第167話 騎士の戦い(後編)
騎士の戦いは決着を迎えます!
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
俺達はウェシロスにある王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさんと協力関係を結び、腐敗した騎士団の浄化のために行動する事となった。
誘き寄せた倉庫の中で、エルヴォスさんと不正の元凶である隊長のノージンによる一対一の決闘は佳境に入ろうとしていた。
「「うぉおおおおおお!」」
凄まじい斬り合いへと雪崩れ込むエルヴォスさんとノージン。
横流しで得た防具と薬物による強化をしているノージンに対し、エルヴォスさんは気迫と信念を胸に挑んでいる。
「くたばれ!エルヴォス!」
「はぁあああ!」
エルヴォスさんの斬撃は少しずつノージンを捉えていったが、それでも不利な事に変わりはない。
対するノージンは勢いが落ちる事無く攻め続けており、エルヴォスさんが纏う甲冑も次第にボロボロになっていく。
このままではエルヴォスさんが敗ける……。そう映っていた。
しかし……。
「うぉおおお!」
「ハァア!」
(どうなってんだ?こいつ、まともに剣で受ける回数が減っている)
「ふん!」
「ちっ!」
戦局に変化が見え始めている。
エルヴォスさんがノージンの剣を受け止める回数よりも、回避していく回数の方が増えてきているのだ。
受けるとしても、正面から受け止めずに流しているようだった。
「どうした?怖気づいたか?」
「別に」
「オラァアア!」
斬り合いの中、ノージンは強力な横薙ぎを放ち、その剣はエルヴォスさんの首に飛んでいく。
次の瞬間……。
「ハッ!」
「ぐぅううう!」
エルヴォスさんは紙一重で姿勢をかがんで躱すと同時、握る剣でノージンの頭に目掛けて切り払う。
ノージンは辛うじてバックステップしたが……。
「貴様……」
ノージンの顔には斜め一閃の傷が刻まれていた。
眼を斬られてこそいないが、頬はザックリ斬れており、左の額からも血が流れている。
不利な状況に変わりないものの、流れを引き戻して見せた。
「決着の時は近いようだな……。」
「そうだな」
(これ以上長引くのは……)
二人が剣を握る手に力が籠る。
そして撃ち合いの末に鍔迫り合いにもつれ込んだ。
薬物による強化を施されたノージンに分があり、エルヴォスさんは少しずつ押されていく。
それでも、エルヴォスさんの表情から闘志が消える事はなかった。
すると……。
「はぁ……はぁ……」
(ぐっ、ヤバい!)
ノージンの頭や身体から急に汗が出始めており、呼吸も乱れ始めてきている。
するとノージンの押し込んでいる剣圧が少しずつ落ちていく。
「薬物の副作用だな……」
「!?」
「ハァア!」
「ぐわ!」
エルヴォスさんが指摘すると、ノージンは一瞬動揺した。
その隙を突くように、エルヴォスさんは強力な袈裟切りを放ち、ノージンを斬り裂いて吹き飛ばした。
「ぜぇ……。はぁ……」
(クソ!あと少しだったのに……)
明確なダメージを受け、苦悶の表情を浮かべるノージンと覚悟と信念に満ちた目をしたエルヴォスさんは向き合い……。
「うぉおおお!」
「はぁあああ!」
「【剣戟LV.3】『疾空双閃』!」
「【剣戟LV.4】『剛天割り』!」
二人は凄まじい勢いで突進し、ノージンは【剣戟LV.3】『疾空双閃』、エルヴォスさんは【剣戟LV.4】『剛天割り』と言う技を放つ。
剣と剣がぶつかり合った。
「うぉおおおおおお!」
「う!」
そして……。
「もらったぁあああああ!」
「ぐわぁあああ!」
エルヴォスさんの放った渾身の力を込めて振り下ろされた斬撃は、ノージンの身体を甲冑や帷子と一緒に斬り裂いた。
「がぁ……。あぁ……」
(ダメだ……。もう、力が入らねぇ……)
「ぐっ」
「エルヴォスさん!エレーナ!【回復魔法】を!」
「ハイ!」
同時にノージンの身体は力なく、大の字で倒れ伏す。
エルヴォスさんも力をほとんど使い果たしたせいか、その場で膝をつき、見守っていた俺とエレーナ、クルスとモレラさんが駆け寄る。
俺は【回復魔法】をかけるように指示をエレーナに飛ばし、クルスとモレラさんはノージンの身体の自由を奪うように拘束する。
「少し、ノージンに伝えたい事がある。いいか?」
「え?はい……」
俺はエルヴォスさんに肩を貸し、縛られて動けないノージンの下に歩み寄る。
「ノージン……。お前は我欲に溺れ、民衆の気持ちを裏切り、不正に加担した。お前はもう、騎士ではない!ノージン・メノオ!ビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長である私の名の下、あなたを更迭する!」
エルヴォスさんはノージンに向かって鋭く言い放つ。
こうして、決闘はエルヴォスさんの勝利に終わった。
俺達は外の見張りを制圧し、扉を開けられないように閉じ込めたセリカ達に事の次第を伝え、捕縛したノージンら騎士達は倉庫に収容させた。
後に俺達は西方支部へと赴き、バダックさんやエルヴォスさんの右腕敵存在の部下であるシモーヌさん達と合流し、制圧の完了や騎士団の不正の証拠を抑える事に成功したと告げられた。
ノージンに従い、支部で居残っている騎士達は地下にある檻に拘留する事になり、何もアクションを起こせない状態にしている。
「エルヴォス副隊長、お怪我は……」
「少し斬られたが、【回復魔法】をかけてもらったから、問題なく動ける」
「良かったです……」
「無理し過ぎなければの話ですけどね」
「そうか……。あの、申し遅れた。私はビュレガンセ王国騎士団西方支部に勤めている、シモーヌ・フィオンと申す。この度はエルヴォス副隊長及び作戦に協力して頂き、誠に感謝する!」
「こ、こちらこそ……」
シモーヌさんはエルヴォスさんを気遣った後、俺達に礼儀正しく自己紹介をしてくれた。
エルヴォスさんと同じく生真面目な人物であり、信用するには充分だと感じさせてくれた。
「エルヴォスさん。これで……」
「あぁ、協力して頂き、本当に感謝している」
改めてエルヴォスさんは俺達に向かってお礼のお辞儀をしてくれた。
本当に律儀で誠実な人物である事を再認識させてくれる。
「さあ、膿を全て取り除きに行くぞ!」
こうして俺達は行動を移す事になった。
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