第172話 三つの戦い
三方面の戦いが繰り広げられます!
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
俺達はウェシロスにある王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさんと協力し、不正や癒着に手を染めている関係者の監査に乗り出していく中、事件に関わっている『テイマー』であるマラリナが引き起こした事件の解決へと動いていく。
「ギャォオオオオオオ!」
「あの“ゴーレム”のようなモンスター、結構なスピードで走ってないか?」
「改造されているってだけに、全体的な能力も高まっているそうだな」
「加えてベースになっているモンスターが“メガオーク”ですよね?ただでさえ強くて厄介なモンスターなのに……」
俺達は『テイマー』であり、魔道兵器“ゴーレム”の改造を施した張本人であるマラリナが操る“メガオーク”がウェシロスに向かっているところを馬車で追いかけている。
巨体に反して、俺達が乗っている馬車に迫りそうな勢いで進む“メガオーク”に注意と警戒を外せない状況が続いている。
「エルヴォス副隊長!ウェシロスに向かっている“メガオーク”はもうすぐ近くの平原まで到達する距離でございます!」
「エルヴォスさん……」
「あぁ。その平原まで向かってくれ!急ピッチでだ!」
「はっ!」
一人の騎士が“メガオーク”の通るポイントを予測し、エルヴォスさんに伝えると、バダックさんと眼を合わせた。
瞬間、エルヴォスさんは即断で近くの平原まで向かいように指示を飛ばした。
俺達はその場所で迎え撃つ事になった。
(こっちは俺達で何とかするしかない!)
俺は祈るような想いを抱えながら、迎撃の準備を整えるのだった。
◆
一方———————
「フン!」
「はぁあああ!」
セリカとウィーネスさんはマリアナが従えている甲冑の騎士と撃ち合っている。
二人は『軽戦士』なだけあって、スピードと剣術を活かした立ち回りをしながら連携攻撃を仕掛けており、そのクオリティやレベルは高い。
しかし……。
(この騎士、強い!加えて身のこなしも素早い!)
(私とウィーネスさんのコンビネーション攻撃をこうも……)
「……」
「「【剣戟LV.1】『ゲイルスラスト』」」
二対一にも関わらず、甲冑の騎士は互角に撃ち合っている。
セリカとウィーネスさんが【剣戟LV.1】『ゲイルスラスト』を同時に放つも、達人のような剣捌きと身体捌きでいなされてしまった。
「フン」
「「!?」」
バックステップした甲冑の騎士は剣を振り下ろすと、凄まじい衝撃波を飛ばした。
セリカとウィーネスさんはどうにかして躱す。
しかし、地面がかなり抉れており、その威力を物語らせている。
(凄い威力。振り下ろす直前、あの剣から魔力を一気に放出されているみたいね……)
(とんでもない魔道具を使っているわね。それに、今の動き……)
セリカは甲冑の騎士が放った斬撃の威力に驚き、ウィーネスさんは立ち回りや攻撃を見て、何か気付いたような表情をしている。
「セリカ、あの騎士のギフトは恐らく『軽戦士』よ!さっきの斬撃に【風魔法】や【雷魔法】が同時に入り混じったような魔力を感じたわ!冒険者ランクとしては、Bランクでも上位レベルの実力と見ている」
「本当ですか?」
ウィーネスさんの指摘にセリカは驚いている。
Bランクパーティーのリーダー格を張っているウィーネスさんの実力は折り紙付きであり、相手の実力や状況を的確に判断する眼力もかなりのモノである。
セリカの表情も険しくなっている。
対する甲冑の騎士は無言で二人の様子を見た後、今度はセリカに向かって突っ込んで来る。
「くっ!」
「セリカ!」
(今度はセリカの方をやるつもり!)
「【風魔法LV.2】『デルタウインドスパイラル』!」
甲冑の騎士はセリカに容赦ない斬撃を浴びせ続け、後退させていく。
それでも、セリカによる【風魔法LV.2】『デルタウインドスパイラル』による槍のような形状をした鋭い竜巻の槍を甲冑の騎士に当てる。
だが……。
「ぐぅううう!」
「!?」
「はぁあああ!」
甲冑の騎士は苦も無く突進して剣を袈裟切りに落としてきたが、セリカは空いた前方に飛んで躱す。
すると甲冑の騎士は再びセリカに襲い掛かる。
「やらせないわ!」
「ウィーネスさん!」
「ぐっ!」
(剣だけじゃない!純粋に力も強い!)
そこにウィーネスさんが割って入り、甲冑の騎士の斬撃を受け止める。
ギリギリと金切り音が鳴り、激しい剣圧である事が一目見て分かった。
その証拠にウィーネスさんの表情は一層険しいモノに変わっている。
「やぁあ!」
「ッ!」
「ウィーネスさん!」
「ありがとう!助かったわ!」
パワー負けしそうになったウィーネスさんを助けるように、セリカが甲冑の騎士に突きを放ち、距離を空けさせた。
ウィーネスさんも的確にフォローしたセリカに礼を言った。
「これは厳しくなりそうですね……」
「みたいね。セリカ。あたしがメインで前に出て戦うから、隙を見て斬り込むか魔法で援護して欲しい」
「ハイ!」
(セリカは確かに強くなった。けど、コイツと正面から撃ち合わせるのはリスクが大きい。最悪は……)
セリカとウィーネスさんは気を引き締めて剣を構え、甲冑の騎士と向き合った。
◆
一方——————
「くっ。気配を遮断できる場所に隠れているのか?それとも……」
クルスとモレラさんはポドルゾやゲルグオ達を引き続き追跡している。
俺達の中では特に感知に優れているのはクルスとモレラさんのため、ウィーネスさんの判断でその役目を引き受けた。
しかし、すんなりとは見つからない様子だった。
(ポドルゾ達も気になるが、あのマラリナとか言う『テイマー』も気になるな……)
「でも、今はポドルゾ達を探し出さなきゃ。早く見つけて、皆の下に加勢を……。ッ!?」
マラリナの事を気掛かりに思いつつ、気持ちを切り替えて探しに向かおうとするクルスだが、何かを見つけたのか、表情が一気に引き締まった。
「あら?あなたはさっきの『シーフ』っぽい人ね……」
「お前はマラリナ!」
(この女が例の……)
そこに現れたのは他でもない、マラリナだった。
クルスの表情が険しいのはそれだけが理由ではない。
マラリナの後ろに控えている2体のモンスターにクルスは見覚えがあった。
(あのモンスターは?)
「お前、後ろに控えているモンスター2体は“フィッシャーナイト”だな?」
「えぇ、よくご存じね……」
そう、俺達と最初にアライアンスを組んだクエストで遭遇した2体の“フィッシャーナイト”であった。
『テイマー』が持つスキルによってテイムされているのか、2体とも大人しかった。
加えて、首輪のような魔道具を付けられている。
「この“フィッシャーナイト”達はね、私のスキルとそれをより高めるための魔道具で完璧に操れるの。お陰で私の下僕よ……」
(やっぱり、魔道具によってモンスターをテイムしやすくしているんだ。でなきゃ人間を襲うモンスターを何体もテイムできるはずがない)
「ポドルゾ達はどこへやった?」
クルスはモンスターを簡単にテイムできたのは魔道具によるモノが大きいと思いつつ、マラリナの惚けたような発言を無視して質問をぶつけた。
するとマラリナは……。
「さっき会ったお屋敷のどこかに隠れていると思うわ」
「え?」
(仕えている相手の隠れ場所をこうも?何を企んでるんだ?)
何とあっさり教えたのだった。
渋られると思っていたクルスやモレラさんも呆気に取られた様子だ。
「教えてあげたから、この子達の相手をしてちょうだいな」
「「ギィリリリリ!」」
「ッ!?」
マラリナの後ろに控える2体の“フィッシャーナイト“はうねりを上げているが、大人しい状態だ。
クルスとモレラさんも戦闘態勢に入る。
「さぁ!暴れなさい!」
そう言ったマリアナは手に持っている鞭を振るい、2体の“フィッシャーナイト”の身体に当てる。
次の瞬間。
「「グガァアアアア!」」
(急に凶暴化した?あの鞭も魔道具か?)
「命令する。あの『シーフ』と『アーチャー』を襲いなさい!」
「「グガァアアアア!」」
「ッ!?」
“フィッシャーナイト”達は途端に凶暴になり、槍を振るってクルスとモレラさんに向かって襲い掛かって来た。
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