第156話 騎士団について
犯罪を取り締まる組織が絡んできます!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
そんな中、捜索対象であったギンゼルさんが見つかり、意識不明から目覚めた事を聞きつけ、壮絶な事の一部始終を知るのだった。
「あれ?何か色々と騒がしくないか?」
「本当ですね……」
翌日、冒険者ギルド【ティア―オブテティス】に顔を出すと、どこか騒がしい様子だった。
俺達は興味本位で質問してみた。
「あの、何かございましたか?何か事件でも……」
「あ?【アテナズスピリッツ】の冒険者達だ!」
「よくぞ聞いてくれました!」
「「「「「!?」」」」」
俺が質問すると、【ティア―オブテティス】に所属する女性の冒険者達が気さくに答えてくれた。
何度か足を運んでいる内に、何人かとは顔見知りになっているのだ。
「帰って来るんですよ!ウチのギルドのAランク冒険者パーティー【ヴァルキリアス】が!」
「「「「「!?」」」」」
一人の女性冒険者が興奮気味で答えてくれた。
【ヴァルキリアス】とは、【ティア―オブテティス】に在籍する唯一のAランク冒険者パーティーであり、ギルド最強パーティーと称されているとの事だ。
Aランクと言う事は、【アテナズスピリッツ】における【ノーブルウィング】のウルミナさん達と同格って意味になる。
現在は他国に遠征しているため、長期間ギルドを空けていたが、それを終えて近々帰って来ると聞かされた。
昨日ヒルダさんが話していたな……。
「【ヴァルキリアス】と言うパーティー、Aランクなだけあってやはり強いの……?」
「当然よ!」
「ウチのギルドで【ヴァルキリアス】の皆様の事を慕っていない冒険者を探すのが難しいくらいに人望が厚いの!」
「そうそう!メンバー全員が本物の実力と美しさを兼ね備えた女性達で、正に才色兼備なパーティーなの!」
「え?メンバー全員が女性なのか?」
「そうなんです!特に、リーダー格で『軽戦士』のミリアさんは本当に強くて美人でカッコよくてさ~!おまけにお父さんかご兄弟が王国の騎士団のお偉いさんらしいのよ!」
「後、『魔術師』のライラさんも【アテナズスピリッツ】のウルミナさんと同等と言われるほどの実力者なの!」
「それでそれで!」
「は、はぁ……」
【ティア―オブテティス】の女性冒険者達は【ヴァルキリアス】のメンバーについてかなりの勢いで語りまくっていた。
まるで推しのアイドルの良いところを語りまくるオフ会のような雰囲気だった。
やはりAランクパーティーと言うのは、実力だけでなく、人望も相当に厚い事を再認識させられた。
【ノーブルウィング】のウルミナさん達も実際に人望が半端じゃないしな。
確かヴァルキュリアって、北欧神話に登場するオーディンと言う神に仕え、戦死者を天上の宮殿ヴァルハラへ導くという半神と聞いた事があるけど、イメージするだけでもピッタリのパーティー名だと感じた。
「そ、そうなんだ……」
「早く帰って来ないかな~」
「【ヴァルキリアス】の皆様が帰って来たら、絶対にお疲れ様会開こうね!」
「もち!」
「「賛成!」」
こうして嵐とまではいかないが、女性冒険者達のガールズトークみたいなやり取りが終わるのだった。
「トーマさん!行きますよ!」
「お、おう……」
セリカに促された後、俺達はヒルダさんの下に向かった。
そこで俺達からは見えない死角の影から……。
「何だと?ウチのAランクパーティー【ヴァルキリアス】が近々帰って来るだと?」
(あの人達が帰って来たら……。早くマーカスにあれを作らせて手に入れないと……)
【ティア―オブテティス】に所属するBランクパーティー【スターレック】のリーダー格であるジゲラさんだ。
しかし、その表情は焦燥感と怒りが入り混じっているようだった。
「こうなったら……」
一方、俺達はヒルダさんの下に赴いていた。
「なるほど……。そのギンゼルさんが逃走し始めた辺りを中心に捜索していくって所存なのね……」
「はい。それが最も次に繋がる手掛かりや証拠を掴めるチャンスだと思いますので……」
「そうね。ただ、こんなトラブルが現在進行形で起きているから、単独行動は控えて欲しいと思っている。我々のギルドは当然、あなた達も『魔術師』や『僧侶』を抱えている身だから、狙われる要素もあるのよ……」
「心得ました……」
俺達は単独行動をとにかくしてしまわない事を前提としながら、調査に動く事になった。
誘拐事件があるのを分かり切っているからか、ヒルダさんも【ティア―オブテティス】に所属する冒険者達にも同じように共有すると言われた。
「それから、皆さんを信用した上でお話したい事があるの。今から話す事は、どうか他言無用でお願いしたいけど、いいかな?」
「はい、何か……?」
俺達は真剣な表情をしているヒルダさんと改めて向き合った。
そしてヒルダさんから伝えられたのは……。
「ウェシロスやその周辺の町に駐在している衛兵達が動いてくれない!?」
「そう言えば、冒険者達が行方不明になっているって言うのに、ウェシロスや周辺の町に駐在している衛兵があまりキビキビ動いていなかったような……」
「そうなのよ。ウチのギルドで行方不明者が出てから一度、被害届や捜索願を出しているんだけど、ほとんど進捗がないのよ……」
「王国から派遣された衛兵達は何やってるのよ……?」
ヒルダさんから伝えられた現状に、俺は驚き、セリカは街の衛兵の動きを思い出し、ウィーネスさんは苦虫をかみ潰したような表情だ。
ビュレガンセには騎士団と言う組織がある。
騎士団は王都ファランテスを中心の拠点とし、ビュレガンセ各所に東方支部、北方支部、南方支部、西方支部の5カ所に、人々が住んでいる街へと何人もの衛兵が派遣されている。
そして騎士団の役目とは、各支部の管轄にある街やその周辺の町村の治安を維持し、犯罪者の取り締まりを主な仕事としている。
早い話、俺が前にいた世界における警察のような組織だ。
人々のためと言う点では共通しているが、冒険者ギルドは自由に活動しているのに対し、騎士団は国や街の秩序を守るために活動している。
ヒルダさんはウェシロスにあるビュレガンセ王国騎士団西方支部に捜索願や被害届を提出しているが、全く進捗がないとの事だ。
因みに俺達が拠点にしている街であるティリルは東方支部が管轄だ。
かつてダンジョン攻略で共闘した冒険者ギルド【アンビシャノブアレス】があるベカトルブは北方支部、海水浴のために訪れたルゾイエンは南方支部が管轄との事だ。
「冒険者ギルドに所属している冒険者達が行方不明になっている場所全ては西方支部管轄なの。他のギルドも訴えているんだけど、同じく進捗が無くて……」
「我々【アテナズスピリッツ】は東方支部管轄のはずですから、そこにも被害届とかを……」
「それはできないんですよ……。と言うより、今訴えるのは悪手ですよ」
「何で?あっ……そっか……」
「思い出しましたか?」
俺が発した質問に対し、セリカが否定した。
しかし、何故不味いのかをすぐに理解できた。
「私達のギルドに所属する冒険者4名が行方不明くらいでは、騎士団の各支部同士で連携して動いてもらうには要素として弱いんですよ……」
「何より忘れていけないのは、ギンゼルさんの現状です。違法薬物が検出されているのに自分から騎士団に訴えてしまうのは、ギンゼルさんを犯罪者として引き渡す事になってしまいます……」
「そうだった。ごめん、見落としかけてた……」
セリカとエレーネの言葉を聞いて改めて納得した。
何とかできるかもしれないと思って焦る余り、ギンゼルさんにとって最悪な結果をもたらしかけてしまった自分を猛省した。
「あの、ヒルダさん。捜索願や被害届をウェシロスにある騎士団西方支部に提出されたんですよね?」
「えぇ、そうよ」
「……」
「トーマさん?」
俺がヒルダさんに現状を確認すると、改めて冷静になって思案し、セリカが声を掛ける。
それから数秒後に口を開く。
「まだ仮説の段階ではあるんですけど……。騎士団が誰かから圧力をかけられたとかって事はないですかね?もしくは癒着や賄賂とか……」
「「「「「!?」」」」」
俺が言い出した仮説に対し、皆は驚嘆の表情を見せた。
すると……。
「それ、今から言おうとしたのに……」
「え?あの、何か、申し訳ございません!オチを奪ったみたいで!」
「いや、気にしなくていいわ……」
(((((ぶっちゃけ同じ事思ってたんだけどな~!)))))
変な空気にしてしまったと感じた俺は必死に謝り、ヒルダさんからは許しをもらえた。
セリカ達も俺と似たような考えをしているようだった。
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