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何でも屋として生きていくアラサーの異世界ライフ ~サブカルチャー大好きな高卒アラサーが異世界に召喚されて現実世界で得た知識と経験をフル活用したら多方面で無双しかけている件~  作者: カワチャン
第三章 大事件の遭遇と偉大な人物達との邂逅

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第153話 凄絶な光景(後編)

前話に続き、頭の中でイメージしながら見て頂ければと思います!

俺達はギルドマスターであるカルヴァリオさんの頼みで同じギルドの冒険者パーティー【ゴーファイターズ】のギンゼルさん達が行方不明になったと聞かされた。

Bランクパーティー【ブリリアントロード】のウィーネスさん達と共に捜索や調査に当たる事となった。

そんな中、捜索対象であったギンゼルさんが見つかり、意識不明から目覚めた事を聞かされてすぐに駆け付けた。

そしてギンゼルさんから事の経緯を聞かされ、その内容は余りにも衝撃的だった。


「デスゲーム……だと……」

「そうだ……。冒険者同士の命の取り合いは刺激的でスリリングだからな……。最早ただの愚民では物足りないのだよ……。だが、最後に残った一人だけは助けてやろう」


凄絶な一言を聞いたギンゼルさん達は固まるしかなかった。

いきなり暴行の末に知らない場所に拉致された後に命の奪い合いを、殺し合いを要求させられたのだから……。


「ふざけるな!アンタの快楽を満たすためだけにそんな事するはずがないだろ!」

「俺達の仲間をどこにやったんだ!?今すぐ開放して返してくれ!」

「ふん、一介の冒険者如きに拒否権なんぞあるはずがないのだよ……。せいぜい私を楽しませるために足掻きたまえ……」


映像に映っていた仮面の男はギンゼルさん達の抗議の言葉を冷たくあしらった後、その映像がプチンと切れた。


(一体どうなってんだ?アミナ達は大丈夫なのか……?何とかこの状況をどうにか……)

「な、何だ?この煙……?」


ギンゼルさんが打開策を見つけるために思考を巡らせる中、一人の男性冒険者が床から漏れ出す煙に気付いた。

水分を含んだ霧雨のような煙は勢いよく噴射されており、瞬く間に部屋の中を包まんばかりに広がっていく。


「ごほっ、ごほっ!何だ?」

「皆さん!何かマズい!煙を吸い込まないように……」

「でも、これじゃ……」


煙を嗅いだギンゼルさんは危険性を直感して他の冒険者達に警戒を呼び掛けたが、あっと言う間に部屋の中に広がって手遅れだった。

まるで燻製された食べ物でも作らんばかりの勢いの煙を体内に入れないようにするには困難を極めた。

左腕には魔力を封じるための腕輪を付けられているせいでスキルも使えなかった。


「う……あ……」

(何だ?変な気分になった上に、意識が……)


捕らえられたギンゼルさん達は煙に燻され続け、冒険者が一人、また一人と混濁していき、遂には全員が意識を失った。

そこへ部屋の扉が開き……。


「ふふふ、お楽しみね……」


一人の女性が入り、拘束具を外すと、握った乗馬鞭をギンゼルさん達に軽く触れてすぐに退出した。

そして……。


「「ヒャハハハハ!」」

「キてるぜ!堪んねー!」

「アハハハハ!」


ギンゼルさん達は目を覚ました。

しかし、その様相は明らかに異常と言う他なかった。

起きるや否や、ギンゼルさん達は狂気的に笑いながら暴れ出し、目に入った冒険者達どうしで攻撃し合っているのだ。

ひたすらに殴打し合いながら、狂ったような醜い表情を見せながら……。


「これでも喰らえ!」

「ガハッ!」

「痛くねぇぞ!」

「グッ!」

「ヒャハハハ!死ね!死ね!死ねーー!」


ギンゼルさんはその中で、同じく捕らえられた冒険者の一人によって左眼を潰されてしまっていた。

それから小一時間ほどの時間が経とうとした時、生き残っていたのは……。


「え?な……?おい……?」


最後まで立っていたのはギンゼルさんだった。

しかし、足元には同じく捕らえられた男性冒険者の亡骸だった。

何度も殴打しただろうその顔は原型を留めない一歩手前までボロボロになり、掴んでは叩き付けてを繰り返しただろう後頭部からはとめどなく血が流れていた。


「あ……あぁ……」


ギンゼルさんの周囲には、無残に殺し合ったであろう冒険者達の亡骸がところどころに放置されていた。

受け入れたくない凄惨な状況に、ギンゼルさんの表情に悲しみと絶望感が徐々に滲み出て……。


「うわぁああ!何なんだ!これは!?」


そして、現実に引き戻されて発狂したのだった。

間を置かずして、部屋の扉が開いた。


「はっはっはっはっは。いや~、面白いショーを見せてくれた。やはり戦闘能力のある冒険者同士の命のやり取りは見ていて飽きないな……」

「……」


そこには護衛を連れた仮面を付けた男が醜い笑みを見せながら現れた。

ギンゼルさんはそれを見て憎悪が込み上げた。


「貴様―――!絶対に許さんーー!」

「やれ」

「ハッ!」

「ぐぁああああ!」


怒りのままにギンゼルさんは突っ込んでいったものの、護衛が抜いた剣を抜いた瞬間、彼の身体は斜め上からの袈裟切りを受けてしまった。

薬物によって自我を失った状態で受けたダメージも相まって倒れ伏してしまった。


「ふん。他愛もない。後始末は頼むぞ」

「ハッ!」


男の護衛達はギンゼルさん達を担いで部屋から連れ出した。

そして連れていかれた先は……。


「おい、いつものように処理しておけよ」

「りょ~か~い……」

「うぅ……」


ほぼ虫の息だったギンゼルさんや遺体となった冒険者達は、離れの森へと運ばれた。

そこには護衛の男と紫色をベースにした煽情的な衣装に身を包み、黒いロングコートを肩にかけた美女がいる。

女が持つ手には長めの乗馬鞭が握られており、その模様もどこか陰気さを感じさせる。


「出ておいで~」

「グルルルル……」

「!?」


女が鞭を振るうと、川から獰猛な呻き声が響いた。

全長3メートル近くはあるレア度Cのモンスター“ブラッククロコダイル”が5匹も出てきた。

恐ろしい見た目に違わない、凶暴なモンスターだ。

そして……。


「さぁ、お食事の時間よ!」

「「「「「ギィァアアア!」」」」」

「おらよ」

「あ、あぁ……」


女が声を上げて鞭を振るった瞬間、護衛は遺体となった冒険者を川に落とし、その瞬間、“ブラッククロコダイル”達は一斉に駆け寄り、牙を突き立てた。

この“ブラッククロコダイル”はかなり食いしん坊な雑食性のモンスターであり、人肉を好んで食べる凶暴さを持っている。

瞬く間に遺体は食い尽くされていき、一人、また一人と身体がほとんど残らないくらいまでになってしまった。


「これで最後だ」

「く……う……」


とうとうギンゼルさんは川に蹴り落とされた。

落とされて沈んだ瞬間、“ブラッククロコダイル”はギンゼルさんの身体に向かって泳いできた。


「ガァウ!」

「グア!」


一頭の“ブラッククロコダイル”がギンゼルさんの左腕を食い千切り、他の個体も続くように襲い掛かって来た。

死を待つばかりの身となったその時……。


「【岩石魔法LV.2】『ロックカノン』!」

「「何!?」」


ギンゼルさんの残った右腕から【岩石魔法LV.2】『ロックカノン』が放たれ、“イータカワウソ”達を吹き飛ばした。

スキルを封じる腕輪を付けているはずなのにスキルが使えている状況に男達は一瞬動揺していた。


「何故スキルが使えて……ッ!?」

(もう一発!)


そう、ギンゼルさんは左腕を食い千切られていたが、同時にスキルを封じ込めていた腕輪も取れた事を意味しているのだった。

二発目の【岩石魔法LV.2】『ロックカノン』を男達に向けて放ち、ボロボロの身体を奮い起こさせてその場から逃れる事に成功したのだった。


「ちょっとどうすんのよ!」

「慌てるな!あの傷では遠くまで逃げられん!奴を追え!」

「「「ハッ!」」」


焦る女を他所に、男は冷静に部下達へ指示を飛ばした。

その部下達も大慌てでギンゼルさん達を探しに繰り出す。


「クソ……。だが、ダメージが蓄積しているところに左腕を噛み千切られた事による出血多量……。放置しても死ぬだろう……」


男はそう言うと女と共に踵を返した。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

(何とか辿り着いた。早く……回復しないと……)


ギンゼルさんは必死に泳ぎ、川下まで辿り着いた。

その場所は海辺が近くにあった。

だが、どうにか泳いで震えながらも歩く姿から見て、既に満身創痍だった。

それから歩き続けるも……。


「ぐぅ……」

(ダメだ……意識が……)


遂にギンゼルさんは道端で倒れ伏してしまう。

不意に襲撃されたダメージ、狂乱状態のままによる乱闘、男に袈裟切りされた傷、“ブラッククロコダイル”に食い千切られた左腕、その状態での水泳と歩行。

体格が良く『重戦士』のギフトがあるギンゼルさんでも、既に限界を超えていた。

最早これまでと思って目を瞑ったその時だった。


「ちょっと!大丈夫ですか?」

「酷い!何をされたらこんな事に?」

「嘘でしょ!左腕が無くなっていて剣で斬られた跡もある!」

「大変だ!早く応急処置して治療院まで運ぶぞ!」


倒れた直後、【ティア―オブテティス】の冒険者達に発見されて治療院まで運ばれた。

治療院に運び込んだ後、その冒険者達は【アテナズスピリッツ】に所属する冒険者である事を知り、ギルドへと報告したのだった。


回想終了———————


□■□■□■□■□■□■□■□■□


「何て壮絶な話だ……」

「惨い……」

「まるで地獄絵図じゃないですか……?」


ギンゼルさんから事の一部始終を聞いた俺達は絶句した。

想像しただけでもおぞましさがヒシヒシと伝わって来る。


「ぐぅう……。俺は……、人をこの手で殺めてしまいました……。その時の感触が、この右手に残って離れないんです……」


ギンゼルさんは残っている右手を見つめながら、気持ちを打ち明けながら涙を流している。

しかし、流れているのは残っている方の右眼だけだった。

その姿を見て、俺達はかける言葉が見つからなかった。


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