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第186話 王都ファランテスへ!

ある目的のために王都へ行きます!

俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に

事件を解決し、ティリルへと戻ってきた。



「トーマさん。見えてきましたよ」

「ん?」

「あれですよ」


一台の馬車に揺られながら、俺達はある場所へと赴いている。

俺はセリカに促されて外の景色を覗いてみた。


「凄い……。これが王都ファランテスか……?」

「デカい……」

「生まれて初めて王都に来ましたよ!」

「わたくしは数度ですが」


俺達はビュレガンセの王都ファランテスにやってきている。

検問を終えて城門を潜って目に飛び込んできたのは、広大な石畳の大通りであり、王城へと続くメインストリートとなっている。

その両脇には様々な種類の商店や屋台が軒を連ねて賑わいを見せており、商人たちの呼び声や買い物を楽しむ人々の笑い声が響き渡り、あたかも街全体が生きているかのような活気に満ち溢れている。

俺達が拠点にしているティリルも十分活気のある街だが、一番の違いはその規模の大きさだ。

ハッキリ言って、ティリルが、いや、今まで訪れた街々が矮小に思えてきそうなくらいにお店や住居、住んでいる民衆の数が半端ではないのだ。

加えて王都なだけあって、行政や司法を含めた政治機関や商会を束ねる経済機関、高位貴族が所有するカントリーハウスやタウンハウスが連なる貴族街等、正にビュレガンセの中心地である。

俺達はある目的のためにそのファランテスに赴いた。


「えっと……」

「トーマさん、あれみたいです」


門を抜けて少しした後、乗り継ぎの馬車ターミナルに辿り着き、別の馬車に乗り換えて再び出発する。

それから馬車に揺られる事30分ほどが経った。


「お客様、着きましたよ」

「ありがとうございます」


御者さんに到着を伝えられて馬車から降りると、一つの石造りの建物があり、その高さは結構なモノだった。


「これまた……」

「何か緊張してきました……」

「ここが……ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部……」


そう、ビュレガンセの王都ファランテスに拠点を置いている、ビュレガンセ冒険者連盟本部だ。

ビュレガンセ各地にある冒険者ギルドの統制及び管理をしており、各ギルドの協力クエストの仲介や記録、実績の保管等も担っており、他国のギルドとの折衝や渉外、各ギルドのトップであるギルドマスターを誰にするかを決める決定権も持っている。

ビュレガンセで活動している冒険者にとっては冒険やクエストの全てが詰まっていると言って言い場所であり、冒険者を名乗るならば決して無視できない機関である。


「ロビー広ッ!」

「流石はビュレガンセにある冒険者ギルドの総本山なだけありますね」


足を踏み入れたロビーには洗練さと綺麗さが混じったような広い空間だった。

連盟本部の職員だけでなく、冒険者達も大勢いる。

中には人間に見えない異種族と思しき冒険者らしき人物もチラホラ散見される。

緊張感を覚えつつも、俺達は受付を担当している女性職員の前に立った。


「ようこそお越し下さいました。今回はどのようなご用件でございますでしょうか?」

「我々はティリルを拠点にしている冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】に所属している者です。こちらの招待状を下にビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部へとお伺いした次第です」

「拝見させていただきます。ステータスプレートもご提示いただけますでしょうか?」


俺達は招待状と全員分のステータスプレートを手渡した。

受付の女性職員はそれらを手に取ると、テキパキと処理している。

この手際の良さ、ナミネさんを思わせるな……。


「お待たせしました。ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部総帥とのお約束がある事を確認できました」

「ありがとうございます」


俺達は対応してくれた女性職員にお礼を述べ、お辞儀をした。

それからすぐに案内してもらえる事になり、何と会える事になった。

待たされる事を覚悟していただけに、嬉しい誤算だ。

別の職員に付いて行く形で俺達は廊下を歩いていく。


(うわあ、絨毯がふかふかじゃねぇか)

(平の職員だと思うけど、立ち振る舞いが洗練されてますわね……)

(ウチのギルドの職員より明らかに……)


案内されている中、俺達は擦れ違う冒険者ギルド連盟本部の職員達の振る舞いを見て驚くばかりだった。

歩く姿、お辞儀の角度、隙を見せようとしない立ち振る舞いから、各所にある冒険者ギルドの職員とはクオリティが断然違っていた。

ナミネさん達は真面目さの中に気さくさや社交性も感じさせたが、王都にある冒険者ギルド連盟本部の職員は立ち振る舞い一つ取っても貴族の従者を彷彿とさせるようだ。

数分歩き、俺達は一つの扉の前に立ち、開けてもらえた。


「総帥をお呼びいたしますので、お掛けになってお待ちください」

「ありがとうございます」


通された部屋の一室の中は、長机一つと椅子が10脚置かれたシンプルな会議室のような場所であり、俺達は座って待機する事となった。

派手な装飾こそないものの、扱っている家具は高級品だとエレーナは言っていた。

職員に紅茶やお茶菓子を用意されたが、緊張で口が渇く余り、お菓子には手が付かず、紅茶は数分で空になりかけるくらいまで飲んだ。

それからしばらくして、ノックの音が鳴った。


「お待たせしました。総帥をお連れしました」

「ハ、ハイ!」


扉越しから職員が総帥を連れて来た事を聞かされると、俺達はその場で起立した。

礼儀正しく出迎える姿勢を見せるのは最低限の義理立てと思っている。

そして扉が開いた。


「「「「「……」」」」」


白髪のオールバックに、柔らかさの中に大貴族の当主とも遜色ないような威厳を纏い、貴族服をベースにしたように仕立てられた絢爛さを感じさせる服装に身を包んでいる初老の男性が杖を付きながら部屋へと入って来た。

俺達は息を呑みながらその人物を見ている。


「初めましてだな。私はビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部の総帥を務めているゼラカール・フォートレインと申す。此度は王都ファランテスまではるばる来てくれて感謝している。そう固くならなくてもよい。座りなさい」

「は、はい……」

(あれがビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部の総帥。ゼラカール・フォートレイン)

(今でこそ総帥の座にいるものの、昔は超一流の冒険者として世界に名を轟かせたと聞いているけど、威厳が見え隠れしてならないわ……)

(向かい合うだけでもプレッシャーを感じる……)


総帥は自己紹介の後、穏やかな振る舞いで俺達に席へ着くように促した。

それからゼラカール総帥が口を開く。


「まずは此度のクジャール伯爵家の当主やその派閥貴族とビュレガンセ王国騎士団西方支部の癒着や不正に関わっていた者達、ヴェヌトイル商会の会長が密かに行っていた危険な魔道具やアイテム開発の摘発に関して、大いに協力してくれた事、誠に大義であった。ビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部の総帥として感謝の意を表する」

「お、恐れ入ります……」


ゼラカール総帥はウェシロスで起きた事件の事を把握しているようであり、噓偽り一つない澄んだ瞳で謝意を表してくれた。


「クジャール伯爵家やヴェヌトイル商会が起こした事件は多くの冒険者達に看過できない被害をもたらしてしまったと存じ上げておる。そなたらの働きが無ければ今頃どうなっていたか……」

「そ、そんな滅相もございません。【アテナズスピリッツ】や【ティア―オブテティス】に所属している冒険者の皆様や西方支部の騎士団に所属している副隊長であるエルヴォスさん達の助力で解決する事が叶いました。我々だけではとても……」

「随分と謙虚な男だな。クジャール伯爵家に仕えていた女の『テイマー』が秘密裏に作り調教していた“ゴーレム”の改造を施した強力なモンスターをそなたらが倒したと言う情報も既に認知しておるのだ。そして、トーマかね?そなたがトドメを刺した事もな……」

「は、はぁ……」

(あの大爆発から守ってくれたのは【ティア―オブテティス】のAランクパーティー【ヴァルキリアス】のミリアさん達のお陰なんだけどな……)


俺はゼラカール総帥から感謝の言葉を伝えられながら謙遜した。

実際にあの事件はどこかでミスをするか、何かを見落としてしまっていたかがあったら、解決できたかも分からなかった。

その上、西方支部の騎士団にも反旗を翻すような行いをすると言うハイリスクな作戦にまで打って出たのだから、失敗していたらと思うとゾッとする。

それらも全て、仲間達や協力してくれた人達がいてくれたからだ。


「まぁ、こうして感謝の気持ちを伝えたい事は伝えられたと思っている。他にも協力して下さった【アテナズスピリッツ】や【ティア―オブテティス】の冒険者の皆様にも謝意を伝えたくも思っているからな」


発言や態度から見て、ゼラカール総帥の誠実さや気概を感じられた。

これがビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部の総帥であり、ビュレガンセで活動する冒険者にとっての総本山のトップであると再認識させてくれる。


「さて、事件の解決についてのお礼の言葉はここまでにして、【アテナズスピリッツ】の冒険者パーティー【トラストフォース】の5名を呼んだのにはもう一つ理由があってな……」

「もう一つの理由……でしょうか?」

「あぁ。今から用意する」


そう言ったゼラカール総帥は秘書らしき人物に無言のジェスチャーを送ると、見るからに頑丈そうな素材でできた一つの長方形のケースがテーブルの上に置かれた。

次いで、そのケースが開けられると……。


「それに見覚えはあるな?」

「!?」


その中にある物を見た時、俺は目を見開いた。

忘れる筈がない、見間違える筈がない、あれを……。


「これは……?」

「解析や鑑定、多数の古い文献を用いた精査は随分と前に終わっていた。だが、先の事件の解決に乗り出した直後でそなたらがウェシロスに出向いたため、渡すのが遅れてしまったがね……」


それは他でもない、ベカトルブ近辺で発見されたダンジョンの最奥で見つけて持って帰って来た例のアイテムだった。


「そのアイテムの名前や詳細が分かった……」

「それは……一体……?」


数刻の沈黙を破り、ゼラカール総帥は口を開いた。



「それは別名『全能を体現せし無冠の宝具』と呼ばれた伝説の魔道具の一つ……“ヴァラミティーム”だ」


「「「「「“ヴァラミティーム“!?」」」」」


謎に満ちていたあの魔道具の名前が遂に明らかになった瞬間だった。

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