第178話 決着からの……
トーマ達の勝利!
しかし……。
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
事件に関わっている『テイマー』であるマラリナが従える“ゴーレム”の改造を施された“メガオーク”との戦いに決着が着いた。
「はぁ……はぁ……」
(勝った……)
「か……は……」
俺は最後の力を振り絞り、ユニークスキル【ソードオブハート】と突如として目覚めた【土炎風水魔法LV.1】を活かした一撃により、“ゴーレム”の改造を施された“メガオーク”を打ち倒して見せた。
しかし、【ソードオブハート】の影響で、俺に強烈な疲労感を襲って身体は倒れかけた。
「トーマ!」
「バダック……さん……」
「大丈夫か?」
「は、はい……」
膝から崩れかけた俺はバダックさんによって支えられた。
バダックさんもボロボロではあるが、命に別状はないみたいでホッとした。
「バダックさんこそ、かなりの手負いじゃないですか……」
「心配するな。こんなガタイしてんだ。これくらいじゃくたばらねぇよ!」
「流石ですね……」
(ギフトの恩恵である事を加味しても、まさか四属性の魔法を操って見せた上に、あれほどの力を放つとは……)
俺の身体を支えてくれるバダックさんは戦うのはともかく、覚束ない程度で歩くぐらいでいる辺り、流石は『重戦士』のギフトを持つだけある冒険者と感じさせてくれる。
「何とか……勝てましたね……」
「えぇ。“ゴーレム”の話は聞いた事はあるけど、いざ戦うとなれば厄介極まりない相手だったわ……」
魔法で攻撃や防御を担っていたミレイユとリエナさんも疲労困憊だ。
“メガオーク”の強烈な攻撃から俺達を守り、援護をし続けていたのだから当然だ。
そんな二人をエレーナとトクサさんが【回復魔法】で治している。
(トーマさんのユニークスキルである【ソードオブハート】……。以前までとは違っていた。何だろう?ギフトの恩恵なのかな……?)
(冒険者ランクAの『魔術師』でも、【土魔法】・【炎魔法】・【風魔法】・【水魔法】の4種類を操れるのは極僅か。それをトーマが……)
ミレイユとリエナさんは俺がやってのけた結果を思い返し、驚異を覚えているような表情をしていた。
とは言っても、魔法による中遠距離攻撃の勝負になったら、正直、勝てる自身はない。
「おーい!お前ら―!」
「バダック!」
俺はバダックさんに支えられながらミレイユ達の下へ合流しようとしていた。
その時だった。
「「!?」」
(何だ?背後から魔力が突然膨れ上がって……)
俺とバダックさんは嫌な予感がして背後を振り向いた。
すると、“ゴーレム”の残骸の一部から凄まじい魔力の増加を示す光が点滅している。
一秒毎にその点滅の間隔が少しずつ早まっていった。
同時に光の輝きも強くなっている。
俺は直感してしまった。
(まさか?時限爆弾?)
(これは。マズい!)
「お前ら!逃げ……。グッ!」
(そんな……ここまで来て……)
俺達はそれが強力な時限爆弾だと悟り、ここら一帯が吹き飛ぶと総毛立った。
バダックさんは皆に向かって叫ぶが、ダメージのせいか、満足にそれができていない。
俺も疲労がピークに達しているせいで動く事も難しかった。
そして……。
ドーーーーーーーーーーン!
“ゴーレム”の残骸を中心に強烈極まりない爆発が起こり、その爆風と熱波が俺達を包み込んだ。
まさに最終兵器と言っても文句の付けようのない威力であり、凄まじい地鳴りがウェシロスにまで届いた。
「凄い威力の爆発ね……。“ゴーレム”の改造手術を“メガオーク”に施す際、モンスターが倒されてから起動する時限爆弾なんて物を付けさせてみたけど……。どうやら単騎で特攻させるのに向いているそうね……」
遠く離れた丘でその様相を見守っているのは、『テイマー』のギフトを持ち、今回の事件における首謀者であるポドルゾの側近的存在であったマラリナだ。
爆発に影響のない距離にいるため、何もないものの、まるで評論家のように改造を施したモンスターについて評価していた。
「まぁ、 “ゴーレム”とモンスターの改造手術についてはそれなりにデータも得られたし、もっと強力なモンスターをテイムするための魔道具の開発についても新しい発見もあったし、成果としては充分ってところね……」
マラリナは不敵な笑みを浮かべながらウェシロスに背を向けている。
「ふふふ……。あの方もきっとお喜びになる事でしょうね……」
そう一言呟くと、マラリナは一人、暗闇が包む森の中へと消えていった。
————————
◆
「うぅ……。あぁ……」
(ここは……。何だ?天井だ……。まさか、治療院か……?)
バダックさんはすっと目を開けると、白い天井が目に飛び込み、ベッドで寝ている状況からして自分は治療院に運び込まれた事を理解した。
その身体にはあちこちに包帯が巻かれ、頬には湿布が貼られている。
かなり怪我したけど、とりあえず命だけは助かった事実を受け入れた。
「バダックさん……」
「トーマ……」
バダックさんの隣のベッドには俺がいた。
俺も【ソードオブハート】を使用した反動でしばらく意識を失っていたものの、想像以上に早く回復していた。
「バダック。起きたのか?良かった!」
「意識を取り戻して何よりですよ……」
「モレラ、トクサ。無事だったのか?」
「あぁ。何とかな……」
「トーマさんは一日ほど、バダックさんは二日も意識を失っていたんですよ」
「そうか……。そんなにか……」
そこには同じ病室にいるモレラさんとトクサさんもおり、身体の一部に包帯は巻かれているものの、元気そうにしている。
クルスからも意識不明が続いていた事を聞かされたバダックさんも少し儚げな表情をしている。
「あ、そうだ!ウィーネスとリエナは?セリカやミレイユ、エレーナも……」
「それなら心配いりませんよ」
「「「「「!?」」」」」
ウィーネスさん達の安否が急に心配になったバダックさんが若干焦り始めた時、病室の入り口から女性の声が聞こえ、俺達はその方角に顔を向ける。
「冒険者ギルド【アテナズスピリッツ】の冒険者の皆様は全員無事ですよ。今は別室で療養しており、意識もハッキリしてますよ」
「あ、あなたは?」
(誰だろう?綺麗な人……)
腰まで届く長さの輝くような金髪に翡翠色の瞳をした女性が病室へと入ってきた。
軽鎧に身を包んでおり、腰には長剣を携えている事から冒険者であるのは確かだが、凄い美人なのだ。
それから女性は口を開いた。
「初めまして。私は冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に所属しているミリア・メーティスと申します。今回の事件の解決にご協力いただき、感謝します!」
ミリアさんは恭しく俺達に向かって丁寧なお辞儀をしながら挨拶をしてくれた。
するとクルスが彼女の側に歩み寄る。
「トーマさん達が助かったのは、ミリアさん達のパーティー【ヴァルキリアス】のお陰なんですよ」
「そうなの?」
【ヴァルキリアス】と言う名前は聞いた事がある。
【ティア―オブテティス】が誇るAランクパーティーであり、ミリアさんはそのリーダー格なのだ。
「一体どういったご用件で……?」
「皆様のお見舞いと感謝の意を表するためですね。それと、今回の事件についても共有しておきたく思い、こちらにお伺いした所存です」
「は、はぁあ……」
(随分と礼儀正しいな)
ミリアさんの謙虚で丁寧な振る舞いに驚きつつも、俺達は今回の事件について関係する話を聞く事になった。
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