第154話 テイマーの存在と陰謀
RPGでお馴染みのテイマーが初出です!
俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。
Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。
そんな中、捜索対象であったギンゼルさんが見つかり、意識不明から目覚めた事を聞きつけ、壮絶な事の一部始終を知るのだった。
「なるほど……。命は繋いだけど受けたダメージは甚大で彼以外の冒険者達の行方は分からないと……」
「はい。ですが、ギンゼルからは話を聞く事そのものは叶いました」
意識不明だったギンゼルさんが目を覚まし、事の顛末を共有するため、俺達はウェシロスに拠点を置く冒険者ギルド【ティア―オブテティス】のギルドマスターであるヒルダさんがいる執務室に赴いている。
ヒルダさんもギンゼルさんが生きている事を嬉しく思う一方、彼が受けた凄惨な実体験を聞かされて悲しさも入り混じっているような表情をしていた。
それからウィーネスさんはギンゼルさんから聞いた話を共有した。
「なるほど……。少なくともれっきとした事件なのは確かね……。そのデスゲームをしかけた相手の素性や違法薬物の存在、拉致や誘拐による冒険者達の行方不明。調べ上げる必要性と優先度を高めるには充分過ぎると判断しているわ……」
「仰る通りかと……」
ヒルダさんの言った事に俺は同意した。
ギンゼルさんから聞いた話により、人の手による事件と断ずるには充分だった。
少なくとも、自然災害やモンスターによる襲撃等、簡単に予測できない要素が多く出た事により、事故と済ましておくのはできないと判断された。
それからは【ティア―オブテティス】が中心となって、ウェシロスや関係している町や村を巡り、事件の調査と解明に乗り出す事となった。
「今回の事件で被害を受けた冒険者が所属しているギルドにも協力要請を行い、解決に乗り出す所存!ウチのギルドにも被害者が出ている以上、我々が率先して解決に乗り出す!」
「ひ、ヒルダさん……」
(こう言う所、どこかで見たような……)
普段は落ち着いた年を重ねた淑女のようなイメージがあるヒルダさんだが、責任を感じているのか、そのモチベーションの高さを感じた。
加えて……。
「他国へ遠征に赴いている我々のAランク冒険者パーティーも数日後に帰って来るから、協力を仰ぐ方針なので、どうか今後ともよろしくお願いしたい!」
「「しょ、承知しました……」」
決断力を持ったヒルダさんの様相はシリアスでありながらも、決意を秘めているようにも見えた。
【ティア―オブテティス】のAランク冒険者達については気になるところだけど、確かな誠意を感じて俺達は受け入れた。
「これからは、その首謀者やそれに関係する人物に繋がる調査になる感じですかね……?」
「方針はそう考えてもらっていいわ。私も今回の一件で何かしらの権力が動いていると見ているの……」
(話がデカく、深くなってきているな……)
「それとなく探りを入れていくような方向で動くとイメージしても差し支えないでしょうか?」
「そのイメージで構わないわ。ただ、勢い付いている商会や貴族に迂闊に動くのはマズいから、慎重にね……」
「はい……」
こうしてヒルダさんへの報告が終わった。
夜も遅くなった時間でもあるため、行動は明日起こす事になった。
「あの、一つ思ったんですけど……」
「ん?」
俺はギンゼルさんから聞いた話の中で思った事を質問する。
皆の視線が俺に向き……。
「もしかして、その犯人やその関係者の一人って、動物やモンスターを操る『テイマー』のギフト持ちだったりしませんかね?」
「「「「「え?」」」」」
俺がそう言うと、セリカ達は固まった。
その様子だと、ほぼ正解ではないかと確信した。
「トーマ、ごめん。一回ここを出て話そうか?」
「ハイ……」
ウィーネスさんがそう言うと、俺は受け入れてそのままギルドを出て行く。
それから俺達は宿の近くにある酒場に入り、大人数が入れる部屋で食事を取った。
「おっほん。それでトーマ。さっきの質問についてなんだけど……」
「はい」
俺はウィーネスさんがほんの少しの咳払いをした後に向き合った。
そして……。
「答えから言うと、相手の黒幕側に『テイマー』がいる可能性が高いわ……」
「やはりそうですか……」
「ちなみに『テイマー』と言うギフトについては私が教えました。さわりだけですが……」
どうやら俺の直感は当たっており、セリカが補足した。
「そもそも『テイマー』って言うのはね……」
それからはウィーネスさんが中心に『テイマー』と言うギフトについて教えてくれた。
『テイマー』とは、動物をテイム、つまり使役して味方にする能力を持つギフトだ。
俺が今いる世界にも、モンスターに分類されない普通の動物も当然いる。
俺が異世界に飛ばされる前にいた世界における犬、猫、小鳥、馬等の普通の生き物のようにカテゴリー分けできる。
その『テイマー』は動物をテイムして自由に操る能力を持っており、技量に自身があれば複数操る事も可能との話だ。
本人の実力やセンス、経験や魔力次第ではモンスターのテイム自体、不可能ではないとも教えられた。
ゲームや漫画の世界でも、『テイマー』と言うワードについてはこれでもかってくらい見聞きしているからね……。
だが、今回の問題は別にある。
「モンスターのテイム自体は本人の才能や実力次第では可能よ。ただ、あの凶暴な“ブラッククロコダイル”を複数テイムできるなんて、とんでもない事よ」
「モンスターを複数テイムできるパターンがあるとすれば、知能が低いスライム系のモンスターくらいだぞ。後、ゴブリン系の中でも頭が弱い方の“ゴブリンポーン”とか……」
「知能や凶暴性の高いモンスターを操るにしても、基本的に一体が限度だし、求められるセンスや魔力量も相当なモノよ……」
ウィーネスさん達は深刻な表情で今回絡んでいる『テイマー』について語っている。
強力で凶暴なモンスターを完璧にテイムできる『テイマー』はビュレガンセどころか、世界を見渡しても非常に少なく、お目に掛かれただけでも奇跡と言っていい確率との事だ。
獰猛で知られる“ブラッククロコダイル”を5体同時にテイムして操ると言う事実だけでも、ただひたすらに凄いとしか言えないと教えてくれた。
「その『テイマー』、非常に高い技量を持っているって事ですよね……」
「凶暴で獰猛な“ブラッククロコダイル”を一体テイムできるだけでも、『テイマー』としての実力は高いですけど、同時に5体テイムしようとすれば、身体や精神面への負担も途轍もないですよ……」
「そうね。下手をすれば本人の命だって危ないわ……」
エレーナとセリカが苦い顔をしながら伝えると、リエナさんが補足する。
するとそこにミレイユが……。
「可能性があるとすれば、本人の技量がその世界有数と言われているほどのモノなのか、『テイマー』としての能力を強化や補助をする魔道具のお陰かもしれません……」
「「え?」」
「そんな事があるのか?」
ミレイユがその可能性を指摘すると、クルスも食い付く。
「『テイマー』がモンスターをテイムするには本人の実力や経験はもちろんですけど、魔力量次第で凶暴なモンスターをテイムする事も可能なんですよ。ただ、複数テイムして操るには、その分同じ数だけの『テイマー』のギフトを持った人物が必要なんですよ」
「でも、『テイマー』は一人だけってギンゼルさんも言っていたから、もしかして……」
「魔道具によるものだと、考えられます……」
ミレイユはそう言い切った。
そこで俺は一つの質問を投げた。
「その魔道具って、『錬金術師』と言うギフトを持った人物が作るんだよね……」
「そうです。作り手の魔力や技術、モンスターから出てくる魔石や素材等を活かして魔道具を作っていくんですよ……」
「そこにさ、魔法を得意もしくは使えるギフト持ちが手伝ってできる特殊な魔道具はあったりするのかな?」
「はい。ありますよ。って……あ……」
「……」
俺の質問に答えたミレイユは、何かに気付いたような様子であり、皆も同じのようだ。
そこでウィーネスさんが口を開く。
「トーマ、もしかして今回の事件について気付き始めてる感じ?」
「はい。今回の冒険者達が行方不明になる事件って……」
集めた情報を繋ぎ合わせた俺達は確信した。
「その特殊な魔道具やアイテムを作るために、誰かの指示で冒険者を拉致している……」
恐ろしい結論を導き出してしまった。
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