第166話 騎士の戦い(前編)
騎士対騎士の戦いの前編です!
俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
俺達はウェシロスにある王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさんと協力関係を結び、腐敗した騎士団の浄化のために行動する事となった。
誘き寄せた倉庫の中で、エルヴォスさんと不正の元凶である隊長のノージンによる一対一の決闘が始まった。
「フン!」
「ハッ!」
「セイ!」
「うぉおお!」
「エルヴォスさん……」
俺達はエルヴォスさんとノージンの決闘を見届けている。
目の前にいるのはビュレガンセ王国騎士団西方支部の隊長と副隊長の両名であり、手に握る真剣で撃ち合っている。
エルヴォスさんの袈裟切りをノージンが受け止めると、今度はノージンが横薙ぎを放つとエルヴォスさんがバックステップで躱し、そして再び両者が踏み込む。
それぞれが剣を振るい、受け止め、一進一退の攻防が続き、攻守が入れ替わり続けている。
(これが……。騎士と騎士の戦い……)
俺はこの世界に来て、騎士同士の真剣による撃ち合いを初めて間近で見た。
騎士とは、王国もしくは貴族やそれに類する富裕層を護衛するための役職や仕事に就いている者の事を指している。
冒険者はモンスター討伐や素材の採取、ダンジョン等の未開の地を開拓していく事を主な生業とするのに対し、騎士は国を始め、仕えている相手の安全や身を守る事を第一とする防衛を生業としている。
故に、モンスターの相手には冒険者が最も適しているとすれば、対人戦絡みとなれば騎士が最も適していると言う事になる。
「ここだ!」
「甘い!オラ!」
「フン!ハッ!」
「シィイ!」
人間同士の戦いであれば、知能が低めな傾向の強いモンスターとは違い、求められるモノが大きく変わってくる。
武器の扱い方、知性がある立ち回りや駆け引きとそのクオリティ、人間相手の対戦経験が大いに関わってくる。
特に騎士はそれを求められるウエイトが大きかった。
「シッ!」
(後ろに下がった。詰め寄って追い込む!)
「フン!」
「ハッ!」
(この剣を払いのけて切り込む!)
「ヤッ!」
「甘い!」
(前のめりになった。ここで……)
「もらった!」
「まだだ!」
(身体を回転させて外すか!?)
「「オラァア!」」
エルヴォスさんとノージンの斬撃がまたもぶつかり、凄まじい金切り音が響いた。
エルヴォスさんとジゲラさんは数分撃ち合うが、どちらも有効打が未だになかった。
二人の実力はほぼ……互角だった。
「何だ?随分と腕を上げたんじゃないか?」
「それはどうも……」
(何だかんだで隊長を務めているくらいだ。すんなり勝てると思わないさ)
「よしよし、来た来た……」
するとノージンの身体は両腕を中心に筋肉が盛り上がっていく。
ノージンが剣を振り上げて突っ込むが、先ほどよりも明らかにスピードが増している。
エルヴォスさんはその動きを見極めて受け止めようとしていた。
「オラッ!」
「ぐぅうううううう!」
だが、エルヴォスさんの身体は豪快に吹き飛ばされてしまった。
【支援魔法】をかけられた魔力の気配がなく、【腕力強化】や【脚力強化】によるベーススキルによるモノだったが、明らかにそれだけで説明が付くようなパワーではなかった。
(確かにノージンの身体能力は【支援魔法】に頼らずとも十分優れているが、何だ?このおぞましいまでのパワーは?)
「お前まさか……。薬物を……」
「俺は間違った事をしたつもりは毛頭ないぞ。自分を高めるための最善手を取ったにすぎんのだ!」
「貴様……」
そう、ノージンは薬物による強化を施していたのだ。
その妄言を聞いたエルヴォスさんの表情が一層険しいモノへと変わっていった。
「俺は俺のために戦う!そのためにもエルヴォス!目障りなテメェを排除してやる!」
「うぉおおおお!」
再び激しい斬り合いになった。
手数はほぼ互角だが、剣圧に差が出始めてしまい、エルヴォスさんの頬が薄く斬り裂かれていく。
「「【剣戟LV.3】『疾空双閃』!」」
「ぐぅう!」
「うらぁあ!」
「ガハァア!」
「エルヴォスさん!」
二人は【剣戟LV.3】『疾空双閃』を同時に放つが、ダメージを受けたのはエルヴォスさんだけであり、間髪入れずにノージンはエルヴォスさんの腹に強烈な蹴りを浴びせて吹き飛ばす。
どんどんと不利になっていくのは、俺の目から見ても明らかだった。
「はぁ……はぁ……」
「キツそうだな……。そりゃ、技量が互角なら、そこに強化するアイテムや強力な武具を揃えれば俺が有利になる。当然の論理だろ?」
(同じタイミングで撃ったのに、エルヴォスさんが傷を負って、ノージンはほぼ無傷。甲冑の下に着込んでいるのは……)
「教えてやるよ。俺は甲冑に加えて下に帷子を付けているんだ。ミスリル製のな……」
ノージンは甲冑の下にミスリルで作られた帷子を着込んでいるのを自ら暴露した。
ミスリルは相当な硬度を持ちながら、鋼よりも軽いため、甲冑よりも大分薄いものの、帷子としては十分すぎるくらいに強固だ。
騎士と言っても、駆け出しの場合は従来の片手剣しか使えないが、上のポジションになれば上質な武器や防具が支給されると聞いた事はある。
だが、ミスリル製の帷子を支給されたケースはほとんどないため、購入したか横流しされたかと考えるのが妥当だ。
ノージンの行いを鑑みれば、間違いなく後者だろう。
「諦めろ。お前を始末して、王国に引き渡してやる」
「まだだ……」
「あ?」
倒れるエルヴォスさんの下に悠然と歩いて行くノージン。
だが……。
「私はまだ負けてはいない!」
「ぐっ!」
エルヴォスさんは叫びながら鋭い一閃を放ち、ノージンを後退させる。
思わぬ反撃に、ノージンの表情に少しであるが、焦りが見えた。
「不正に手を染め、薬物で力を求め、騎士としての誇りを捨てた貴様にだけは……。貴様にだけは絶対に負けん!私はこの騎士団を浄化して見せるまで、死ぬ訳にはいかん!」
「エルヴォス……」
「エルヴォスさん……」
傷を負いながらも立ち上がり、決意と誇りを胸にエルヴォスさんは雄叫びを上げる。
その姿を見たノージンは不快そうな表情をまざまざと見せる。
「くたばれーー!」
「うぉおおおお!」
二人の斬り合いが再び勃発する。
エルヴォス・ブレドランとノージン・メノオの決闘は佳境へと入った。
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