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第160話 それぞれの思惑

事件が急激に動きつつあります!

俺達は同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされ、Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。

俺達はウェシロスにある王国騎士団西方支部の副団長であるエルヴォスさんと協力関係を結んだ。

更にはセリカ達も、事態を動かすだろう情報を得ていた。


冒険者ギルド【ティア―オブテティス】・執務室——————


「なるほど……。王国騎士団西方支部の副団長と彼に協力して下さる騎士らも協力を頂けたのは大きいわ……」

「はい、エルヴォスさんも現在進行形で騎士団内部の証拠を集めております」


俺達はヒルダさんの下に赴き、得られた情報を報告している。

エルヴォスさんと協力関係を結べた事を伝えると、ヒルダさんも嬉しそうな表情を見せてくれた。

後日、エルヴォスさんはヒルダさんとコンタクトを取って、持ち合わせの証拠となるよう要素をまとめた書類を作成してくれるそうだ。


「加えてビックリなのは……」

「セリカ達が取ってきた情報ね……」

「うふふ」


俺とウィーネスさんはセリカに視線をやると、彼女は微笑んだ。

騎士団支部に赴いている間、ミレイユが彼女の両親と再会した事には驚いたが、それ以上の事があった。


「まさか、ヴェヌトイル商会の公になっていない取引の一部やあの麻薬成分がある植物の栽培場所が記されたメモが手に入るとはな……。加えて過剰労働の証拠も……」


そう、ヴェヌトイル商会の黒い取引の一部の証拠を掴む事ができたのだ。

ミレイユのご両親は今、ヴェヌトイル商会の商隊馬車の御者を主な仕事としていた。

そのため、あちこちに赴いては積み荷を取り扱う機会が多くあり、故に取引に携わる事も多かった。

その中で、ヴェヌトイル商会が密かに行っている違法行為を目の当たりにしており、何かのためにと思って記録していた。

いつしか、良心の呵責に耐えられなくてやったと本人たちは言っていた。

ミレイユの両親の店は、当時勢力を拡大していたヴェヌトイル商会によって強引に吸収合併されてしまい、利権や経営権を奪われ、その下部組織に下った。

しかし、実際は御者を始めとする雑用ばかりであり、激務にも関わらず薄給で待遇も悪かったため、疲労が貯まりに貯まっていた。

ミレイユを残して消えたのも、彼女を巻き込んでしまいたくなかったからだった。


「……」


ミレイユの表情は実際に曇っていた。

セリカがミレイユの両親であるガンギさんとミラユリさんから話を聞き、その経緯をミレイユに伝えていたのだ。

久々に両親と再会したミレイユは拒絶していたが……。


「ただ、手掛かりになって良かったと存じます……」


ミレイユは気持ちを抑えるのに必死な様子だった。

ミレイユに思うところがあったのはハッキリ理解しているつもりだが、彼女の気持ちを思えば、俺達も心穏やかではなかった。


「何にしても、解決への糸口を掴んでくれた事に感謝しています。我がギルドでも協力して下さる冒険者達もおりますので、共に解決できればと思います」

「「「「「ハイ!」」」」」


ヒルダさんは柔らかな笑顔を浮かべながら、お礼と協力していく姿勢を見せてくれた。


「あ、そうそう。皆さんに一つ共有して欲しい事があったわ」

「はい?」

「ここだけの話なんだけど……」


俺達が出ようとすると、ヒルダさんが何かを思い出したように呼び止めて話をした。

俺達はそれを聞いた。


「と言う事で、気を付けて欲しい……」

「承知しました。ありがとうございます」


ヒルダさんに注意喚起のような言葉をもらった俺達は外へ出た。

俺達が部屋を出てすぐ……。


「ふう……。私も気合い入れなきゃね……」


そう言うヒルダさんは机の一番上の引き出しを開け、既に入っている一通の手紙を取り出した。

送り主に『ミリア・メーティス』と記されたそれを見つめて……


「さっきのヒルダさんの話、本当なのかな……」

「ここ最近のジゲラさん達、怪しい動きをしているって……」


拠点にしている宿に戻る道中、【ティア―オブテティス】のBランクパーティー【スターレック】を率いるジゲラさん達についての話で持ち切りだ。

ジゲラさん達も協力はしてくれているものの、最近はクジャール伯爵家やヴェヌトイル商会の商隊の馬車の護衛等のクエストばかりを引き受けたりと、同じく行方不明になった同ギルドの冒険者の捜索を蔑ろ気味にしているとヒルダさんに聞かされた。

【ティア―オブテティス】の冒険者達からその情報を聞かされ、ヒルダさんもジゲラさんを呼んで話したものの、当の本人達からは『クエストの道中で有力情報を得られる可能性があるから大丈夫』と片付けられた。

ジゲラさん達も実力者である事はギルド内でも周知の事実であるものの、損得勘定が厳しくかなり打算的であり、表向きは仲良く振舞っているものの、本心では敬遠している冒険者が多いとの事だ。

何か信用しにくいな……。


「何でもジゲラさん達、Bランクに上がってからは目立つようなクエストを引き受けるようになって、増長気味になっている噂も少なからず出ているって……」

「上のランクに行って舞い上がっては調子づくなんて、よくある話よ。それに、アタシもジゲラ達には余り良い印象を抱いていなかったし!」


セリカとウィーネスさんはそう言っていた。

初対面の時は好印象を抱いていたジゲラさん達だったが、心のどこかで不信感を持ち始める自分がいる。


「でも、マーカスさんを好ましく思っている人は多いみたいですね……」

「そうね……。彼だけは真面目で実直で気配りのできる青年だって話よ」


そんな中、ジゲラさんの仲間の一人であるマーカスさんの印象や性格は良いと言う声も聴いた。

女性や子供、年配者にも優しく、ジゲラさん達のせいで不快になった人達にも代わりに謝罪したりと、【スターレック】のメンバーの中でも良識的な人だと思っている人も多い。

初めて会った時も、良く言えば社交性溢れる、悪く言えば馴れ馴れしかったジゲラさん達だったが、マーカスさんだけは真面目に挨拶してくれたからね。


「それでも、基本的に【ティア―オブテティス】に所属する冒険者達も良い人達ばかりだよね。ウチもだけど……」

「そうね!」

「【アテナズスピリッツ】からウェシロスまで遠いのが難点ですけど……」


夕焼けの空の下でそう語り合う俺達なのであった。


一方————


ウェシロスからすぐ近くの住宅街に存在する一つの家屋があった。

石造りの一軒家だが、外観から見れば4~5人は入れるスペースはありそうな大きさだった。

その部屋の一室にて……。


「おい、遅かったじゃねぇか……。頼んだの一週間前だぞ!」

「ジゲラ……。俺はやっぱり……、こんなの間違え……」

「うるせぇな!ほら、よこせよ!」

「ッ!」


マーカスさんは剣袋や大きめの革袋を持っており、渡すのを躊躇っている様子だったが、ジゲラさんは強引に奪い取る。

そして中身を取り出すと、立派ながらもどこか妖しい気配を醸し出す長剣に加え、指輪やネックレスの形をした魔道具が数点あった。


「待ちわびたぜ……。この魔道具があれば、俺はAランクの冒険者になれる……。【ヴァルキリアス】のメンバー達も出し抜ける。そして、のし上がれるなら……のし上がれるなら……」

「……」


ジゲラさんはお目当てであっただろう剣を握りながら、悪い笑みを浮かべていた。

それからすぐに怒りも入り混じったような表情へと変わり……


(俺は仲間も貴族も何だって利用し抜いてやる……。もう二度と、あんな惨めな思いは……)


その時のジゲラさんの脳裏に過ったのは、在りし日の幼少期だった。


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