第168話 メスを入れる
悪徳貴族達にメスを入れに行きます!
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
俺達はウェシロスにある王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさんと協力関係を結び、腐敗した騎士団の浄化のために行動する事となった。
誘き寄せた倉庫の中で、エルヴォスさんは不正の元凶である隊長のノージンによる一対一の決闘に勝利した。
俺達がビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさん達と共に作戦を成功させている頃……。
「いやはや、ゲルグオ殿のお陰で我が領地も良い影響が及んで嬉しゅうございまして……」
「それはそれは、私も嬉しくございます……」
一つの会合がウェシロス近辺にある屋敷で開かれていた。
そこには貴族服に身を包んだ者やそれに近い富裕層である事をアピールするような仕立ての良い服に身を包んだ者で溢れており、その中にはヴェヌトイル商会の会長であるゲルグオがおり、その子息であるギゼオロもいる。
「それにしても、ヴェヌトイル商会の会長であるゲルグオ殿と繋がりができてからと言うものの、私にとって良い事や愉快な事が続いて堪りませんぞ」
「これは、ポドルゾ様。この度はお招きに預かり、誠にありがとうございます。私だけでなく息子までご招待頂けるとは……」
「何を申すか。ギゼオロ殿は会長のご子息であり、その後継者なのだから、私も顔を合わせておきたいと思った次第……」
「ポドルゾ様。ご無沙汰しております。こうしてお目に掛かれて光栄に存じます」
「はっはっは。しばらく見ない間に凛々しくなられたな。ゲルグオ殿」
「はい。現在は私の商会の運営を手伝いながら、跡継ぎのための勉強をさせております」
「そうか。立派な跡継ぎになれるよう、私も応援しておるぞ」
「ありがとうございます」
そこに現れたのはクジャール伯爵家の当主であるポドルゾであり、ゲルグオとギゼオロは会合で取引相手の貴族らと共に親睦を深めている。
クジャール伯爵家の当主であるポドルゾ主催の交流会には、彼の派閥貴族の当主や親族を始め、親交のある人物達が参加している。
その中には冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に所属するBランクパーティー【スターレック】のリーダー格であるジゲラさんとメンバーのマーカスさんがいる。
同じくメンバーであるイミニさんとアコナさんは別室で待機している。
今回は護衛の応援として参加しており、ゲルグオが目に掛けている冒険者だから是非にと紹介してもらえる形でだ。
「聞きましたぞ、ジゲラ殿。かの【ティア―オブテティス】の中でも特に勢いのあるパーティーのリーダーを務めるとは凄い御仁だと」
「いえ、恐れ多いです。我々もBランクパーティーになって気持ちを新たに日々邁進していく所存ですので……」
(ここでクジャール伯爵家の派閥貴族とも顔見知りになっておけば、何かと都合が良いからな。何人か媚を売っておくか……)
ジゲラは一人の貴族と談笑しており、表面上は優しく紳士的な振る舞いをしているが、腹の底では誰かと親しくなって恩を売る機会を作るために考えを巡らせている。
マーカスはそんなジゲラの表情を見てどこか苦い表情をしている。
一方のポドルゾは平静を装いながら周囲を見回している。
(こうして皆を集めて会合を開けたのは良いにしても、ビュレガンセ王国騎士団西方支部の隊長らが来ていないのは若干気掛かりだな……。)
ポドルゾは見張りのために派遣させた騎士の数が少なく、主な癒着相手であるノージンがいない事には違和感を覚えていた。
ノージンが最も信頼している側近の騎士から伝えられ、冷静でいるものの、内心穏やかではなかった。
騎士団に対し、黒い関係にあった一人であり、実際に自分の欲求のために便宜を図っていたのだから、言い知れぬ不安を抱いている。
言ってみれば、クジャール伯爵家と騎士団は後ろめたい事が起きた際には一蓮托生のような関係で乗り切ってきた。
その中心となる相手がノージンであり、その彼がいない事には違和感と不安を抱くのは当然だった。
自分が黒い事をする時には必ずと言っていいほどにノージンが絡んでいたからだ。
いくら自分が伯爵の爵位を授かっているとしても、一人だけで完璧に揉み消すのには限度があり、治安を取り締まる騎士団の協力が不可欠だからであり、そのためにも賄賂を渡し、協力してくれる関係者にも動いてもらった。
だからこそ、今まで安全に立ち回り、領地の発展に貢献できていたと本気で思っていた。
(だが、派遣された騎士達だけでも周囲の警備に問題はない。ジゲラ達のメンバーも控えているから大丈夫だ。中遠距離攻撃や支援に長けた冒険者を控えさせただけでも良しとしようかな……)
「ポドルゾ様、お話できればかと……」
「おぉ、これはこれは、ご無沙汰ですな~」
そうしてポドルゾは面識のある貴族との団欒へと戻っていった。
一方——————
「それにしても、ポドルゾ様も久しぶりに大掛かりな会合を催されたものだな」
「あぁ、本当にな。騎士を数十名も護衛に参加させる辺り、随分と肝入りにすら見えなくもない気が……」
「変な憶測はやめとけって」
「それもそうだな」
クジャール伯爵家の屋敷周りではノージンに賛同する騎士達が見回りをしている。
何ヵ所かに分かれて2人か3人体制で見回っており、屋敷の裏手にも人員を割いている。
周囲に不審な人物がいないかを見張るのが主な役回りであり、何名かは屋敷のホールに残しておく等、警備に抜かりはなかった。
「それにしても、ノージン隊長達はいつ来るんだろう?」
「何か不正の証拠が出てきそうだから、そっちを解決させたらすぐに向かうとか言っていたんだけど、大丈夫だろ!」
「それもそうだな!仮に何か出てきてもノージン隊長がどうにかしてくれるしな!」
「だな!」
屋敷の周囲を見回っている騎士2名が談笑していた。
人の目がないとは言え、どこか緩そうな雰囲気だった。
「それに比べるとエルヴォス副隊長は真面目過ぎなんだよな~。欲がないって言うか、堅物って言うか」
「そうだよな~。あの人ったら口を開けば堅い事ばっか言ってきて、内心ウザイし面倒臭いわで、あんまり関わりたくな……」
騎士の一人が愚痴をこぼしている瞬間……。
「え?何?ぐ……」
「どうした?がっ!?」
すると何者かによって、騎士の二人が近くの茂みに引き摺り込まれてしまった。
その相手は……。
「ちょっとだけ大人しくしてもらいますよ」
「申し訳ないが、大事な事なのでね」
「「ぐももも……」」
((何?いつの間に?))
悟られずに捕縛したのは、クルスとモレラさんであった。
【気配遮断】によるスキルで見事に組み伏せて見せた。
加えてそこにはフード付きのローブを羽織ったエレーナもいる。
「すいません。今だけ大人しくさせてもらいますよ。エレーナ」
「【付与魔法LV.1】『スリーピン』!」
「「ぐぅう……」」
すかさずエレーナの【付与魔法LV.1】『スリーピン』で騎士二人を眠らせる事に成功し、クルスとモレラさんはその両手脚をしばり動けなくさせた。
「これで屋敷周りを見回っている騎士達は行動不能にできましたね」
「うん、では僕達も作戦通りに……」
そう言ってクルスとエレーナ、モレラさんは屋敷の裏口へと進んでいった。
一方、屋敷の正門には……。
「ん?あなたは……?」
「警備、お疲れ様だな」
「エ、エルヴォス副隊長?お疲れ様です!」
正門を見張っている門番の前に現れたのは、部下を連れて来たエルヴォスさんだった。
門番達は思わぬ来訪に驚いている様子だ。
「エルヴォス副隊長、その、ノージン隊長はどうされて……」
「ノージン隊長、いや、ノージン・メノオやその賛同している騎士達は既に捕縛しておいた。ノージンを含めてお前達も捜査対象となっている」
「あ、あの、仰る意味が……」
焦る門番達を他所に、エルヴォスさんが言い放った。
「これより、クジャール伯爵家の屋敷の緊急監査を行う!監査の妨害は処罰の対象となる!速やかに道を開けろ!」
そして、ビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさん主導の下、不正や癒着の緊急監査が行われた。
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