第155話 黒い繋がり
黒い繋がりが見えてきます!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
見つかったギンゼルさんの証言を聞き、集めた情報を照らし合わせた結果、特殊な魔道具を作るために、誰かの指示で冒険者達を拉致している事を確信した。
「特殊な魔道具やアイテムを作るために、冒険者達も拉致しているって……」
「何て物騒で惨い話なの……」
バダックさんとリエナさんは険しい顔つきをしている。
ギンゼルさんが発見され、その一部始終を聞いた時点で事件だと思っていたが、想像以上に恐ろしい内容だった。
行方不明になった冒険者達の捜索のはずが、今となってはとんでもない大事件に首を突っ込んでいるような事になっているのだから。
「ヒルダさんから教えてもらった事だけど、【ティア―オブテティス】で行方不明になった冒険者達数組はCランク以下であり、いずれも魔法に優れた『魔術師』や『僧侶』も含まれていた事も確認している」
「ギンゼルさん達【ゴーファイターズ】も『魔術師』や『僧侶』のケニーさんがいるから、恐らく狙われる対象になったんでしょうね……」
「他のギルドも同じような条件で誘拐されたと考えるのが妥当ですね」
「それ以外の冒険者を薬物中毒にして操ってデスゲームをやらせているのは、おまけってところか?」
「首謀者はとんでもない極悪人みたいね……」
どうやら『魔術師』や『僧侶』を始めとする魔法が得意なギフト持ちが中心に狙われているようであり、それらのいる冒険者パーティーが狙われているのが見えてきた。
それに巻き込まれる罪のない人達の気持ちを含めれば、企てた相手に怒りを抱くのも当然だ。
「薬物で操らせている事を鑑みれば、もう許す事はできないですよ。トーマさん」
「あぁ、何より同じギルドの仲間があんな風にされてしまったら、黙っていられないよ」
「何にしても、明日からはギンゼルがどうにか逃げた場所を中心に捜索や調査よ!」
「「「「「ハイ!」」」」」
セリカの言葉に呼応するように俺も奮起し、ウィーネスさんも方針を固めた意を見せるように皆を決起させる。
「そのためにもよく食べて、よく寝て精を付けよう!」
「ハイ!」
((子供みたい!))
ウィーネスさんがそう言うと、セリカが続く形で飲み食いを始め、俺とリエナさんは心の中でツッコミ、その光景を見て苦笑いする俺達だった。
同時刻・とある屋敷———————
ウェシロスから馬車ですぐの距離、全体的な住居の広さは5階建てで立派さと豪華さを感じさせるお屋敷がある。
その一室にて、談笑の声が聞こえる。
「いやはや、我々ヴェヌトイル商会をご贔屓にして下さり、加えて派閥の貴族まで顧客としてご紹介頂けましたお陰で幸いでございます」
「何を何を。私が欲するモノや求めるモノがそなたらの商会にあり、それを気に入ったから金と引き換えに手に入れているのだからな……」
「そのお陰で我が商会が早く大きく拡大していけたのですから、感謝しかございませんよ……」
薄暗い応接室の明かりには、火が灯った数本の蠟燭のみがあり、まるで夜の密会のような雰囲気を醸し出していた。
そこにいるのはヴェヌトイル商会の会長であるゲルグオ様だった。
その脇には【ティア―オブテティス】に所属するBランクパーティー【スターレック】のジゲラさんとマーカスさんがいる。
同じメンバーのイミニさんとアコナさんはどうやらお留守番のようだ。
「それにしても、まさかゲルグオ殿にもう一人息子がいて冒険者とは、初めて知った時には驚きましたぞ……」
「義理の息子だがな。過去に我が商会の馬車が輸送物を狙う輩に襲われた際、彼等が助けていただいた事をきっかけに、こうして縁ができて繋がりが持てたのですからな……」
「それもそうだな……。マーカス殿は存じているが、そなたは確か、ジゲラ殿だったかな……?」
「はい。お名前を覚えて頂き光栄に存じます」
ジゲラさんは恭しくお辞儀をしながら、礼儀正しく振舞っていた。
一方のマーカスさんは寡黙を貫いている。
「我が領地にある冒険者ギルドの活躍のお陰で領民からの評判も益々上がって良いのだが、領地を経営するのはいかんせんストレスが溜まるモノだ……」
「その気持ちは私も分かりますぞ。事業の拡大によって売上と利益が増えているのは良いのだが、管理や運営も億劫になってしまいましてな……」
「いやはや、金持ちになると生活は豊かにはなっても刺激が欲しくなってしまうモノでな。そのためにゲルグオ殿の実子にも協力いただけたお陰で作られた特殊なアイテムのお陰で愉快なストレス解消になっているよ」
「そう仰っていただけたのであれば、密かに始めたビジネスもやってみた甲斐があるものですぞ。それはそうとマーカス……」
「はい……」
ゲルグオ様がマーカスさんの名前を呼んで手を挙げると、彼は一つの包み袋や大き目な革袋を持って歩み寄る。
「こちらは例のお金です。お納め下さい」
「いつもすまんのう……」
「いえいえ、お互いに持ちつ持たれつですよ」
「「ハハハハハハ」」
手渡された袋を受け取った壮年の男性は卑しい笑みを浮かべていた。
「世の中、表と裏が嚙み合って上手く回るのだよ……」
紫がかかった茶色い立派な貴族服に身を包み、整った髭を生やしたその人物はポドルゾ・クジャール。
ウェシロスを始めとするいくつもの町村を治めるクジャール伯爵家の当代当主だ。
そして、ヴェヌトイル商会と黒い関係で結ばれている。
一方、セリカとミレイユとエレーナが泊まる部屋—————
「あ~、食べ過ぎちゃった……」
「ウィーネスさんが一緒だと、いつも以上に飲み食いしますよね、セリカさんって!」
「あの人と一緒にいると、楽しい気持ちにさせてくれるのよ……」
飲食店で食べ過ぎたのか、セリカはお腹に手を添えている。
ポッコリお腹にはなっていないが、胃もたれしているような状態だ。
そこへシャワーを浴び終えたミレイユが出てきた。
「セリカ、エレーナ、シャワー空いたよ~」
「ごめん。私は後でいいや。エレーナ、お先にどうぞ」
「では、お言葉に甘えて……」
セリカは胃袋が落ち着いたら入るつもりのようであり、エレーナが先にシャワーを浴びに行った。
「ふぅ、明日の準備をしたら私達も寝て……ん?」
「どうしたの?ミレイユ?」
ふと窓の外を見たミレイユは、何かを発見したように食い付く素振りを見せた。
数秒固まった後にセリカが声を掛けた。
「ごめん、何でもない。胃薬とかあるけど、飲む?」
「うん……」
(さっきの姿……。そんなはずはないよね……?)
気のせいと思い直したミレイユは部屋の電気を消して眠るのだった。
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