第173話 それぞれの奮戦
それぞれの戦いが激しくなっていきます!
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
不正や癒着に手を染めている関係者の監査に乗り出していく中、暗躍している『テイマー』のマラリナによって、事件は更に混迷化していく。
「慌てないで!落ち着いて行動して下さい!」
「安全な場所はこっちですよ!」
「押さないで!危険だから!」
ウェシロスに住む住民達は避難活動を行っている。
ビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさんの指示で、彼の部下の騎士一名が先んじてウェシロスに辿り着き、騎士団や冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に事の次第を報告した。
すると、街に残っている冒険者や騎士達が先導する形で緊急の避難に動いたのだ。
「シモーヌさん!東エリアの避難、全て完了しました!」
「西エリアは8割方、避難を終えています!」
「よし!東エリアにいる騎士達を中央エリアに集めて避難を手伝ってもらうように伝令を!西エリアは避難が完了次第、中央エリアの応援に向かうように共有して!」
「「「「「はっ!」」」」」
騎士団の支部に残っているシモーヌさんが中心になって住民の避難を行っている。
【ティア―オブテティス】に所属している冒険者達も協力しており、特技や長所を活かして避難や救助に当たっている。
「慌てないで!落ち着いて!」
「ママ、恐いよ!」
「大丈夫だから!」
「そうだよ!恐くないよ!」
恐怖に襲われている親子を安心させながら、冒険者達も安全確保に力を注ぐ。
しかし、数も数なだけに、全てを完璧にケアをするのは至難だった。
実際、逃げようとする集団の中でペースを無意識に乱しかねない者も何人かいるだけに、その対応にも追われていたのだから。
「ぐぅう、本当に避難を完了し切れるか……」
「今は余計な事を考えるな!私達は住民の避難に集中しよう!」
「わ、分かった!」
「それに、あの人達も動いてくれている!」
【ティア―オブテティス】に所属する冒険者達も互いに鼓舞し合いながら、住民の避難活動に取り組んでいる。
人を助けるのに、冒険者も騎士も関係ないからだ。
◆
一方——————
「送って下さり感謝します!」
「では、我々はウェシロスにいる人々の避難に当たる。皆様、ご武運を!」
「ありがとうございます!」
ビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさん達は近くの平原辺りで俺達を降ろした後、ウェシロスへと向かった。
「バダックさん、俺達はここで迎え撃つんですよね」
「あぁ、相手は“ゴーレム”のスペックを備えた“メガオーク”だ。決して油断をするな!」
「ハイ!」
「トクサは【支援魔法】を頼む!リエナとミレイユ、エレーナは魔法で援護を頼む!トーマは俺と前衛だ!」
「分かりました!」
バダックさんの号令の下、俺達は“メガオーク”を迎え撃つ態勢を整えていった。
それから程なくして……。
「グゴォオオオオオオ!」
「来たか!」
“ゴーレム”特有の硬い鎧と武器に身を包んだ“メガオーク”が俺達の前に現れた。
近くで見ると凄まじい迫力だ。
「皆!迎え撃つぞ!」
(やってやる!)
俺達は気合を入れ直し、“メガオーク”に立ち向かうのだった。
◆
その頃、クジャール伯爵家の屋敷近辺では……。
(ウィーネスさん……)
「ハァアアアア!」
セリカとウィーネスさんはマラリナが従えている甲冑の騎士と交戦中だ。
最初は二人がかりで攻めていたものの、ウィーネスさんがメインで戦い、セリカは動き回りながら援護する形による戦法に切り替えた。
二人同時に攻めた方が有利に思えるが、ウィーネスさんの判断の下で今のやり方にシフトしたのだ。
セリカも要所で【風魔法】や【雷魔法】による援護をしているが、甲冑の騎士もかなりの実力だった。
ウィーネスさんは剣術と素早い身のこなしで、要所で魔法を放つ事で互角に立ち回っているが、流れを掴みあぐねている状況だ。
(一撃が鋭くて速い!加えて身体能力も凄まじい!何より……)
(この騎士、魔法に対する耐性が凄まじい!)
セリカやウィーネスさんの魔法攻撃を何発かもらっているにも関わらず、甲冑の騎士は大した傷は負っていない。
身に纏う装備には魔法に対する防御力が高いのは見て取れるが、職人の技量が高くなければそもそも作れず、買うとしても億単位までいく物も珍しくない。
ポドルゾは伯爵の爵位を持った貴族のため、財力は文句無しであり、ヴェヌトイル商会ともズブズブの関係だから手に入れる事ができたと思われるが、今の問題はそこではない。
「フン!」
「くっ!」
「ヤァアアア!」
甲冑の騎士による一振りでウィーネスさんは吹き飛ばされ、彼女を助けるために飛び掛かるセリカの斬撃もいなされてしまう。
手も足も出ない訳ではないものの、状況は芳しくなかった。
「ウィーネスさん!大丈夫ですか?」
「平気よ!それより……」
少し距離は空いているが、甲冑の騎士はセリカとウィーネスさんに向かって剣を振り下ろしたその瞬間。
「「!?」」
「フン!」
「「【風魔法LV.1】『エアロショット』!」」
甲冑の騎士が振り下ろした剣戟は、強烈な衝撃波を生み出し、地面にはクレーターのような穴ができた。
(何なの?あの威力?)
(まともに直撃したらひとたまりもないわね)
セリカとウィーネスさんは【風魔法LV.1】『エアロショット』をぶつけ合って距離を空けさせた事で辛うじて躱すが、その破壊力に冷や汗を隠せなかった。
強力な剣と鎧に身を包む相手の前に、二人は必死で思案を巡らすが、打開策は見出せないままだった。
(セリカ……)
(ウィーネスさん……)
セリカとウィーネスさんは示し合わせるように、アイコンタクトを取った。
◆
一方、クルスとモレラさんは……。
「シャァアアア!」
「くっ!」
屋敷近くにある雑木林の中、マラリナが操る2体の“フィッシャーナイト”の内一体と交戦している。
モレラさんとは分断されてしまい、それぞれが一対一の戦いを余儀なくされてしまった。
“フィッシャーナイト”とは過去に戦った事はあるものの、あの時はトーマ達がいたから何とかなった。
しかし、その時と今では状況が大きく違う。
クルスも当時よりも大分強くなっているものの、一人で“フィッシャーナイト”とやり合うのは骨が折れそうであるのもまた事実。
クルスは回避に徹しながら林の中を進んでいった。
(ッ!ここは?)
そんな時、クルスは林の中にある原っぱのような場所に出ていた。
木々や茂みはさっきまでいた道よりは少なく、走り回れそうな広さがある。
そこに“フィッシャーナイト”も飛び掛かり、クルスは槍の一突きを回避する。
「クルルルル……」
(相手は知能の高い“フィッシャーナイト”。この状況ならば……)
クルスは二振りのロングナイフを引き抜き、“フィッシャーナイト”と相対する。
(コイツ相手ならば……。やってみるか)
「来い!」
”フィッシャーナイト”との一対一に臨むクルス。
だが、その表情には深刻さが主体になっているが、一種の自信のようなモノも含まれていた。
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