第185話 帰還と水面下の野望
久々に帰って来ました!
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
俺達はセリカ達や出会った仲間達と共に事件を解決するに至った。
「久々のティリルだーー!」
「何か懐かしい!」
ウェシロスに滞在してからしばらくぶりのティリルへと戻ってきた。
距離はそうだが、ウェシロスで様々な事柄が重なりに重なって、半月以上も離れていただけに懐かしさを少しばかり感じている。
そんな気持ちを抱きながら、俺達は所属している冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】へと向かった。
「ただいま戻りました!」
「おぉお!トーマ達じゃねぇか!」
「お帰り!」
「ウェシロスの件はマジでお手柄だぜ!」
「お疲れさんだな!」
予定していた以上にギルドを空けていたのもあってか、冒険者達も安堵と嬉しさが混じったような空気で俺達の帰還を喜んでいた。
そこそこ手厚くも暖かい出迎えを受けた後、受付へと向かって完了報告を行った。
「この度はお疲れ様でした。協力を申し出た冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のギルドマスターであるヒルダさんから事の経緯や結果は存じております」
「ナミネさん、ありがとうございます」
馴染みの受付嬢であるナミネさんと久々のやり取りになったけど、一種の懐かしさを抱かせてくれる。
俺達はナミネさんから「もしも今、時間があればカルヴァリオさんの下に行って欲しい」と言われ、その言葉のままに執務室へと向かった。
「やぁ。今回の仕事は本当にお疲れ様だったね」
「はい。どうにかこなして帰って来ました」
俺達が入ると、カルヴァリオさんは気さくな笑顔をしながら迎えてくれた。
それから少しして、スムーズに話し合える機会が設けられた。
俺は事の一部始終を伝えた。
「なるほど。ウィーネス達はギンゼル達の回復を待ち、付き添う形で戻って来ると……」
「はい。我々は完了と経緯の報告をするため、先んじて戻ってきた次第です」
「何にせよ、ギンゼル達が生きている事が分かり、君達がこうしてギルドへと帰ってきたんだ。それは喜ばしい事だよ。それで一つ、私から君達に話、いや、正確にはある組織から招待状が届いたんだ。見て欲しい」
「招待状……ですか?」
カルヴァリオさんは机の引き出しから一通の封筒を取り出し、俺達に差し出す。
俺はその封を開き、入っている便箋を取って広げた。
「え?これって……?」
「届いてすぐに渡すつもりだったんだが、君達がウェシロスに出向いた直後でこれが届いたからね。結果的に渡すのが遅れてしまったんだ」
「は、はぁあ……。その、書かれているこちらは……?」
「手紙に書いてある通りだ……」
そして俺達は伝えられた。
「トーマ達には、王都ファランテスにあるビュレガンセ冒険者ギルド連盟本部に赴いて欲しい」
「「「「「!!」」」」」
ビュレガンセに点在する冒険者ギルドの総本山へ出向かうと言う指示を……。
◆とある場所—————————
「そう。“ゴーレム”の改造手術を施したモンスターの実験は芳しかったと……」
「はい。ヴェヌトイル商会を利用して『テイマー』のギフト持ちを遺憾なく活かすための魔道具及びその製造工程も入手し、“ゴーレム”モンスターの軍団を作る礎は万全になりつつございます。世界中から『テイマー』を集め、盤石な体制を整えていく所存です」
その部屋は壁に付けられた蝋燭から灯る微かな火がぼんやりと照らし、何とか物が見えるくらいの明るさに包まれた、暗く不気味な空間に一人の女性がいる。
女性は片膝を付きながら事の説明を行っていた。
「それにしても、裏で黒い噂が絶えなかった事で有名なクジャール伯爵家に取り入り従者を装いながら実験とは、いつもは影に隠れて暗躍するあなたにしては大胆な事をするわね」
「確かにリスクのある行動だったと思っておりましたが、成果や得る物もございました。今回の結果を基に、計画を進めていきます。同士である『錬金術師』と共に……」
「ふふ、お願いね……。マラリナ……」
組織のトップらしき人物を前にかしずいているのは、ウェシロスで起きた冒険者達が行方不明になった事件を裏で引いていた一角であるマラリナだった。
そして、彼女の前には薄いカーテンが張られ、その先にいるのは……。
「私の野望が少しずつ現実になっていく……。理想の世界が作られるのも、遠い未来ではないわね……」
黒を基調にしたチューブトップ状のドレスに身を包み、粉雪のような白い肌に緋色の瞳をしており、深淵を連想させるような濃い黒髪に紫が混じった腰より伸びたロングヘアーと暗い世界に引き込むような得体の知れない雰囲気を感じさせるような現実離れした妖しい美貌をした女性。
かつて俺達を脅かした闇ギルドのトップだった、そして、今回の事件を引き起こすよう、仲間であるマラリナに嗾けた張本人……。
「楽しみだわ……」
バスディナ・ドゥルーズ、その人だ。
そして、バスディナが企てる野望の礎となる計画は、先のイントミスやウェシロスで起きた事件の他にもまだ控えている事を、この時の俺達は知る由も無かった。
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