第180話 事件のその後【後編】
179話の続きです!
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
事件は終息へと向かっていき、【ティア―オブテティス】に所属するAランク冒険者のミリアさんから話を聞いている。
「ジゲラさん達が冒険者に復帰するのが困難。と言いますと……?」
「他言無用にしない事を前提にして欲しいんですけど……」
「はい。もちろん」
「実は……」
ジゲラさん達と同じギルドに所属するミリアさんは語り出した。
結論から言うと、ジゲラは冒険者ギルド【ティア―オブテティス】を除名され、罪人として王都に移送されてしまったとの事だ。
ジゲラは危険な魔道具を使用した末、セリカ達を結果的に危険な目に遭わせた事が大きな決め手となってしまった。
他にも、クジャール伯爵家やその派閥貴族と関わる機会がそれなりに多かった事、使用するだけで犯罪になる魔道具を横流しされる形で受け取っていた事、陰で後輩の冒険者を相手に横暴な振る舞いをしていた事等、素行の悪さが明るみに出た。
【ティア―オブテティス】の冒険者達が行方不明になった時も、彼等の捜索をそっちのけにしていた事もあったため、ギルド内の評判も芳しくなかったのも要因とされた。
結果、ジゲラは少なくとも10年くらいは囚人奴隷として鉱山で強制労働させられる末路を辿る事になった。
ジゲラの仲間であるイミニとアコナの両名は彼と同じように調子に乗る事はあれども、程度はそれよりもマシであった。
加えて、ジゲラが危険な魔道具を使用する際、両名が渡された魔道具は何と、自分の魔力や生命力と引き換えに対象の相手をパワーアップさせる代物であった事が判明した。
騎士団の捜索でイミニとアコナはクジャール伯爵家の屋敷にて、かなり弱っている状態で発見され、治療を受けた後に入院となった。
同時に二人も被害者であるため、ジゲラのように冒険者人生が終わるほどの罰は受けないものの、当面は肩身の狭い思いをする可能性が高いとミリアさんは言っていた。
「それから、マーカスについてなんだけど……」
「はい。確か、彼は良い方だとは存じ上げています」
「そうね。彼について話す前に知って欲しい事があって、これも周囲には極力伝え過ぎないで欲しいです」
「分かりました」
「マーカスは……」
ミリアさんがマーカスさんについて打ち明ける。
「えぇえ!?マーカスさんって、ゲルグオの親戚だったんですか?」
「初耳です」
「同じく!」
マーカスさんはヴェヌトイル商会の会長だったゲルグオの近い親戚である事を知った。
ミリアさん曰く、マーカスさんは幼い頃からゲルグオや血の繋がりがない兄であるギゼオロに冷遇され、彼が冒険者になった後も武具を与えられては広告塔のような役回りをさせられていた事も明かされた。
ジゲラのパーティーに入った後、最初は上手くやれていたものの、マーカスさんがヴェヌトイル商会の会長の親族と知ったジゲラから質の良い武具やアイテムを安く売るようにせがまれたりと、いいように利用される事が増えたと教えられた。
ヴェヌトイル商会が持つ商隊の馬車がならず者に襲われていたところにジゲラ達が助けた事がきっかけだった。
要するに、「自分は命の恩人なんだから言う事を聞け」と恩着せがましい理論を押し付けてはおこぼれをかすめ取り続けていたって意味だ。
その事実を知ると、ジゲラの悪い人間性がドンドン前面に出ているなと感じられた。
「私が言うのもあれですけど、ジゲラは才能や向上心がある冒険者だって思っていました。生い立ちが壮絶だった事も知っていて、同じギフトを持つ者として、彼の上に昇っていこうとする気概は買っていましたし、私を超えるつもりで努力して欲しいと願っていただけにショックを覚えてしまったんですけどね……」
「ミリアさん……」
「私達【ヴァルキリアス】がギルドを空けている間にあんな事になっていたなんて……」
ミリアさんは儚げな表情を浮かべていた。
同じ『軽戦士』のギフトを持つ者同士で親近感を覚え、ミリアさんも目に掛けていた時期があっただけに、どこか空しそうな様子だった。
期待していた人物が突然いなくなる寂しさを覚えるのは、当然とも言える。
「やっぱり……。マーカスさんも何かしらの処罰が……」
「それがですね。今回の事件が解決したのも、皆さんが無事だったのも、マーカスのお陰なんですよ」
「「「「「え?」」」」」
俺はマーカスさんの事を案じる中、ミリアさんは事実を伝えた。
主犯格のポドルゾやゲルグオ、その息子であるギゼオロが屋敷内で拘束されていたと聞かされていたが、それをしたのはマーカスさんだったのだ。
それだけでなく、セリカとウィーネスさんを守ったのも、“ゴーレム”の改造を施された“メガオーク”を倒した後の爆発から彼女達を庇ったのもマーカスさんだったと知った時には驚きを隠せなかった。
それからマーカスさんは騎士団にポドルゾ達の身柄や悪事の証拠を引き渡し、関係者として、現在は王都にある騎士団本部にて事情聴取を受けている状況だ。
全てではなくとも、どうしてそんな事をしたのかは何となく分かる。
「自責の念……と言うモノですかね?」
「恐らくそうだと思われます……」
「でも、王都に移送されたって事は、マーカスさんにも何かしらのペナルティが……」
俺達がマーカスさんの今後を心配していると、ミリアさんがそれについての説明をした。
「事件の解決に貢献してくれた功績やウィーネスさん達を助けてくれた事実もあるので、絶対とは言い切れませんが、何かしらの恩赦は受けると思われます。なので、ギルドを除名されて冒険者を続けられなくなる懸念はないですよ」
「そうですか。それは良かったですね」
「ただ……」
「何か?」
「今回の事件でマーカスがヴェヌトイル商会の会長の親類である事が世に知られる事になってしまいました。今となってはヴェヌトイル商会と言う組織は地に落ちたも同然です。会長であるゲルグオやその実子であるギゼオロは当然ですが、血は繋がっていないとは言え、親類であるマーカスもその加害者家族として見られる懸念は大いにあります。遠い田舎町や他国ならばともかく、ヴェヌトイル商会の本部があったウェシロスに居座り続ければ、マーカスは白い目で見られてしまう可能性が大きいのです。私達もギルドを上げてそのヘイトを減らせるように努めていく所存ですが、それも解決には相当な時間を要するかと……」
「「「「「……」」」」」
そう見解を示すミリアさんの表情は複雑であり、俺達も同様だ。
マーカスさんが冒険者を続けられる事には安堵したものの、ヴェヌトイル商会の黒い噂や事実が世間に出てしまい、彼がその会長と親戚関係である事まで知れ渡ってしまった。
ヴェヌトイル商会が解散しても、忌まわしい事件を無かった事にするのは誰にもできない。
ミリアさんはマーカスさんの今後についても配慮している。
「それでも、その先をどうするかはマーカスさん次第って事ですよね?」
「はい。私達としては【ティア―オブテティス】に残って頑張って欲しいところなんですけど、最終的にどうしていくかはマーカスに任せようと思っています」
「あ。もう一つ気になった事がありまして、事件に関係しない事ではあるのですが……」
「何でしょうか?」
話し終えたミリアさんに対し、俺は好奇心本位で聞いてみたい質問をした。
「【ティア―オブテティス】の冒険者から伺ったのですが、ミリアさんのご家族や親戚に王国の騎士団に所属していると言うのは本当なのでしょうか?」
「え?」
その質問に対し、ミリアさんは……。
「ハイ!いますよ!正確には知り合いなんですけどね!」
「そうなんだ……」
(知り合いではあるんだ)
どうやら本当のようだ。
知り合いとは言え、王都ファランテスの騎士団本部に伝手があるのには驚いたが、ミリアさんの働きかけのお陰で今回の事件は解決したと言ってよい。
【ティア―オブテティス】のギルドマスターであるヒルダさんはビュレガンセ王国騎士団西方支部が腐敗していると知った際、遠征帰りの際に王都へ立ち寄っていたミリアさん達に事情を伝え、彼女を通じて協力を呼び掛けた。
俺達が調査した証拠の一部をミリアさんに渡し、それを騎士団本部に共有した事によって、ウェシロスへ赴くきっかけを作ってくれた。
助けてくれた事と言い、本当に感謝しかない。
それから少しだけ談笑して……。
「私からは以上です。回復して復帰する事を祈っています」
「ありがとうございます」
そう言ってミリアさんは病室を去って行った。
それから程なくして、セリカ達が入って来て、皆で無事を喜び合った。
最後までお読みいただきありがとうございます。
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】をタップして頂ければ幸いです。
『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、コメントやレビューを頂ければ幸いです。
面白いエピソードを投稿できるように頑張っていきます!




