は思わず、感謝の言葉を伝えていた。
皆がいなかったら、今の私はいないのだから……。
「何言ってるのよ。私達は同じパーティーの仲間でしょ!今も……これからも……」
「わたくしだってミレイユさんには助けられていますよ。こちらもありがとうございます」
「セリカ……。エレーナ……」
セリカとエレーナは暖かい言葉を掛けてくれて、私は泣きそうになった。
トーマさんは私の命と人生の恩人で、クルスは同じ境遇をした心から信じ合える大切な仲間。
それでもって、セリカとエレーナは……私の親友だ。
辛い気持ちも、悲しい気持ちも、嬉しい気持ちも、楽しい気持ちも、弱いところも……素直に曝け出してしまっても受け止めてくれる。
私は【トラストフォース】の皆が大好き。
かけがえのない人達を守るために、もっと強く立派になっていきたいと心から思う。
「よし!湿っぽい話はこれくらいにして、もうちょっとお店とか見て回ろうよ!」
「それもそうね!私も気になるお店もあったし!」
「夕暮れまでもう少し時間がありますし、行ってみましょう!」
私達は気持ちを切り替えて美味しいスイーツを堪能して、気に入った服を買って、観光名所を巡って、王都で過ごす時間を思う存分に楽しんだ。
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