第158話 腐敗した騎士団
人々を守るための騎士団の中身を見せます!
終盤、あのキャラの両親が登場します!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
そんな中、ウェシロスにある王国騎士団西方支部が行方不明になった冒険者達の捜索に力を入れていない現状を知り、癒着していると確信した、一人の男性の騎士が現れた。
俺とエレーナ、ウィーネスさんとリエナさんはセリカ達と合流しようとした時、一人の男性の騎士に声を掛けられている。
「少しばかり、話はできぬか?」
(この人も騎士か?でも、さっきの騎士より……)
「何か用?」
「尾行してきたの?」
先ほど対応してきた中年の騎士に馬鹿にされた怒りが残っているウィーネスさんとリエナさんは警戒心を高めている。
「ウィーネスさん!リエナさん!さっきの騎士よりも悪い感じはしないですよ」
「「え?」」
「わたくし達を探る目的の尾行でしたら、態々自分から声をかけないですよ。それに……」
俺とエレーナはウィーネスさんとリエナさんを落ち着かせる。
するとエレーナは男性の騎士に歩み寄る。
「この方の目に濁りや悪意は一切感じません。真っすぐで誠実な方である事を教えてくれる清らかな眼差しです。信用はできますよ」
「エレーナ……」
エレーナは貴族令嬢であり、幼少の頃から護衛の騎士達を何人も見てきているため、良い騎士か悪い騎士かを判断するための眼力に優れている。
そんな彼女が断言するのなら、信用に値すると思っていいだろう。
「お話をお伺いしますよ」
「感謝する!こちらに来てもらえぬか?」
俺達は男性騎士に誘われるがまま、路地裏へと入って行った。
そして人気のない道まで案内された。
「突然呼び止めてしまい申し訳なかった」
「いえ、こちらこそ喧嘩を売るような態勢取ってしまいました!」
「ごめんなさい」
男性の騎士は深々と謝罪をし、一瞬とは言え敵意を見せてしまったウィーネスさんとリエナさんも謝罪した。
そして落ち着いた頃……。
「申し遅れた。私はビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長を務めているエルヴォス・ブレドランと申す」
エルヴォスさんは先ほど訪れた支部の副隊長、つまりナンバー2と言う訳だ。
焦げ茶色の短髪をオールバックに精悍な顔立ちをした逞しい印象を与える男性の騎士だ。
エレーナの言う通り、明るめな紺色の瞳から発せられる眼光には汚れ一つない澄んだ目をしている。
纏う甲冑もポジションに相応しく立派で少なからぬ豪華さを感じさせ、腰に携える剣も紛れもない一級品である事が見て取れる。
騎士らしくギフトも『剣士』だ。
俺達も自己紹介を行った。
「しかし、かのハイレンド伯爵家のご令嬢が冒険者として活動すると言う話は耳にした事はございますが、本当になられたとは……」
「今後ともよろしくお願いいたしますね。エルヴォスさん」
「はい。エレーナ殿。そして、トーマ殿、ウィーネス殿、リエナ殿もどうかよろしく頼む」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
エルヴォスさんはエレーナが冒険者になった事を知っているようだが、いざ本人から聞かされると大分驚いていた。
それからは全員、気持ちを切り替えた。
「エルヴォスさん、まずはそのお話ですが、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ……」
俺が質問すると、エルヴォスさんは現状の騎士団について語りだした。
「今の西方支部の騎士団は……腐っているんだ。クジャール伯爵家やヴェヌトイル商会との癒着によって……」
「「「「!?」」」」
ヒルダさんからの話や西方支部の騎士や兵士達の振る舞いを見ていて感じていたが、エルヴォスさん本人の口から聞くと現実味が増してくる。
ビュレガンセ王国騎士団西方支部は数年前までは街や町村のために治安維持を務めてきた。
エルヴォスさんは騎士としての誇りを胸に頑張ってきた。
しかし、隊長であり、心から尊敬していた上司が何者かによって殺されてしまう事件が起きた。
これに伴い、エルヴォスさんは副隊長になり、ノージンと言う男が今の西方支部の隊長を務める事になった。
そのノージンはエルヴォスさんの先輩であり、剣の腕前は互角で要領が良く、組織の運営が上手いと判断されて隊長に選ばれたのだが、周囲の後押しや判断で選んだのならばとエルヴォスさんは受け入れた。
だが、これが腐敗のきっかけになったのだと言う。
「ノージン隊長の体制になってから、西方支部の管轄にある貴族や富裕層からの賄賂を受け取る者が少しずつ、確実に増えていったのだ。もちろん、強固な意思と正義感を持っている者は最後までそれを拒んでいたのだが、今となっては大半が賄賂の受け取りやトラブルを揉み消す口利きが増えてしまったんだ」
エルヴォスさんによるとノージンは要領が良いのと同時に、騎士でありながらも狡猾で打算的な性分をしており、他人に取り入るのが上手な人物だと言う。
故に、隊長の立場を利用して西方支部の管轄にある貴族に取り入っては汚い金を受け取り、不祥事やトラブルも上手く揉み消し、重罪になっても可笑しくない案件を後に影響しない程度で抑える等、領民のためではなく、自分勝手な欲望のために動く者が騎士団内で増えてしまった。
ヴェヌトイル商会と繋がりができた際も、会長のゲルグオ様はノージンと繋がり、事件や違法行為を無かった事にしてもらう代わりにキックバックや強力な武具を横流しにしてもらう等、腐敗も決定的なモノにしていった。
行方不明になった冒険者達の捜索も、エルヴォスさんは何とかしたいと言っているものの、ノージンは屁理屈をこねてはうやむやにしている事が続いている中、俺達を見て何かの希望を感じて接触を図ったという事だ。
「そうだったんですね……」
「貴族が持つ私設の騎士団では実感できなかったのですが、王国のために戦う騎士団がそんな事になっているとは……」
「癒着があるのは想像していたけど、そこまでヤバいなんてね……」
「よく耐えてきましたね……。副隊長でいながら針の筵なはずなのに……」
「我ながら恥ずかしい話だが、私だけでは限界が見えてしまってな。そこで、君達を見かけたんだ。私の方でも、今も信用してくれる部下達と一緒に証拠に繋がる要素はいくつか抑えているが、どうしても決定打に欠けていると言うのが現状だ。せめて、一歩でも先に進むための証拠が欲しいのだが、暗礁に乗り上げているんだ……」
そう言うエルヴォスさんの表情は悲壮感で満ちている。
俺達が少し考えた後……。
「俺から一つ提案があるんですけど……」
「はい?」
「ん?何?」
俺がそう声を発すると、エレーナとウィーネスさんが頷き、リエナさんは俺を見ている。
続いて俺はエルヴォスさんに歩み寄る。
「エルヴォスさん。俺達と手を組みませんか?」
「え?」
俺がそう言うと、エルヴォスさんはポカンとしたような表情になっており、エレーナ達も同様だ。
「俺達も同じギルドの冒険者達を探しているんです。この間その内の一名が発見されていて、今回の事件に繋がる要素を持っているんです。エルヴォスさんやあなたに付いてきてくれる部下も、行方不明になった冒険者達が心配だから何とか動きたい!ですよね!?」
「あぁ、そうだが……」
「だったら利害は一致しています!俺達が手を組んで解決に動くには充分だと信じております!」
俺がそう言い切ると、エルヴォスさんは数秒考えていた。
「手伝ってくれるのはありがたいし、言っている事は最もだが、何故……」
「結論から言ってしまえば、俺はエルヴォスさんの事は信用できる騎士であり、心の底から国民の事や騎士団の未来を想って行動できる人だって信頼するに値する人だって感じているからです!何より……」
俺はエルヴォスさんと初めて会って、悲痛な思いで騎士団の腐敗している現状を嘆き、それでも何とかしたい気持ちを見ている。
だからこそ、屈託なく言えるセリフがある。
「大切な仲間を守り、救うのに、冒険者も騎士もないです!力になりたいと言う気持ちに職業は関係なく同じですから!」
「トーマ殿……」
俺がそう言い切ると、エルヴォスさんは目を見開いた。
少しの沈黙が続き……。
「……くっ、ふはははははは」
「え?何かおかしかったですか?」
エルヴォスさんは堪えていた我慢が抑えられないと言わんばかりに、額を抑えながら振り絞るように笑った。
「いや、申し訳ない。嘲るつもりで笑ったのではない。そんな風に騎士と手を取り合う事に何の躊躇いもなく言い切る冒険者がまだいる事に、思わずな……」
そう言うエルヴォスさんの顔には、儚さが宿っていた。
ずっと一人で悩み苦しみ、葛藤してきたと理解するには十分過ぎるくらいに……。
「俺達も協力しますよ」
「ありがとう……」
俺が手を差し伸べると、エルヴォスさんは応えるように握手してくれた。
「何か騎士団まで絡んできているみたいだけど、やりたい事やどうにかしたい気持ちは一致してるようだし、アタシらも手を取る事に賛成しますよ!」
「全くウィーネスったら。でも、私も乗りかかりますよ。今、別行動ではありますが、一緒に行動している冒険者が他に数名いますので、事情を伝えたうえで協力してもらえるように私達からお願いしてみます」
「わたくしにもトーマさん以外に3名の仲間がいますので、協力してもらえるよう呼びかけます!隠密行動が得意で頼りになる『シーフ』もわたくしのパーティーにいますよ!」
「それを言うなら、ウチの『アーチャー』もね!」
「ウィーネス殿……。リエナ殿……。エレーナ殿……」
ウィーネスさんも、リエナさんも、エレーナも、協力したい気持ちは同じだった。
それを知ったエルヴォスさんの目には、感動を示す一筋の涙が流れた。
「かたじけない……。ありがとう……。本当にありがとう……」
こうして俺達は、ビュレガンセ王国騎士団西方支部の副隊長であるエルヴォスさんと協力関係を結ぶ事になった。
一方、セリカ達は……。
「それにしてもトーマさん達遅いよね……」
「被害届や事件に関する確認がメインって言っていたけど、確かにね……」
「何か、トラブルとかあったのかな……?」
近くの公園にて、露店で買った飲み物を飲んでいるセリカとミレイユ、クルスがいる。
バダックさん達は買い足しておきたいアイテムがあり、すぐに戻ると言ってその場を離れている。
「あれだったら、僕が確認してこようか?こっそりだったら大丈夫と思うし……」
「うん、それだったら……」
「ん?」
セリカとクルスがやり取りをしている中、ミレイユは何かを見つけたように少し語気を強めたように頷く。
それに気づいたセリカとクルスはその方角に目をやる。
そこにいたのは、年季の入った服に身を包んだ男性と女性らしき人物だ。
「ミレイユ……」
「本当にミレイユかい……?」
「だ、誰だ……?ミレイユ、知り合い?」
「ッ?」
セリカは訝しみ、クルスはミレイユへ確認を取るが、当の本人は驚愕の表情だった。
「無事に今も……生きていたんだな……」
「会いたかったわ……」
「え……?」
男性の方は白に近い灰色の短髪をした中年の男性であり、女性の方は手入れが行き届いていない長めの髪をしているが、髪色と顔立ちはどことなくミレイユのような面影があった。
数秒の沈黙を破るように、ミレイユが口を開く。
「お父さん……。お母さん……?」
「「!?」」
それを聞いたセリカとクルスの表情も一気に凍り付いた。
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